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Linux/OSSの導入実態と今後の展望

第7回:Linux/OSSの将来展望
著者:矢野経済研究所  入谷 光浩   2005/6/8
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オープンソースDBMSの成長に期待

   今回実施したユーザ調査においてひとつ特長的だったのは、PostgreSQLやMySQLのようなオープンソースDBMSについて調査を行ったことだろう。Linuxの調査はあってもオープンソースDBについての調査はほとんど存在しない。

   そのオープンソースDBは、現状での導入率は10%、今後の導入意向としては30%近くのユーザが関心を示している。DBMSはソフトウェアの中でも大きなコスト負担を占めており、その分オープンソースDBMSへの期待が高いことは間違いない。

   既に導入済みのユーザの品質に対する評価は高く、商用ソフトウェアとも張り合えるレベルまできていることがわかる。ただし、Linuxのようにサポートを表明しているベンダーやSIerは非常に少ない。商用DBMSを開発・販売しているベンダーは収益源が減ることにもなるので、その辺との兼ね合いで非常に難しい面があるようだ。

   とは言うものの、ユーザではオープンソースDBMSを求める声が強まっていることは明らかである。このようなニーズの高まりを受けるようなかたちで、ベンダーやSIerにおいてオープンソースDBMSに対する動きが2004年後半からいくつか出始めている(表1)。

発表日 取り組み内容
2004年11月 SAPジャパン、日本HP、ノベル、住商情報システム、ビーコンITで「SAP/MaxDBコンソーシアム」設立。オープンソースDBであるMaxDBとLinux上でSAP製品を運用するためのノウハウを蓄積する。
2005年2月 NTTデータと富士通が、PostgreSQLコミュニティとの協調のもと、エンタープライズ分野で利用するための共同開発を行うことで合意。オープンソースを利用したより高度な基幹システムの実現を目指していく。
2005年4月 ヒューメントがFirebirdの有料サポートサービスを4月1日より開始。
2005年5月 サイボウズが2005年6月30日から販売を開始する自社グループウェア製品の新バージョン「サイボウズ ガルーン 2」のDBにMySQLを採用。
2005年5月 住商情報システムがオープンソースデータベースMySQLの開発元であるMySQL ABと、最高レベルのパートナー契約となる「MySQL Network Certified Platinum Partner」契約を締結。企業/自治体などのエンタープライズ向けのサポートサービスを提供する。
2005年5月 NECとSRAがPostgreSQLの技術者認定試験「PostgreSQL CE Silver」のSRA認定トレーニングコースを全国規模で展開していくことで協業。

表1:オープンソースDBMSに関するベンダーやSIerの取り組み状況

   SRAや住商情報システムなどのSIerではサポートを強化していく構えである。NECや富士通といった総合ITベンダーでも、SIerと協力しながらオープンソースDBMSに積極的に取り組む姿勢である。また、SAPジャパンやサイボウズといったアプリケーションベンダーにおいても、採用するDBとしてオープンソースを選択肢に加えようとする動きが出始めている。サイボウズでは全面的にMySQLを採用している。

   このようにオープンソースDBMSを取り巻く環境は、追い風になってきていることは間違いないだろう。


Linuxビジネスの成長性

   2003年から2004年にかけてハードウェアベンダーのLinuxサポート体制が整備され、ようやく他のOSと同じ舞台に立つことができたのではないかと思われる。また、2004年は各ベンダーがLinuxに対して積極的にコミットしていたことも、ユーザのLinux導入に対する安心感につながっていくことを期待したい。

   サーバと一緒にOSが出荷されるケースはおよそ7割から8割である。それを考えると、OSのシェアの拡大においてサーバベンダーの対応がより重要になってくる。今後はサーバの第3のOSとしてLinuxが選択肢に挙がるようになると思われる。導入するシステムの用途にもよるが、商談ベースではWindows、UNIXと同じ土俵に上がってくることになるだろう。Linuxサーバの本格的な普及はこれからである。


ディストリビューションビジネスの今後

   Linuxディストリビューションのビジネスは、商用ソフトウェアのように高いライセンス料で利益を生むことはできない。まず可能性があるのはサポートビジネスである。各社サポートには注力しており、サポートサービスに大きな差は見られない。

   このサポートビジネスで売上を上げるにはやはりボリュームである。自社製のOSが普及しないことにはサポートもできない。現状、国内のサーバ用Linux OSは4種類で占められているが、最も市場占有率が高いのはレッドハットである。レッドハットの強みは主要サーバベンダーにOEMを行っていることであり、プレインストールモデルの販売もされている。

   引き合いに出していいかどうかはわからないが、マイクロソフトのWindowsもこの戦略で圧倒的なシェアを占めるまでになった。他のディストリビューションベンダーがレッドハットと互角に戦うためには、まずはサーバベンダーとのパートナー関係を強めていく必要がある。そうすることでLinux市場全体もより活性化し、Windowsにとってもより脅威になる存在となるだろう。

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書籍紹介
「企業情報システムにおけるLinux/オープンソースソフトウェアの導入実態と今後の展望 2005」

本記事は矢野経済研究所より発刊されている「企業情報システムにおけるLinux/オープンソースソフトウェアの導入実態と今後の展望 2005」から抜粋し、加筆、修正を行ったものです。上記調査資料には、さらに詳しいデータや分析結果が記載されています。調査資料のご購入は下記のリンクより行えます。

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矢野経済研究所
著者プロフィール
株式会社矢野経済研究所  入谷 光浩
民間総合調査会社である矢野経済研究所のITリサーチ部門にて、サーバやミドルウェアを中心としたエンタープライズコンピューティングのリサーチを担当。近年はエンタープライズにおけるOSSの市場動向に着目しリサーチを行っている。


INDEX
第7回:Linux/OSSの将来展望
  今後のOSS/Linuxの普及可能性について
オープンソースDBMSの成長に期待
  Linuxの基幹システムへの導入可能性