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第5回:発注側の体制・社内体制を整える

著者:システムクリエイト  田中 徹   2004/12/17
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発注時にするべきこと 〜契約書〜

   IT業界は歴史が浅く、言い換えると未熟な業界といえます。それだけにトラブルも少なくありません。そういったものを未然に防ぐためにも、契約書等を含めた書類のやりとり、確認すべき事項をきちんとしておきたいものです。ソフトウェアという目に見えないものを買うわけですが、通常の商取引と何ら変わることはありません。

   経験豊富な開発会社なら、その流れを説明しただけで業務に取り組んでもらえますが、やはり「相手の言いなり」で開発プロジェクトを進めるより、発注側からの意見、要望などを伝え、損をしない取り引きにするべきでしょう。


基本契約書

   通常、発注側と開発側で契約書を交わす場合、会社同士での「業務委託基本契約書」を結びます。目的には、今後締結される個別契約すべてに適用されることを明記します。

   対象業務またはそれに代わる名目で記すものについては、それぞれの案件やプロジェクト、システム名を書くのではなく、ソフトウェア開発、プログラミング業務というように、包括的な書き方をします。これに基づき、個別の案件については、別途契約を結ぶというのが一般的です。

   期間を定める場合は、締結日より1ヶ年とし、満了日より1ヶ月前までに、双方いずれかの申し出がない場合は自動延長とする場合が多いです。


個別契約書

   個別契約書は、発注書、注文書として書かれることもあります。個別契約書に必ず書かなければならないことは、件名(もしくはプロジェクト名称)、発注金額、納期、納品物、支払条件などです。その他に作業場所や技術者についての条件、作業時間で清算する場合は月額標準労働時間や超過・不足した場合の清算方法などを明記して下さい。

   個別契約書を注文書とする場合は、受け取った開発会社から
注文請書を受け取るのが一般的です。内容は、まったく同じにするか参照注文書番号を明記し「注文書の内容・条件に基づき」、と書けば問題ありません。

   案件ごとに結ぶ個別契約書で特に注意をしなければならないことは、納品物についてです。仕様書とひとことで書かずに、どんなドキュメント・設計書を納品してもらうか、開発会社と事前によく話し合って、なるべく細かく書いてください。

   システム開発で揉める原因のひとつに、機能と見積額との兼ね合いがあります。システムの規模が大きくなれば、分析調査なしに、機能をすべて洗い出すことはできないでしょう。機能をすべて洗い出すということは、用件定義が完了したことを意味します。開発会社としては、初期段階で発注側からの大まかな説明・企画を聞き見積額をはじき出したものの、分析調査〜 設計と進めるうちに、予想外に開発に時間が掛かるということや、その段階になって発注側から具体的な意見が出るということも少なくありません。

   そうなれば当然開発会社としては見積の再考を願い出るでしょうし、発注側は(発注書を出したということは)社内的に開発会社から出された見積額で稟議等が通ってしまっているので、見積の再考は難しいという事になります。こういう事にならないためにも、「最初に出てくる見積額はあくまで概算であり多少の増減はあり得る」という認識でいることと、もし分析調査した結果、許容範囲を超えた見積額が出された場合の対応を事前に決めておき、開発会社とも話し合っておくことが大事です。

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著者プロフィール
システムクリエイト有限会社  田中 徹
代表取締役。1963年生まれ。MS-DOS時代から、汎用機−PCでのデータ送受信を行ってのチャート(金融業)、表・グラフ描画(財務系)などのシステム開発を行う。 社内人事管理(勤怠・人材活用)、流通業、制御系の分野や集計業務なども手掛ける。ソフトウェアハウスや大手開発会社まで多数の現場で開発を経験し、33歳で独立。現在は各業種・分野でSEとして、またシステムコンサルタントとして活動中


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