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説明の中で、(I1)や(S2)などの記号が出てきますが、これは第1回で使ったプロジェクト管理状況チェック表のNo.と対応しています。チェック表で明らかになった問題点に対応する部分は、特に注意して読んでみてください。
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チーム結成/育成
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要員の育成には、恒常的な育成とプロジェクト単位の取り組みがあります。前者は、勉強会の実施や目標管理制度/資格取得制度など、組織単位の日常的な教育/育成です。文字通り"人が主役"のIT企業にとって非常に重要なことですが、本連載のテーマ外となりますので割愛します。
映画の世界では銀行強盗をやるのに、ベテラン金庫破り、タイムキーパー、防犯システム破りのプログラマー、逃走用ドライバー、そして冷静なチームリーダなど、その任務を遂行するのに適したメンバーが探し出されます。システム開発でも同じです。例えばJavaベースのECサイトを構築する場合、ECのマーケティング知識やECサイトの構造設計能力、セキュリティ技術、Javaプログラミング、データベース技術、ネットワークやハードウェア技術、デザインなど、幅広い技術やスキルが求められます。
これらの技術を持った要員だけ完全に集められれば苦労はないのですが、映画と違ってそう都合良くは行きません。現実には、チーム結成時に役割分担をきちんと定義し、集まったメンバーがそれぞれの役割を完全に遂行できるように育成します(H3)。この育成・指導も、プロジェクトの規模が大きな場合はドキュメントベースできちんと管理・徹底します。具体的には「プロジェクト規約」や「コーディング規約」など、プロジェクト単位の規約をきちんと定義し、メンバー全員にその規約に則った開発作業を行うように指導します。
プロジェクト成功に向けチーム力を上げるための注意点は主に3つあります。
1つは自社だけでなく協力会社に対しても要員のスキルに気を配り、不足があれば育成するということです。協力会社の教育はこっちの仕事じゃないという狭い意識ではなく、プロジェクト成功に向けて必要なことは社内外を問わず実践するという心構えの方がお互いうまく行きます。
2つ目は途中で参加したプロジェクトメンバーに対する指導が、おろそかになりやすいという点です。途中から入った人は、まだプロジェクト内の暗黙ルールがわかりません。プロジェクト規約などを元にプレゼンテーションを実施し、できるだけ短期間で追いついてもらう必要があります。
3つ目は恒常的な教育の範疇になりますが、プロジェクトリーダーに対する教育です。システム開発の技術力とプロジェクト管理能力は別物です。技術者が設計技術やプログラミング技術などを勉強・習得するのと同じく、プロジェクトリーダーはプロジェクト管理技術を勉強する必要があります。それなのに、単にある年齢になったからプロジェクトリーダーを任せるというような安易なケースが多く、プロジェクト管理を技術として教育することがおろそかになっています(H4)。
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まとめ
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組織管理は、プロジェクト体制の構築/プロジェクトメンバーの確保/プロジェクトメンバーの育成という3つのステップに要約されます。組織の体質や管理者の性格など、俗人的なファクターが強いマネジメント分野ですが、できる限りの技法化を試みてください(図5)。今回はPYRAMIDのテンプレートの中から「プロジェクト体制図」と「リソースヒストグラム」を紹介しましたので、自社なりにアレンジして使ってみてください。
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図5:組織管理の3ステップとツールや技法の例
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「組織管理のポイント」
- プロジェクトのスタート時には、速やかに「プロジェクト体制図」を作成する。
- 自社側のプロジェクト体制だけでなくユーザー体制や協力会社の体制も明確にする。
- 「リソースヒストグラム」を作成して、要員計画を練ると同時にコスト計画の妥当性をチェックする。
- プロジェクトは、ある規模を超えると成功率が低くなる。この境界ラインを押し上げることがプロジェクト管理力の強化であり、それが企業競争力になる。
- 要員のスキル管理は、スキル情報をタイムリーに客観的評価でメンテナンスする仕組みと検索された要員をアサインする流動性確保が課題となる。
- プロジェクト終了時に協力会社の評価を行い、その情報を会社単位で共有管理することは有用である。
- メンバーの育成に関しては、「自社メンバーと同じように、協力会社メンバーに対してもケアする」「当初からのメンバーだけでなく、途中参画メンバーに対して手厚く指導する」「プロジェクトリーダーに対する育成・指導を制度化する」という3点が重要である。
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著者プロフィール
株式会社システムインテグレータ 梅田 弘之
東芝、住商情報システムを経て1995年にシステムインテグレータ社を設立。
常駐・派遣主体の労働集約的な日本のソフトウェア業の中で、創造性にこだわってパッケージビジネスを行っている。
国際競争力のない日本のIT産業が、ここから巻き返しを図るための切り札は「プロジェクト管理」だと信じ、実践的なプロジェクト管理手法「PYRAMID」を自社開発している。
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