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商用&OSSデータベースの現状と今後
商用&OSSデータベースの現状と今後

第3回:1台なら大丈夫。つないでいっても大丈夫?
〜 OSSのスケーラビリティの実際

著者:オフィスローグ  工藤 淳   2005/5/9
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OSSでも今や100台規模のクラスタシステムが可能に

   クラスタリングという実装手法をもとに、こぞって高度なスケーラビリティを実現してきた商用データベースだが、一方のOSSデータベースにおけるスケーラビリティの確保は現在どういった状況にあるのだろうか。OSSデータベースのエキスパートである、株式会社SRA 開発サービスカンパニー コンサルティング部 OSSビジネスプロジェクトの石井達夫氏に伺ってみた。

   石井氏は日本PostgreSQLユーザ会の前理事長も務めた、わが国のPostgreSQLエバンジェリストの一人であり、氏が籍を置くSRAもOSSによるシステム開発やコンサルティング、サポートを積極的に進め、PostgreSQLをベースにした商用DB製品「PowerGres」のサプライヤーでもある。文字通り日本におけるPostgreSQLとOSSのエキスパート集団である。

   石井氏によれば、OSSデータベースにおけるスケーラビリティの現状は、PostgreSQLに関していえば、100台規模のクラスタシステム構築もすでに可能になっているという。もちろん誰でもすぐに構築できるというわけではなく、それなりの作り込みが必要なのは言うまでもない。しかし、とにもかくにも構築さえできれば、機能的には充分な実用性を確保できるレベルにあるという。

   取材時点ではまだ100台規模のシステムは設計段階だが、20台規模のクラスタ事例はすでにある教育機関で稼働中だ。これまで一般にOSSのデータベースサーバ構築は難しいと言われてきたが、「長年に渡る改良の結果、ソフトウェアに充分な性能の余裕が生まれ、今では1,000名くらいの中小規模のデータベースならかなり使いやすくなっているのです」と石井氏は言う。

   また、もうひとつのOSSデータベースの雄であるMySQLでも、「MySQL Cluster」によって高可用性とともにスケーラビリティの高さも主張している。

   予想をかなり超える(失礼!)OSSデータベースの健闘ぶりだが、これを商用データベースの陣営から見るとどうなのだろうか?Microsoft SQL Serverのプロダクトマネジメントを担当しているマイクロソフト株式会社 サーバプラットフォームビジネス本部 アプリケーションインフラストラクチャ製品グループ シニアプロダクトマネージャの斎藤泰行氏に伺ってみた。

   「エンタープライズ用途のデータベースとしてはまだまだ我々ベンダーにアドバンテージがあるのは明らかですが、データベースアプリケーションとしての機能に限って見れば、企業部門のWebシステムのレベルであれば充分なパフォーマンスを持っていますし、それなりの成功を収めていると思います」

   こうした各ベンダーからの評価を見ても、クラスタリングという部分に絞って見る限り、OSSデータベースのスケーラビリティは、部分的にとはいえエンタープライズ用途に耐えるところまで来ていると考えてよいだろう。


割り切って使えばメリットを活かせるOSSデータベース

   石井氏によれば、PostgreSQLに関する限りエンタープライズ化への指向はさらに強まっていき、2005年はさらに大規模なクラスタシステムをサポートするソリューションが出てくることが期待できるという。だが、OSSであるPostgreSQLにそんな大がかりなクラスタリング技術があるのだろうか?と思ったら、これが大ありだったのである。

   PostgreSQLによるクラスタリングの代表的な手法で、「PGCluster」というのがすでに実用化されているという。これはシェアードナッシング型のクラスタリング方式である。Oracleなどの商用製品に比べるとはるかに安く構築できるため、ハイエンドな大規模システムになるほどコストメリットも大きくなるという、OSSの特長を生かしたソリューションである。

PGClusterの概要
図3:PGClusterの概要


   もちろん、何から何まで商用データベースソリューションと同じというわけにはいかない。大規模テーブルを別々に並列検索するために、商用データベースでは常識のパラレルクエリなどはサポートしておらず、細かい機能レベルでは使う側もそれなりの割り切りが必要である。

   さらに、商用のデータベース製品も決して簡単というわけではないが、特にPostgreSQLのクラスタを使いこなすには、やはり相当のテクニックが必要だと石井氏は言う。商用製品のように明文化されたマニュアルやオンラインのナレッジベース、常駐のテクニカルサポートといった商用製品には当たり前の情報がないのだから、そういう意味でも敷居が商用製品より高めなのは仕方ないところだろう。

   とはいえ、石井氏が先に述べたように、予算の厳しい中小規模の企業や研究機関などで、なおかつミッションクリティカル性を追求しなくともよいといった条件がそろっていれば、ぜひPostgreSQLを使ってみたいと考えている人は少なくないだろう。そこで、ちょっと本題の「スケーラビリティ」からハナシは離れるが、具体的にどこが良くてどこが弱いのか、PostgreSQLのツボをもう少し詳しく聞いてみた。

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著者プロフィール
オフィスローグ  工藤 淳
IT技術系出版社勤務を経て、オフィスローグとして独立。データベース関連誌編集に携わっていた流れで、現在もデータベース系の執筆が比較的多い。元々は楽器から建築、自動車まで何でも注文があれば書いてきたのが、気がついたらIT専門のような顔をして仕事をしているのに自分で少し驚愕、赤面。


INDEX
第3回:1台なら大丈夫。つないでいっても大丈夫? 〜 OSSのスケーラビリティの実際
  可用性と表裏一体の重要課題、「スケーラビリティ」
  ビジネスの激しい変化に対応するためにもスケーラビリティは不可欠
OSSでも今や100台規模のクラスタシステムが可能に
  自分で手を動かすのが苦にならない人ならトライする価値はある