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本格化するシステム運用マネジメント強化の取り組み
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第3回:システム運用のマネジメント強化のアプローチ
著者:野村総合研究所 浦松 博介 2005/6/29
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システム運用マネジメント強化のための有効なツール=ITIL
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これらの取り組みを通じて、企業に内在する7つの"カベ"を乗り越えつつ、システム運用のマネジメントの強化を徐々に図るのである。
図3:システム運用マネジメント強化のステップと"カベ"の関係
最近は、システム運用のマネジメント領域を体系的に整理し、フレームワークとして提供するITIL(IT Infrastructure Library)が登場した事により、顧客からITILを使った運用管理業務の改善改革の要望を頂くことが多い。私たちはこのような顧客からの要望に対し、現状の可視化や新管理プロセスの設計・導入、定着状況の定期的な評価を行う際のリファレンスモデルとしてITILを活用する。
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ITILとは
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ITILとは、1989年当時、膨らみ続けるIT運用費に苦しむ英国政府のCCTAがIT運用管理の成功事例(ベストプラクティス)を調査/分析し、英国政府へのIT導入時にITサービスの提供者が理解すべき事項をまとめた文書(フレームワーク)である。
ITILでは、事業と技術の間を取り持つシステム運用の管理業務をITサービスマネジメントとして捉え、ITサービスのパフォーマンスを維持するために必要なマネジメント領域として「サービス管理」、「情報通信・技術インフラストラクチャ管理」、「アプリケーション管理」、「セキュリティ管理」の4つの管理領域をフレームワークとして体系的に整理している(表1)。
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管理領域 |
概要 |
サービス管理 |
サービスサポート |
ITサービス提供者が、ITアプリケーションをサポートするために必要となる以下の1つの機能と5つのプロセスについて述べている。
- サービスデスク(機能)
- インシデント管理
- 問題管理
- 構成管理
- 変更管理
- リリース管理
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サービスデリバリ |
ITサービス提供者が利用者にとって最適なサービスを提供するために必要とされる、以下の5つのプロセスについて述べている。
- キャパシティ管理
- ITサービスのための財務管理
- 可用性管理
- サービスレベル管理
- ITサービス継続性管理
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情報通信・技術インフラストラクチャ管理 |
情報通信や情報技術インフラを構築する際の主要プロセスについて述べている。 |
アプリケーション管理 |
ソフトウェアのライフサイクルや、開発工程上起こる様々な課題について述べている。 |
セキュリティ管理 |
情報セキュリティ管理者の重要性を明らかにした上で、ITサービスを提供する上での必要なセキュリティレベルについてITサービス提供者側の観点から述べている。
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表1:ITILの概要(ITサービスの管理領域)
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ITILでは上記の4つの管理領域の他に、ビジネスとITサービスの関連について述べている「The Business Perspective」や、企業のIT調達やソフト開発、運用に携わっている人向けに、ソフトウェアのライセンスコントロールなどに関する組織の役割・責任上の課題について述べている「Software Asset Management」、そして、サービスマネジメント導入のベストプラクティス集である「Planning to Implement Service Management」(今夏に日本語化される予定)がある。
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サービスサポートとサービスデリバリ
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次に、現在日本で脚光を浴びており、関連書籍の日本語訳も行われているサービスサポートとサービスデリバリについて説明する。これらの詳細な内容については既にさまざまなメディアを通じて説明されているため、ここではこれらの概要について述べる。
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サービスサポート
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サービスサポートでは、システム運用サービス提供者が日々の運用業務の遂行能力を高めるのに資するマネジメント領域について、表2に示す1つの機能と5つの管理プロセスをフレームワークとしてまとめている。
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機能・管理領域 |
対象業務 |
サービスデスク |
利用者からの問い合わせ(一般問い合せ、障害受付、変更依頼など)の一次応対窓口業務 |
インシデント管理 |
顧客や利用者などから寄せられる様々なインシデント(問い合せ、障害連絡、サービス要求など)を記録し、重要度、影響度を考慮して、適切に対応されていることを管理する |
問題管理 |
障害発生時の原因調査、及び原因の特定を行い、重要度、影響度を考慮し、システムへの変更要求を行う
障害分析を行い、根本原因の追求や障害発生の予防措置を行う |
変更管理 |
変更の規模・内容に応じて標準的な変更プロセスに沿った形で、適切な変更管理を実施する |
リリース管理 |
変更管理にて承認された変更に伴うリリースを確実に実施する |
構成管理 |
様々なシステムの構成要素(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、アプリケーションなど)の管理を行う |
表2:サービスサポートの概要
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サービスサポートでは、各管理プロセスにてそれぞれが管理を行うべき事項が自律的に管理されながら、他のプロセスと密接に連携することにより、全体の管理の質が維持される仕組みとなっている(図4)。
図4:サービスサポートの概要
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著者プロフィール
野村総合研究所株式会社 浦松 博介
野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部 産業ITマネジメントコンサルティング部 システムマネジメントグループマネージャ。入社後、アプリケーションエンジニアや海外留学などを経て現職。現在はシステムコンサルタントとして情報システムの運用改革や調達支援、プロジェクトマネジメント支援などの業務に携わる。
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