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調達/確保の役割
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まずは、要員の調達/確保は、誰が行うべきなのかということです。通常は課長や部長など、ラインのマネージャが担当していることが多いでしょう。彼らの日頃の"ノミケーション"などが、ここぞというときに役に立つことになります。
企業によっては、協力会社担当部門を設置し組織として要員の調達/確保を行っているところもあります。各部門から上がってくるリソース需要を整理し、協力会社に対して要員の打診や調整を行います。部門単独で協力会社とお付き合いするのは仕事の安定供給面でも大変ですが、調達部門に関係維持をある程度任せられるので助かります。部門マネージャのノミケーションが行き過ぎて癒着を生む抑制にもなりますので、こういう調達部門の設置も検討してみるといいでしょう。
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図4:協力会社との交渉・関係維持の体制
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スキル管理
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次に、必要な要員リソースのスキル管理について考えてみましょう。社内スタッフのスキルを管理する仕組みは、人事システムの「スキル管理」というサブシステムとして存在します。その会社で必要とする技術を体系的に整理し、項目別に社員の持つスキルを5段階程度でデータベース管理するものです。例えば、プログラミング言語の項目でJava:ランク4というように登録しておけば、ECサイトをJavaで作成することになった際に、Javaのスキル3以上のPGを検索すると候補が見つかるというような図式です。
スキル管理システムは作るのは簡単ですが、有効に実運用するのは難しいシステムです。難しいポイントは2点あります。
1つはスキル情報のメンテナンスが難しいことです。個人のスキルを客観的に判定し、スキルアップやスキル修正をタイムリーにフィードバックするのは難しい課題です。タイムリー性と客観性の両方を満たすには、例えばJavaのプロジェクトを1つ遂行した時点でスキルアップを自己申告し、それを上長が認証して初めてシステムに反映するというような仕組みが適していると思います。
もう1つの難しさは、検索結果を有効利用できるための組織の柔軟性です。せっかく条件に合致したスキルを持った空き要員が見つかっても、その人の上長がキープの姿勢でいる限りはプロジェクトに参画してもらえません。とかく優秀なスタッフほど貸したがらないので、なかなかシステムが有効利用されないのです。
一方、協力会社のスキル管理でも似たような問題点を内包していますが、社内よりはビジネスライクに管理できるでしょう。こちらの場合は会社単位での管理になりますが、できる限り個人のスキルも記載します。1つのプロジェクトが終了した時点で、会社の評価と参加メンバーのスキル評価をフィードバックする仕組み、その情報を全社レベルで共有するというルールが必要になります。このテンプレートについては、後の「Procurement Management(外注管理)」の回に紹介します。
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「プロジェクトマネージャとラインマネージャの権限」
連載第2回にPMとPLの役割分担について触れました。会社によってさまざまだと思いますが、PYRAMIDではPLに実行権限を持たせており、PMの役割は最低限PLにきちんとプロジェクト管理をやらせること、と定義していることをお話ししました。
もう1つ悩ましいのが、こうしたプロジェクト単位のマネージャと部長/課長といった組織のマネージャの権限範囲です。プロジェクトの成功を最優先する立場と組織全体の利益を優先する立場の違いがあるので、時として利害が反することもあります。この強弱も会社によってまちまちですが、プロジェクトマネージャよりもラインマネージャが強いというのが一般的でしょう。弊社の場合も最終的には同じ図式です。プロジェクトマターに関してはプロジェクトマネージャ/リーダーの権限をできるだけ強くするように意識しています。
しかし、のっぴきならない事情があれば、AプロジェクトからX君を抜いてBプロジェクトにコンバートすることも有り得るでしょう。もちろん、それにより不協和音が高くなってモチベーションが下がったり、Aプロジェクトが失敗したりすることも承知の上という選択ですが。
組織における権限委譲と同じで、理想的にはできるだけPM、PLに権限を与えるべきですが、最終的な権限はラインマネージャが保持しているというところが現実なのでしょう。
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著者プロフィール
株式会社システムインテグレータ 梅田 弘之
東芝、住商情報システムを経て1995年にシステムインテグレータ社を設立。
常駐・派遣主体の労働集約的な日本のソフトウェア業の中で、創造性にこだわってパッケージビジネスを行っている。
国際競争力のない日本のIT産業が、ここから巻き返しを図るための切り札は「プロジェクト管理」だと信じ、実践的なプロジェクト管理手法「PYRAMID」を自社開発している。
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