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ビジネス・プロセス・マネージメントの現状 〜 「経営と情報の架け橋」の実現にむけて
ビジネス・プロセス・マネージメントの現状 〜 「経営と情報の架け橋」の実現にむけて

第7回:プロセスの検討が必要な理由
著者:IDSシェアー・ジャパン  渡邉 一弘   2005/8/22
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新しいプロセス策定に向けた検討

   ここでは、前述の現状のビジネス・プロセスに明記された改善課題に対し、検討・実施された事例をご紹介します。

   図3に上部に示すように株式会社キャッチネットワークの企業活動を大きく捉えた場合、販売〜加入受付〜現地調査〜契約〜工事〜請求という「新規顧客に対するプロセス」と変更受付〜工事〜請求という「既存顧客に対するプロセス」の2つの大きなプロセスがあることが分かりました。そして、このプロセスに潜む課題を記述していくと、大半の改善課題が、「既存顧客に対するプロセス」にあることが分かりました。

企業活動
図3:企業活動
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


   例えば、既存顧客のとある世帯のお父さんから、「息子は一人暮らしで、インターネット・サービスに加入しているのだが、この春に大学卒業で自宅に帰ってきます。息子は引き続き我が家でインターネット・サービスを受けたいといっているのですが、どうすればいいでしょうか?但し、新入社員研修やらなんやらで、1ヶ月は寮暮らしなので、その間休止して欲しいともいっています。それとその移設の際に、私(父親)が入っている多チャンネルサービスを息子の2階の部屋でも視聴できるように機材の増設をしてもらいたいのですけど、どうすればいいでしょうか?」と問合せがあった場合、どのように対応するかというと、表2のようになります。

  1. 息子のインターネット・サービス → 休止処理
  2. 息子の住所変更 → 移設処理
  3. 世帯のCATV機器 → 増設処理
  4. 息子のインターネット・サービス → 休止再開

表2:作業状態


   表2の4つの依頼を受付けて、移設工事・増設工事・休止再開工事の発注が工事業者になされるわけです。そして、今まで適用されなかった「両サービスSET割引」を考慮した請求を作らなければなりません。

   ここで、株式会社キャッチネットワークは、既存顧客に対する「変更受付〜工事〜請求」というプロセスを実行するために、株式会社キャッチネットワークは、受付種別ごとに担当者をおき、受付種別ごとに異なった受付画面を持ったシステムを利用する体制をとっていらっしゃいました。

   すると前述のような複数依頼に対して、複数担当者間で工事発注確認や工事完了登録確認を相互に行わなければならない状況が発生します。そして、進捗中の案件確認のためには、それぞれ個別の受付画面から、お客様を特定して個別に確認しなければなりませんでした。

   これでは、「変更受付〜工事〜請求」というプロセスを実行するためには、担当者の経験に頼る部分が多くなります。場合によっては、工事完了処理を行い、請求を行うタイミングが遅れてしまい、顧客からの入金が遅れてしまうことも発生します。そして、特に3月〜4月など引越しが多くなる繁忙期には、顧客からの問合せが多くり、現場は大変な状況に陥ってしまいます。

   これでは、前述した利益確保に向けた内部コストの低減は難しい状況となります。そして、売り上げ拡大に向け新サービスを投入して新規顧客を獲得したとしても、新サービスに加入した既存顧客になった顧客からの様々な変更依頼に対するための社内プロセスが確立されていなければ、内部コストは増大していまいます。

   これでは、新サービスを投入して売り上げを拡大しても、内部コストが増大してしまい、結果、利益を確保することが難しいという、負のスパイラルに陥ってしまいます。

   そこで株式会社キャッチネットワークは、この大きな問題に対し、図4に示すように表3の項目を実施されることを検討されました。

新しい業務プロセス
図4:新しい業務プロセス
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


  • 受付種別に依存しない変更受付〜工事プロセスの標準化
  • 変更受付というプロセスに対する担当者の配置
  • 顧客画面をTOPとし、そこから各受付種別画面への遷移

表3:新しい業務プロセス


   そして今現在、株式会社キャッチネットワークは、この上記3点が改善された新プロセスの実現のため、日々施策を検討され、実施されています。

   更に株式会社キャッチネットワークは、現状のプロセスに課題を見出すと共に、「放送事業」「通信事業」の市場・顧客からの要求や、CATV業界及び自社戦略の方向性から見出される課題に対して、柔軟に対応できる新プロセスは、どうあるべきか?という検討を日々実施されています。

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IDSシェアー・ジャパン株式会社 渡邉 一弘
著者プロフィール
IDSシェアー・ジャパン株式会社  渡邉 一弘
工場でのHDD製品設計を経験後、SEとしてシステム構築を担当。日々、現場の業務とシステム機能の「ギャップ解消」に悩み、業績に直結するシステムやROIを求める経営者に対し、解決策として見出したのが「プロセス管理」というキーワード。現在は、IDSシェアー・ジャパンにてプロセス管理ツール「ARIS」のプロセスコンサルタントとして従事。


INDEX
第7回:プロセスの検討が必要な理由
  なぜプロセス検討が必要だったのか?
  プロセス検討の第一歩
新しいプロセス策定に向けた検討
  プロセスの活用