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BIの現状と今後
BIの現状と今後

第1回:全体最適という方向性をみせるBI
著者:野村総合研究所  城田 真琴   2006/3/7
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戦略目標の策定

   ここでは、経営層がビジネス上の戦略目標とその達成度の測定方法を定義する。「顧客満足度向上」や「高品質な製品の製造」などが戦略目標の例である。これらに対する達成度の測定方法がいわゆるKPI(Key Performance Indicator)であり、「顧客満足度指数」や「1000個当たりの不良品数」などである。会社全体としての戦略を定め、それをブレークダウンし、部門ごとに戦略やそのKPIを策定する場合は会社全体としてそれらの整合性がとれたものになっているかについて注意しなければならない。

   また戦略目標を定義して実現に向けるため、組織全体としての課題や施策などを整理するための手法の1つにバランス・スコアカードから生まれた「戦略マップ」がある(図4)。これは「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」という企業活動を評価する4つの視点からからみて何が重要かを戦略目標という形で定義し、戦略目標間の関係を1枚の戦略マップで視覚的にわかりやすく表現したものである。それぞれの戦略目標には、その成果を管理するKPIを設定する。

戦略マップの例
図4:戦略マップの例


計画

   次のステップではビジネス戦略を実行するための計画を立案し、ヒトやカネといったリソースの配分を行う。

   計画立案のプロセスでは、企業全体の戦略目標をその実現に向けて、より具体的な目標や手段に落とし込んで行くことが必要である。


モニタリング

   CPMのプロセスで重要となるのが、パフォーマンス(業績)をタイムリーに監視し、分析を行うモニタリングのプロセスである。

   ここでは事前に定義したKPIを継続的に監視することによって、設定した目標に対する個人やグループの達成度を常に知ることができる。もし達成度が期待した数値を下回っていれば、改善のための何らかの措置を講じたり、リソースを追加したりするなどの対応を取る必要がある。

   なおこのパフォーマンスのモニタリングで用いられるのが、ダッシュボードやスコアカードといったツール類である。


対応と改善

   CPMのプロセスで最も重要となるのが、最後の対応と改善のプロセスである。ここではモニタリングの結果明らかになった、戦略を遂行する上での問題点に対し、手に負えない状況に陥る前に適切な処置を施す。

   なおCPMツールによってはどういう問題があるかを明らかにした上で、追加で詳細な情報を提供し、更にどういったアクションを取るべきかというガイダンスまでも提供してくれるものもある。こうしたツールはボトルネックの原因分析とその対処について大きく貢献するだろう。

   そして大切なことは、こうした分析結果を戦略のプロセスにフィードバックし、計画の立案や予算計画に反映していくなど、継続的な取り組みへと繋げていくことである。

   前述した通り、CPMとは経営戦略の実行を最適化するためにデザインされた一連のプロセスや手法を指すが、このプロセスの中で用いられるツールが、バランス・スコアカードや予算システム、ダッシュボードという関係になる。

   なおこれらの方法論やアプリケーションの組み合わせに答えというものは存在しない。自社の環境やこれまでの取り組みに合わせて最適な組み合わせを検討する必要がある。


コンプライアンスがCPMを後押し

   CPMは継続的な業績管理に役に立つだけではない。コンプライアンスを効率的に実施する上でも有効なツールである(図5)。例えば、財務情報の適切な管理を求める米国企業改革法(Sarbanes-Oxley Act:通称SOX法)では、企業に「重大な出来事」が起こった場合、CEOなどの経営陣が48時間以内に情報開示を行うと同時に、その開示情報の正確性を証明することが義務づけられている。

ビジネス価値の向上とコンプライアンスに貢献するCPM
図5:ビジネス価値の向上とコンプライアンスに貢献するCPM

   経営陣が不測の事態が起こった場合の説明責任を全うするためには、常に社内で何が起こっているのかを把握しておかなければならない。そうしたニーズに対応すべく、CPMツールは業績データのドリルダウンや監査証跡の提供など、コンプライアンスに必要となる機能も提供してくれる。

   日本においても、2005年7月に金融庁が日本版SOX法の草案を公開して以来、SOX法を中心にコンプライアンスへの注目が急激に高まっている。実際、CPMツールを提供するベンダー側もマーケティング戦略として、コンプライアンス対応を謳い文句にしているケースが目立つ。

   最低限のコンプライアンスが実現できればよいという企業の場合は、CPMは必ずしも必要ではない。しかしコンプライアンスを契機にビジネス・パフォーマンスの向上を目指す企業にとって、CPMは非常に有用なツールとなるだろう。

   今回はBIのこれまでを振り返りながら、今後の動向のサマリと重要な要素の1つであるCPMについて解説した。次回はリアルタイムBIとDWHの動向について解説する。

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野村総合研究所 城田 真琴
著者プロフィール
野村総合研究所  城田 真琴
IT動向のリサーチと分析を行うITアナリスト。大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て2001年、野村総合研究所に入社。専門は、BIの他、SOA、EAなど。最近はSOX法対応ソリューションのリサーチを手がける。著書に「EA大全」(日経BP社)、「2010年のITロードマップ」(東洋経済新報社)(いずれも共著)など。


INDEX
第1回:全体最適という方向性をみせるBI
  はじめに
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戦略目標の策定