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ビジネス環境に対応するBPIのメリット
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以上「BPIとは何か?」について解説してきたが、ここから「BPIを行う利点とは何か?」について解説する。そしてその利点によって、どのように従来の問題が解決されるのかについても紹介する。
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システムの柔軟性
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まず、SOAの目的でもあるが、BPIを行うことによって「システムの柔軟性」を得られることがあげられる。つまり、ビジネスプロセス部分が外部化されることにより、プロセスの変更が容易になる。よって、市場の変化に応じて社内のプロセスを迅速に変更して対応することが可能になるわけである。
また、ビジネスプロセス部分とサービスの連携部分が疎結合になることにより、連携先の変更・切り替えが容易になる。これにより、システムの入れ替えや連携先のパートナーの変更があっても、ビジネスプロセスのフロー自体に修正を入れることなく、また他の連携システムにも影響を与えることなく、新しいシステムやパートナーと連携を行うことが可能になる。
このようにシステムの柔軟性によりシステムが変更に強いものとなり、また、既存システムやパッケージソフトなどの新しいシステムを並存させたまま、システム連携を実現することを可能にする。
これはつまり、企業の競争激化の激しいビジネス環境において、M&Aなどにより会社統合が実現した場合、必然的に起こるシステムの統合にも迅速かつ柔軟に対応することが可能になることを意味している。
さらに、この柔軟性の利点を応用させると様々なレベルの製品の提供可能になる。例えば、製品にはすべての顧客に共通な製品コアな部分(例:銀行の普通預金サービス)と、顧客のニーズによって変更する製品の形態部分(例:銀行の金利選択オプション、インターネットバンキングサービス)、製品の付随機能(例:銀行のキャンペーンや入出金に対するお知らせ)がある。
そして、これらの層はそれぞれ中心から外側に向かって変更の頻度が高くなる傾向があるため、ビジネスプロセス化する場合、変更頻度の少ないものを粒度の小さいサービスとして実装し、変更の頻度の高いものをより大きなビジネスプロセスとして実装することで変更に対処しやすくすることが可能である。
図5:ビジネスプロセスの概要
これはすなわち、製品の差別化に迅速に対応することが可能で、現代の顕著な傾向である顧客ニーズの多様化(多品種小口化)に対応可能になることを意味している。
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再利用性の向上
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次に、BPIによる利点として「再利用性の向上」が得られることがあげられる。BPIにより外部化したビジネスプロセスは、それ自身もサービスとして、他のビジネスプロセスから連携の対象として使用可能になる。よって、複数の業務処理の中でよく利用される部分の処理を、共通のビジネスプロセスとして実装することで、その共通プロセスを他のビジネスプロセスから再利用することができる。
これにより、ビジネスプロセスの開発生産性もあがる。また運用管理上でも、類似のビジネスプロセスを多数メンテナンスするより、必要最小限のビジネスプロセスのメンテナンスで済むため効率が向上する。
市場の変化の激化の例として、製品ライフサイクルの短期化などがあげられるが、これに対応するためには、類似の製品を差別化して迅速に生産し市場に送りだす必要がある。先に説明した再利用性による効率を活かせば、過去の類似製品に関するビジネスプロセスを再利用し、必要な部分だけを変更して流用することで、迅速に対応することが可能になることをあらわしている。
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ビジネスの可視化
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そして、もう1つの利点として「ビジネスの可視化」が得られることがあげられる。つまり、ITレベルでなくビジネスレベルでのサービス化が進むと、従来では組織の壁で分断されていた個々の処理が、組織を横断するビジネスレベルでの「End to End」のビジネスプロセスとして視ることができる。これにより、各組織で局所的に最適化を行うしかなかったビジネスプロセスを、全体最適化を行うことが可能になる。
また、実行されるビジネスプロセスの状況や統計情報をリアルタイムに計測することにより、現在のビジネスの状況を知ることが可能になることも、大きな「ビジネス可視化」のメリットである。
例えば、前述の販売ビジネスプロセスについて、従来どおり紙ベースで行っていれば、ある注文に関して顧客から問い合わせがあった場合、現在の状況を調査して伝えるのはかなり困難であるが、BPIによりビジネスプロセス化されていれば、現在の進捗状況を調べるのは大変容易になる。ビジネスプロセスのどの部分がボトルネックとなり、処理に遅れがでるのかを把握しやすくなり、ビジネスプロセスを改善していくことが可能になる。
また、個々のビジネスプロセスの状況だけでなく、複数のビジネスプロセスの状況を集計すれば、統計情報としてビジネスの傾向を捕らえることができる。典型的な例として、月次ごとや日次ごとの販売状況があり、しかもそれをダッシュボード機能と連携させて色々な軸による表示を行えば、地域ごと、商品の種類ごとの販売状況、というようにビジネス分析を行うことも可能になる。
これにより、現在のビジネスの状況をリアルタイムに監視・分析することができ、経営判断に使用することが可能となる。
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著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社 小倉 弘敬
日本アイ・ビー・エムソリューション開発 インテグレーション所属
ソフトウェア・エバンジェリスト。担当分野は、ビジネス・プロセス・インテグレーション(BPI:Business Process Integration)。WebSphere Business Integration(WBI)ソリューションセンターで、BPIソリューションの開発/提供に従事する。
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著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社 佐藤 泉
入社以来、ワークフロー、ビジネスプロセスエンジン、ビジネスプロセスモニターなどのソフトウェア製品の開発やそれらの製品をベースとしたソリューションの提案活動に従事。
特に、SOAに則ったBPI(Business Process Integration)やBIO(Business Innovation and Optimization)を得意分野とする。
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