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リッチクライアントの現状と今後の動向
リッチクライアントの現状と今後の動向

第3回:リッチクライアントの適用事例
著者:野村総合研究所  田中 達雄   2005/3/28
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会社Bの販売統計システム


  移行前 移行後
クライアント Centuraで開発したWindowsネイティブアプリケーション .NET Framework上で動作するWindows Form(200〜300台)
サーバ DBサーバ:Solaris(Oracle) APサーバ:Windows 2003
DBサーバ:Solaris(Oracle)
開発環境 Centura Visual Studio .NET
C/S接続 SQL*Net Webサービス(SOAP)

   会社Bでは、過去クライアント/サーバ・システム版の販売統計システムを利用していたが、Web環境への移行の流れを受け、リッチクライアントへの移行を決断した。過去の販売統計システムでも大きな問題はなかったが、強いていえば「プログラム配布」が問題としてあげられた。

   リッチクライアントを採用することで、Web化を実現するとともにプログラム配布の問題も解決したが、リッチクライアントアプリケーションを動作させるインフラに関しての問題が顕在化した。

   主な問題は、インフラ自体のインストールとパフォーマンスである。リッチクライアントの長所として配布が容易であることがあげられていたが、インフラ自体のインストールについてはクライアント/サーバ・システムと同じように各クライアントマシンにインストールする必要があり、頻繁に修正パッチが必要となるようだと運用上大きな問題となる。また、古い(低スペック)PCを今でも一部で使っており、インフラ自体がPCの多くのリソースを消費してしまうため、すべてのクライアントにリッチクライアントアプリケーションを展開することは困難であった。

   そのため会社Bでは、アプリケーションを開発する場合、まずHTMLクライアントを検討し、高度な操作性を必要とするアプリケーションには、リッチクライアントを適用にする、という使い分けをしている。


会社Cの社内総合調達システム
  移行前 移行後
  外部業者接続 社内会計システム 外部業者接続 社内会計システム
クライアント Notes PowerBuilderで開発したWindowsネイティブアプリケーション Excelテンプレート+iMaker Biz/Browser(4000台)
サーバ Windows NT Server UNIX    
開発環境 Notes PowerBuilder Excel Biz/Browser
C/S接続     CI-NETデータ
XMLデータ
XMLデータ

   会社Cは、1998年に調達購買システムを導入した。このとき外部業者との接続用クライアントにはNotesを使っていたが、画面を開くのに3分程度もかかっていたとのこと。2000年にはそのパフォーマンスを改善するために、一時的にMetaframeを導入(3分を数秒へ)したが、現在、Excelをリッチクライアントとして使用している。

   Excelを採用した理由は主に表4のとおりである。

  • 外部業者に対してローインパクトであること
  • ライセンスがかからないこと
  • 外部業者に何かをインストールさせずにすませたい
  • 外部業者の作業環境(ネットワーク環境)を考慮し、ネットワーク負荷を軽減すること

表4:会社Cがリッチクライントを採用した理由


   接続する外部業者は5000社にのぼるため、ライセンスやインストールすることが無いことが必須要件であったようだ。

   次に調達システムと連動する会計システムであるが、オープン化/Web化の流れを受け、クライアント/サーバ・システムからWebアプリケーションシステムへ移行することを決定したが、表5のような要件をクリアするクライアントアプリケーションが求められ、結果、会社CではBiz/Browserを採用している。

  • ブラウザベースで動作すること
  • 従来の基幹系システムと比べ、違和感なく操作できること
  • FEP制御やカンマ編集、入力文字数制御など高いユーザビリティが実現できること
  • 入力項目が多く画面数も多くなるため画面遷移レスポンスが高速であること

表5:会社Cの会計システムに必要とする要件


   しかしながら、デメリットとして表6の項目もあげている。

開発コスト(ただし、次のシステム開発時には半分以下になった)
  • 独自開発環境でコミュニティが小さく、熟練した開発者が不足している
  • ある程度慣れた開発者ではればそんなにかからない開発も、初めは工数の半分を教育に費やした
  • ヘルプ先も限定されてしまう
運用コスト
  • ライセンスが高い

表6:会社Cのリッチクライアント導入後のデメリット


   .NET FrameworkやJ2SEのように実行環境が無償のリッチクライアントもあれば、Biz/BrowserやCurlのように有償のリッチクライアントもある。会社Cの場合、社内には有償、社外には無償(実際Excelは有償だが、調達システムのために購入する訳ではなく、外部業者のクライアントにはすでにインストールされているという意味で無償)のものを採用している。社外の場合、外部業者側も余計なソフトをインストールしたくないし、会社C側もクライアント環境を面倒見たり、ライセンスを負担したりしたくない。結果、採用するリッチクライアントも、おのずと絞られてくる。

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野村総合研究所
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。


INDEX
第3回:リッチクライアントの適用事例
  アンケート内容
会社Bの販売統計システム
  HTMLクライアントからリッチクライアントへ移行した事例