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Ajaxが開く未来

第4回:Webアプリケーションの進化とシステムの利用形態の変化
著者:HOWS  清野 克行   2006/5/19
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Webアプリケーション化によるPCの変化

   前回では、Web 2.0の観点からAjaxの役割とともに、Webシステムの進化について解説してきた。現にZimbraやNum SumといったAjaxアプリケーションが登場し、Webシステムは現在のデスクトップアプリケーションの代替となりうる可能性を秘めている。

   デスクトップアプリケーションがWebシステムに移行すれば、すべての操作がブラウザで行えることになる。そうなれば、WindowsやMacといったOSを気にすることがなくなり、重要なのはブラウザのUIになる。この変化はソフトウェアだけに留まらず、ハードウェアさらにはPCの使用形態にも影響を与えるのは明らかだ。

   例えば、Webシステムのみでデスクトップアプリケーションを必要としないのであれば、ハードディスクの必要はなくなり、データはすべてネットワーク経由でサーバに蓄積することも可能だ。

   またソフトウェアのみならず、PCの使用形態やハードウェアまで含めた質的な変化をもたらす動きも既に起きている。Web 2.0の象徴的存在でもあるGoogleは、OSにLinuxを採用した100ドルPCを支援している。

Ajaxによるユビキタスシステム
図1:Ajaxによるユビキタスシステム

   Googleの100ドルPCのOSはLinuxだが、主役はブラウザであって「ブラウザPC」といっても過言ではない。確かに、現在の100ドルPCは教育プロジェクトで、貧困をなくすことを目的としているが、一般ユーザの使用へと発展してもまったくおかしくないものだ。


データの管理方法の変化

   先にも説明したように、Ajax化したオフィスソフトをブラウザPCで使用するようになれば、データはすべてネットワーク経由で、サーバ上で管理できるようになるわけだが、これはユーザの使用形態についても大きな変化をもたらす。

   ユーザは自宅であろうと外出先であろうと、そこにあるPCが自分のPC環境となる。ノートPCを持ち歩く場合でも、使用するデータをコピーしたり再保存したりする手間がなくなる上、持ち歩くノートPCはブラザPCであるから小型・軽量化するだろう。

   また、ユビキタス化はこれからもトレンドだろうが、ブラウザPCの出現はユビキタス化を推し進める効果があると考えられる。Ajaxの漢字変換機能を使用すれば、旅行先が海外で、日本語IMEのないPCからであっても日本語データ入力も可能になる。

   こうなれば、ユーザデータの保管・管理形態も当然変わる。ユーザデータはすべてサーバで管理されるが、データの機密性・保全性を高め厳重に管理されなければならない。

   現在、クライアントPCでのデータ管理には様々な問題がある。これはPCの一般普及によって、ユーザの平均的スキルレベルが低下しているのに反比例して、PCに所持されるデータの重要度が向上していることにも起因している。クライアントPCでも重要なデータが扱われるようになった現在、データの維持管理は専門の会社などに委託するのが妥当だろう。

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HOWS  清野 克行
著者プロフィール
株式会社HOWS  清野 克行
慶應義塾大学工学部電気科卒。日本アイ・ビー・エム株式会社、日本ヒューレットパッカード株式会社などで、製造装置業を中心とした業務系・基幹業務系システムのSE/MKTG、3層C/Sシステムでの社内業務システム開発の業務に携わる。現在Ajax/Web 2.0関係のセミナー講師、書籍執筆などを行っている。情報処理学会会員。

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