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先進諸国と比較したIT投資
先進諸国との対比におけるIT投資/ITコストダウンとITコストマネジメント

第5回:ITガバナンスの実現とITコストダウンの追求
著者:日本情報システム・ユーザー協会   2006/3/29
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IT調達上の問題と調達ルールの確立

   情報システム化投資にともなう「アプリケーションのIT調達」「ITインフラとしてのハードウェア/ソフトウェアの調達」では、次の問題が発生することがある。
アプリケーションのIT調達
  • ユーザ企業がアプリケーション仕様を見積仕様書として作成できない。
  • ユーザ企業が情報システム発注仕様書を作成できない。
  • 納品物件、納入業務の範囲を明確に定義しにくい。
  • 納品物件の機能性能と品質を明確に定義しにくい。

ITインフラとしてのハードウェア/ソフトウェアの調達
  • 業務上で必要なITインフラの機能/性能/容量の推定が困難。
  • 先端技術のIT機能の実用性/安定性の評価が困難。
  • マーケティング指向のITベンダーの価格戦略のため適切な価格交渉が困難。
  • ユーザ企業に先端IT製品の維持、保守のスキルが乏しくベンダー依存。

表3:情報システム化投資にともなう問題

   そして、この問題を抱えたままで調達を行わなければならない(表4)。

コンピュータ/ネットワーク・インフラ構築上の問題点(1)
必要なインフラの選定が困難
(1) 情報システムのシステムライフを通じた適切なコンピュータ/ネットワーク・インフラ機能の選定が困難
(2) 情報システム上で必要なコンピュータ/ネットワーク・インフラ機能の確定が容易でない
(3) 情報システム上で必要なコンピュータ/ネットワーク・インフラ容量(キャパシティ)の確定が困難
コンピュータ/ネットワーク・インフラ構築上の問題点(2)
先端ITの活用による情報付加価値形成が困難
(1) ITの技術革新に伴い、情報システムのマンマシン・インターフェースの改革が必要
(2) 情報蓄積/加工/伝達上の能力・機能の革新に伴う情報付加価値形成の創造が必要
コンピュータ/ネットワーク・インフラ構築上の問題点(3)
情報システム・インフラのコストダウン追求
(1) 既存コンピュータ/ネットワーク・インフラのコストダウン追及が容易でない
(2) 不要となるコンピュータ/ネットワーク・インフラの廃棄(不良情報システム資産の償却) コンピュータ/ネットワーク・インフラ構築上の問題点
(3) 既存情報システム(含む既存コンピュータ/ネットワーク・インフラ)の保守・運用コスト削減は容易でない

表4:コンピュータ/ネットワーク・インフラ構築上の注意点

   これらの問題を解決するためには、ユーザ企業が次の面でリーダーシップを発揮し、公平で透明な契約条件/調達納入内容に基づいて、システムベンダーとのシナジー効果を追求しながらシステム構築/運用を行うことが必要である(表5)。

アプリケーションシステム構築
  • 業務担当のエンドユーザによるビジネスプロセスの革新が必要。
  • 情報システム部門による全社の情報連携の仕組みの革新が必要。

ITインフラ構築上
  • 先端ITの実用性の評価とビジネスシステムへの応用力。
  • 各種IT製品の機能/性能の評価選定。

情報システムの調達
  • 情報システム構築見積仕様書の作成。
  • 契約条件/価格交渉を含む調達能力。

表5:ユーザ企業がリーダーシップを発揮する場面

   このためには、情報システムの構築/運用を発注するユーザ企業が調達責任を発揮することが重要であり、表6・7に示すような調達業務項目の遂行をユーザ企業が主体性を発揮して行うことが必要となる。

企業情報システム調達の問題点解決へのアプローチ
(1) 経営・事業計画部門による新しいビジネスモデル/ビジネスフォーメーションの創造力の習得と発揮
(2) 事業企画/事業部門によるビジネスプラン達成上のビジネスプロセス/業務の機械化・電子化の効果追求と仕組み作り
(3) エンドユーザによるビジネスプロセス/ビジネスルールの革新の展開
(4) 情報システム部門によるビジネス情報の体系化/収集分析/伝達活用の仕組みの改革の展開
コンピュータ/ネットワーク・インフラ構築上の問題解決
(1) 先端的/最新のITをベースとしたコンピュータ/ネットワーク・インフラの機能・性能の動向把握
(2) 異機種間のコンピュータ/ネットワーク・インフラの機能・性能の推定/測定の評価技術
(3) 継続的なコンピュータ/ネットワーク・インフラの機能・性能の改善
(4) 各種ベンダーのコンピュータ/ネットワーク・インフラの機能・性能とコスト対比と評価
情報システムの調達上の問題解決
(1) 情報システムの調達力の強化(価格交渉力の強化)
(2) 不要となるコンピュータ/ネットワーク・インフラの廃棄(不良情報システム資産の償却) コンピュータ/ネットワーク・インフラ構築上の問題点
(3) 情報システム・ベンダーとのシナジー効果追求(主任ベンダーの育成)

表6:企業情報システム調達の問題点解決へのアプローチ

調達業務項目
(1) 調達戦略の策定
(2) 対象協力企業の選定
(3) 見積照会仕様書(RFQ)の作成
(4) 見積提案評価査定
(5) 契約先企業の選定
(6) 契約条件(技術関係:契約関係)の調整決定
(7) 発注仕様書の作成
(8) 正式契約と注文書(PO)発行
(9) 契約納入管理組織/責任範囲の設定(コントラクト管理)
(10) 契約納入業務進捗管理(プロジェクト進捗管理)
(11) 納入成果物検収
(12) クオージング(保証、保守サービス条件設定)

表7:調達業務項目

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ユーザーの立場からの産業情報化の推進を目的とし、大手ユーザー企業を中心に、約250社の会員を擁し、経営とITに関する様々なテーマや、立場に応じた40以上の委員会、研究会、研究プロジェクトを実施し、毎年、各種調査・研究報告書の刊行や、提言を行っている。1962年、日本データ・プロセシング協会として創立、1992年社団法人日本情報システム・ユーザー協会として、全面的に拡充改組。
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INDEX
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