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商用&OSSデータベースの現状と今後
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第3回:1台なら大丈夫。つないでいっても大丈夫? 〜 OSSのスケーラビリティの実際
著者:オフィスローグ 工藤 淳 2005/5/9
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自分で手を動かすのが苦にならない人ならトライする価値はある
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石井氏によれば「データベースエンジン自体はかなり良くなってきています。ということは、裏を返せばまだまだ現在はエンジンそのものに開発者が力を注いでいるということで、その分周辺部分が弱いのも事実です」と言う。
言うまでもなく、データベースはデータベースエンジン単体で使うものではない。このため実際に"データベース"としてソリューションの中で使おうとすると、アプリケーションやツール、そして運用管理の部分で足りないものが次々に出てくるはずだという。商用データベース製品のように自動化されたツールなどはきわめて少ないので、必要なものが出てくるとそのたびに自分の手で組んでいくことになる。
このため、そういう"作る"ことが苦にならない根っからのエンジニアならいいが、そうでない人はコストだけに惹かれて手にすると苦労するかもしれない。もしあなたが文系出身の管理部門のスタッフであり、コストが安いならOKという程度の気持ちで導入してしまった場合は、後々の苦労を覚悟した方がいいだろう。
一番の悩みどころは開発環境だという。コーディングはできるがデバッガがないため、開発に非常に手間がかかるのである。ただし、PostgreSQLはOracleとの互換性が高いので、Oracleのストアドプロシージャなどをベースに手を入れることで、けっこう手間を省くことができるという裏技も意外に使えるとか。
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進化をとげた商用DBの現在を見ることで、OSSの良さとスタンスも見えてくる?
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今回はスケーラビリティというテーマで商用データベースと比較しながらOSSデータベースの現状を見てきたが、ざっと振り返って見る限り、中小規模の企業のデータベースであれば、PostgreSQLなどのOSSでも充分なスケーラビリティが確保できるということが判明した。これで石井氏の言うように開発環境や周辺ツールがさらに充実してくれば、さらに用途の可能性も拡がっていくのではないかと期待できる。
とはいえ、このままOSSデータベースの性能が向上していけば、いつかは商用データベース製品と肩を並べることになると考えるのもあまりに楽観というか単純な考え方だろう。マイクロソフトの斎藤氏の指摘によれば、エンタープライズ系のデータベースそれも大規模なシステムになると、もはやデータベース単体での「〜ができる」という指標ではパフォーマンスを計れなくなってきているのだという。
現在のエンタープライズシステムは、非常に巨大で複雑な構造を持っている。このためトータルでのパフォーマンスを出すには、たとえばネットワークレベルでの負荷分散のような大きな視点からの設計・運用が必要になってくるのである。
また思うようなパフォーマンスが得られない場合、一口に「チューニングする」といっても、現実にはデータベース本体だけをさわって済む話ではない。データベース、アプリケーション、ネットワーク……障害が起きているとすればどの階層なのか?またパフォーマンスのボトルネックになっているのはどこか?
そうしたソリューション全体の問題点を切り分け、把握し、分析することができなければ、本当に大規模で統合的なシステムは管理できない。.NET Frameworkのようなエンタープライズのアーキテクチャフレームも持たないOSSデータベースには、まだまだ本格的エンタープライズへ向けた宿題が山積みというところである。
とはいえ、今回の記事の取材で、OSSデータベースにクラスタリングの手法が存在し、しかもすでにある程度の実績もあるという事実を知ることができたのは収穫だった。石井氏が現在設計中という100台規模のクラスタが完成したあかつきには、ぜひもう一度取材に伺ってみたいものだ。
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著者プロフィール
オフィスローグ 工藤 淳
IT技術系出版社勤務を経て、オフィスローグとして独立。データベース関連誌編集に携わっていた流れで、現在もデータベース系の執筆が比較的多い。元々は楽器から建築、自動車まで何でも注文があれば書いてきたのが、気がついたらIT専門のような顔をして仕事をしているのに自分で少し驚愕、赤面。
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