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日本編(中央官庁編)
世界各国政府のオープンソース採用動向

第7回:日本編(中央官庁編)
著者:三菱総合研究所  谷田部 智之   2005/6/17
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電子政府・電子自治体への利用導入を検討する総務省

   一方で全国の各自治体を管轄する総務省では、電子政府・電子自治体を推進する政策を打ち出しています。その際、情報セキュリティを確保することが特に重要視されています。

   総務省ではシステム中で使われている、オープンソースを含めた各種プラットフォームがセキュアであるかどうかを調査・検討する研究会「セキュアOSに関する調査研究会」を立ち上げています。2004年に公開された報告書では、システムを構築する際に特定の種類を指定するような調達方法は不適当であり、機能や品質を含めた上で総合的に判断すべきとしています。

   オープンソースは商用ソフトウェアと機能面・性能面で同等であるとしながらも、高度なセキュリティ水準が必要な場合には、追加ソフトウェアが必要となる場合やサポート保証を契約に盛り込む必要があるなどの指針が示されています。さらにベンダーの協力が得られれば、各OSをソースコードのレベルで分析・評価してセキュリティの観点から評価する計画もあるようです。


アウトソーシングの打ち出し

   また総務省では、電子自治体に共通する電子申請・電子申告・財務会計・人事給与などのシステムを共同で開発することで、効率的な投資を目的とした「共同アウトソーシング・電子自治体推進戦略」を打ち出し、既に開発がはじまっています。機能別に開発を担当する複数の自治体(都道府県)グループを公募した上で県内の市町村と調整し、汎用性の高いシステムを作るという仕組みです。

   大きな特徴として、ここで開発したソフトウェアはソースコードを無償公開し、全国の各自治体で自由に改変・使用できるようにする計画になっています。まさに「オープンソース」的な流れですが、残念ながら使用できるのは自治体関係者にのみ限られています。

   また、実際の開発に関してはベンダーが担当していますが、ソースコードを公開することが求められていることやコスト面から、開発環境や実行環境にオープンソースを活用しているケースもあります。2005年からいくつかの市町村において住民向けのサービスをはじめています。


オープンソースによる新たなビジネスチャンス

   このように中央官庁では、日本国内のソフトウェア産業育成や電子政府・電子自治体などの公的機関で安全かつ安心に利用できる環境のために、オープンソースを推進する政策をとっています。また前回でも紹介しましたが、地方自治体でも現場や住民のニーズに合わせてオープンソースを採用する事例が増えています。このことは、オープンソースだから不安・実績がないという理由だけで敬遠していた自治体にとって大きな変化をもたらしつつあります。

   さらにベンダーにとっても、ソフトウェアの価値からサービスの価値を重視したシステムを提供するといったビジネスモデルに変化しつつあるともいえます。そのため、新たにLinuxプラットフォーム向けの製品を作ることや、商用製品を含め様々なソフトウェアを組み合わせたSIを提供するという、新たなビジネスチャンスが増えているともいえるのではないでしょうか。

産業振興のためにOSS普及を目指す日本
図2:産業振興のためにOSS普及を目指す日本

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三菱総合研究所 谷田部 智之
著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所  谷田部 智之
情報技術研究部 研究員
2000年(株)三菱総合研究所入社。画像処理・認識研究やセンサネットワーク、ユビキタスコンピューティングなどの研究開発業務に従事。最近は通信業界関連の調査も手がける。最新版のソースコードからコンパイルしてインストールする症候群は治まりつつあるが、ついRPMを作り直してしまう癖は今も健在。博士(工学)。


INDEX
第7回:日本編(中央官庁編)
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電子政府・電子自治体への利用導入を検討する総務省
  まとめ