TOPシステムトレンド> 特長2:比類なきスケーラビリティー
ITインフラの新しい展望
ITインフラの新しい展望

第2回:IBM System z9 - IBMオープン・メインフレームの新しい潮流
著者:日本アイ・ビー・エム  川口 一政   2005/10/24
前のページ  1  2  3   4  次のページ
特長2:比類なきスケーラビリティー

   スケーラビリティーという点においてz9-109では、プロセッサースピード、CP数、メモリー・サイズ、そしてI/Oバンド幅、すべての点において大きな拡張をほどこし、バランスの取れた処理能力を提供しています。z990と比較して、表4のとおりに機能強化がはかられています。
  • 単体プロセッサーのスピードで約1.35倍
  • 最大CP数は32wayから54wayに約1.7
  • 最大処理能力では約2倍
  • I/Oバンド幅は約1.8倍
  • メモリーは2倍
  • LPARの数も2倍

表4:z9-109の強化点

   またz9-109では、MSS(Multiple Subchannel Set)により、PAV(Parallel Access Volume)用に2つのサブチャネル・セットを持つことができるようになるため、大規模なシステム構築時の課題である、サブチャネルの不足を解決します。さらにI/Oの効率化と高速化にMIDAW(Modified Indirect-Data-Address Word)という新機能も提供しています。MIDAWによって、チャネル、ダイレクター、制御装置のオーバーヘッドを低減することができるので、DB2やVSAMなどのパフォーマンスが向上します。


特長3:ビジネス・レジリエンシーの向上 - 暗号化と災害対策機能の拡張

   z9-109では暗号化機構として、Crypto Express2とCPACFを提供します。Crypto Express2機構は1つの機構に2個の暗号化エンジンを搭載します。これによって、セキュア・キーと公開キーの両方の処理が実行可能なコプロセッサー(セキュア・キー暗号化トランザクション用)モードの機能と、新たに公開キーに特化したアクセラレーター(SSLアクセラレーション用)モードの機能を切り替えて使うことができます。

   CPアシスト暗号化処理機構(CPACF:CP Assist for Cryptographic Function)は、各PUに高度な暗号化エンジンを搭載し、SSLトランザクションに最適な処理を提供します。z9-109に対するクリア・キー・モード機能強化と、新たにAES(Advanced Encrypto Standard)、SHA-266ハッシュアルゴリズム、擬似乱数生成のPRNG Instructionという3つのアルゴリズムを追加し、従来のDES(Triple DES)、SHA-1と共に、豊富な暗号化アルゴリズムをサポートします。

   また、災害対策機能も拡張されています。並列Sysplexを構成する際に必要な外部タイマーを不要にするSTP(Server Time Protocol)を提供する予定です。開発意向表明をしたSTPではサーバー自身がタイマー機能を持ち、現在の40Kmというタイマー間の制限を100Kmに拡張しますので、災害対策システム構築に有効です。


特長4:オープン化の対応

   FCP接続環境では、従来はスイッチ経由でしか接続できなかったFCPデバイスがチャネルとダイレクトに接続できるようになり、柔軟な構成が可能となりました。また、N_Port ID Virtualizationをサポートしますから、さらなる柔軟性とチャネル数の削減も可能になりました。さらにLinux環境では、従来VM下では可能であったプログラム起動のRe-IPLが、LPAR環境でもリモートで可能になりました。なお、使用環境はSCSIとECKDデバイスをサポートします。

   またz/OSではすでにIPv6のロゴを取得していますが、ハイパーソケットでもIPv6をサポートするようになったため、膨大なIPアドレスを管理できるようになっています。

   z9-109では、OSA-Express2 1000Base-Tイーサネットとのネットワーキング機能が強化されています。これにより、Large Send(TCPセグメンテーション処理のオフロード)、640個のTCP/IPスタック(仮想化を促進)、無停止でのLIC(Licensed Internal Code:ライセンス内部コード)アップデート(トラフィックの混乱を最小化)などがサポートされるようになります。GVRPサポートにより、仮想LAN管理機能が拡張されました。

前のページ  1  2  3   4  次のページ


日本アイ・ビー・エム株式会社 川口 一政
著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社  川口 一政
日本アイ・ビー・エム株式会社 ICP-シニア・コンサルティングI/Tスペシャリスト アドバンスト・テクニカル・サポート
1984年入社。システム・エンジニアとして銀行のアプリケーション開発を担当。1993年よりサーバーのスペシャリストとして並列Sysplexのテクニカル・サポートを担当。現在はzSeries全般のテクニカル・サポートとして、日本のみならずアジア・パシフィック各国の技術サポートを担当。


INDEX
第2回:IBM System z9 - IBMオープン・メインフレームの新しい潮流
  IBM Systems Agenda
  IBM System z9 109の位置づけと4つの特長
特長2:比類なきスケーラビリティー
  IBM System z9 109の概要