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Ajax
Ajaxが開く未来

第5回:Ajaxの活かし方
著者:HOWS  清野 克行   2006/6/13
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サーバ負荷の軽減

   さらに、Ajaxエンジンはネットワークの負荷のほかにサーバの負荷を削減することになる。Ajaxエンジンではサーバへのリクエストが必要か否かを判断し、必要がない場合はAjaxエンジン内だけで処理することができるからだ。

   例えば表示画面のソートを行う場合、従来モデルではサーバに処理を依頼するほかなかったが、Ajaxモデルではサーバとの通信を行わず、Ajaxエンジン内で行うことも可能だ。これは通信負荷の軽減にも貢献する。

   このようにAjaxエンジンの配置によって、ユーザからのリクエスト(操作)に対してクライアント側でできることはクライアントで行い、必要な場合のみサーバに処理を依頼し、処理結果は必要最小限のデータで受け取ることが可能になる。


クロスブラウザの問題

   Ajaxのデメリットとして開発者を一番悩ますのはクロスブラウザの問題である。現在でまわっている新しいブラウザでも、すべてを動作保障は容易なことではない。企業内システムの場合はブラウザの統一などの対応も比較的容易だろうが、外部インターネットの場合は主要ブラウザへの対応は避けられない。

   この点がAjaxモデルでの悩ましい所だが、「prototype.js」などのJavaScriptライブラリを使用することによって、クロスブラウザ対策で費やされる時間を大幅に削減することも可能だ。しかし最終的にはブラウザベンダー側からのW3C勧告仕様への歩み寄りを期待したい。Ajaxは、ほぼすべてW3Cの勧告にそったWeb技術を使用しているのだから。


Ajaxの可能性

   クライアント側での専用アプリケーションが不要で、デスクトップアプリケーションなみの操作性を実現するAjaxは、企業向けアプリケーションの用途に非常に向いていることは間違いない。そのメリットは前項でも触れたとおりだが、既にUSでは業務アプリケーションにAjaxを適用し、大きな効果をあげている会社も多くある。日本でも企業向けアプリケーションで当たり前のようにAjaxが使用される日もそう遠くないかもしれない。

   また、Ajaxは企業向けアプリケーションよりも、インターネットでの利用における知名度の方が高いが、この分野でのAjaxの可能性はWeb 2.0の枠組で考えることもできる。「第4回:Webアプリケーションの進化とシステムの利用形態の変化」で触れたオンラインワープロやスプレッドシートのようなAjax単独での新しいアプリケーションのほかに、既存のアプリケーションとAjaxの組合せによる、新たなユーザ価値/機能の創生、Googleなどのサーバサイドに蓄積された巨大なデータストアをマニプレイトするクライアント技術としてのAjaxも大いに期待できる。

   いずれにせよAjaxの応用はまだはじまったばかりだ。Ajaxの可能性を引き出す新しいアプリケーションがどのような形でいつ我々の眼の前にあらわれてくるのか、これからも目を離すことはできない。

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HOWS  清野 克行
著者プロフィール
株式会社HOWS  清野 克行
慶應義塾大学工学部電気科卒。日本アイ・ビー・エム株式会社、日本ヒューレットパッカード株式会社などで、製造装置業を中心とした業務系・基幹業務系システムのSE/MKTG、3層C/Sシステムでの社内業務システム開発の業務に携わる。現在Ajax/Web 2.0関係のセミナー講師、書籍執筆などを行っている。情報処理学会会員。

INDEX
第5回:Ajaxの活かし方
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  Ajaxのメリット&デメリット
サーバ負荷の軽減