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| 契約形態について | ||||||||||||
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最後に契約形態がEVMの普及と深くかかわりがあるので、契約形態について取り上げておきたい。ソフトウェア開発における代表的な契約形態としては、表4のものがあげられる。
表4:ソフトウェア開発における代表的な契約形態 システム構築においては請負契約を締結する場合が多い。請負契約の場合、発注者側からの視点で見ると支払う金額が決まっているため、コストへの関心は薄くなる(納期主体の管理になる)。 受注者側からの視点で見ても支払われる金額決まっているため、積極的に発注者側にコスト進捗まで報告しようとは思わないだろう。もちろん受注者側の社内プロジェクト管理としてEVMを利用すればコスト管理に効果を発揮するが、発注者と受注者のコミュニケーション・ツールとしては必要性が感じられない。 もう少し違った契約形態もある。PMBOKで一括請負契約の中に分類されている、「Fixed-price incentive fee(FPIF:インセンティブ契約)」という契約形態だ。例えばEAC(完了時総コスト予測)の80%のコストでシステム開発が完了したら、残った20%を10%ずつ発注者と受注者で分配するといった具合である。 インセンティブ契約の場合、発注者側からの視点で見ると、コストが減ることは大きなメリットであり、コスト進捗に関心を持つようになるだろう。しかしながら、受注者側からの視点で見ると残り20%も使い切りたい、もしくは20%を丸々利益としたいのが本音ではないだろうか。 これは受注者側から積極的に結びたい契約ではない。また、発注者側が「インセンティブ契約+EVMでの管理」を指定した場合、第1回で記載した通り、受注者側が管理工数を上乗せする材料となるため、当初の契約金額が割高になることを発注者側は覚悟する必要がある。 このように契約形態の観点でEVMの普及を考えた場合、受注者側の社内プロジェクト管理として広まることはあったとしても、発注者、受注者間のコミュニケーション・ツールとしての普及にはハードルがあり、双方にメリットがでる契約形態を考えることが課題である。 |
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| 総括 | ||||||||||||
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これまで5回に渡ってEVMについて解説をしてきた。受注者側としてEVM導入を検討する際のポイントを表5にまとめた。
表5:受注者側がEVM導入を検討する際のポイント 受注者側としては、可能であればEVM導入の準備をしておきたい。社内のプロジェクト管理手法として効果が期待できるし、上記のポイントをクリアできれば、副産物として社員にコスト意識が芽生える可能性もある。 それまでは納期までに高品質のものを納品すればよいとだけ考えていたとしても、該当する作業が見合ったコストで見積りがされているか、コストの範囲で出来高分の仕事を仕上げるにはどうすればよいのかと考える人もでてくるだろう。こういう人材が増えていくのは、企業として財産になる。 発注者側としてEVM導入を検討するにあたっては、次のことがポイントになるだろう。
EVMを導入する効果を発注者側、受注者側の双方がわかち合える環境を整えること
発注者側も単にEVMによる管理を指定するのではなく、契約形態も含めたその特性を理解した上で、必要に応じてEVMを活用して欲しい。双方がメリットを感じられないのに報告だけを強要しても、管理コストが高くなるだけである。 例えばEAC(完了時総コスト予測)を下回った金額分については、機能追加や機能改善に割り当てられるようにすれば、発注者側としては全体で見ればコスト削減になり、受注者側としても売上が減ることはない。このように、双方がメリットを得るための具体的な運用方法を検討するとよいだろう。 この連載が読者の方々にとって、EVMの理解を深める助けとなるとともに、EVMをいつ/何のために導入すべきかの判断の一助となれば幸いである。
参考文献
PMBOKガイド 第3版 PMI |
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