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世界各国政府のオープンソース採用動向
第7回:日本編(中央官庁編)
著者:
三菱総合研究所 谷田部 智之
2005/6/17
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まとめ
これまで7回に渡り、日本を含めた世界各国の政府・自治体でのオープンソースに関する政策および導入状況について紹介してきました。地域や各国の経済状況・ソフトウェア産業の状況によって、オープンソースに対する期待や導入する目的は多少異なっています。
タイプ
政策
国
オープンソース急進派
政府調達にオープンソースを義務付け
ブラジル、南ア
オープンソース優遇型
同評価ならオープンソース採用、
可能な限りオープンソース採用
中国、タイ
オープンソース対等型
オープンソースと商用ソフトの相互運用性を確保した上で、同じ基準で評価
欧州、台湾
相互運用性重視型
ファイルフォーマットと通信規格の公開を義務付け
欧州
完全自由競争型
完全な市場競争に任せる
表1:オープンソース採用レベル
当然のことながら、システム開発にかかるコスト削減効果に対する期待は大きいのですが、政府や公的機関にとっては必ずしもそれだけではありません。
環境整備の狙い
例えば東南アジアおよび南米といった発展途上地域においては、家庭へのPCの普及率が低いため、安価なデスクトップPCによるデジタルデバイドの解消が主な目的の一つになっています。特にアジア地域では、英語圏で作られたソフトウェアをそのまま使うことが難しく、デジタルデバイドを促進させる一因になっています。この点においては、日本のデスクトップ環境においてもオープンソースがあまり使われていないことから解るかと思います。そのため、日本語環境の充実としてフォントや印刷環境を公的な資金から民間企業に提供して開発しています。
またタイ語版Linux(TLE)をはじめとして、ローカライゼーションあるいは多言語化が各国で進められています。Windowsも発売されていないカンボジアのようなケースもあり、現地の言語や文化に合わせたソフトウェアを開発する際には自由に変更できるオープンソースが適しているでしょう。
スペインや北海道の事例で紹介したように、小中学校の教育の一貫として、特定のOSやアプリケーションに依存しないITリテラシ教育を行っています。このようなプロジェクトは情報化の遅れた地域において、デジタルデバイドの解消に寄与すると考えられています。
新たな市場の形成
発展途上国だけではなく、ヨーロッパの先進国も含めて、自国のIT産業の育成・振興政策を目的に掲げている国も多数見受けられます。これはソースコードを利用して、自国の技術者を増やすことや技術力の向上をはかり、さらに健全な市場を新たに作ることが目的でもあります。
さらにオープンソースを導入することで、単一製品を使うセキュリティ上のリスク軽減や特定製品や特定ベンダーへの依存度軽減、オープンスタンダードの準拠による相互運用性向上をはかることを狙っています。このことは、セキュリティ上の不安やベンダーロックイン、ライフサイクルの短期化といった将来負担する可能性のあるコストを削減しているともいえます。
図3:オープンな市場に移行
もちろん、政府・自治体にとって、このような政策実現にはベンダーや開発者の協力なくして成り立ちません。ベンダーにとっても新たなビジネスモデルを構築することが求められています。
今後、オープンソースだからということで事例が報道されるだけでなく、開発・導入することで得られたメリットやデメリットやユーザの視点などの知見がさまざまな地域、分野で本格的に利用されることに期待しています。
(画像の各地域名をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
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著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所 谷田部 智之
情報技術研究部 研究員
2000年(株)三菱総合研究所入社。画像処理・認識研究やセンサネットワーク、ユビキタスコンピューティングなどの研究開発業務に従事。最近は通信業界関連の調査も手がける。最新版のソースコードからコンパイルしてインストールする症候群は治まりつつあるが、ついRPMを作り直してしまう癖は今も健在。博士(工学)。
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第7回:日本編(中央官庁編)
今回は
電子政府・電子自治体への利用導入を検討する総務省
まとめ