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Linux/OSSの導入実態と今後の展望

第7回:Linux/OSSの将来展望
著者:矢野経済研究所  入谷 光浩   2005/6/8
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Linuxの基幹システムへの導入可能性

   基幹システムへのLinux導入率は3%とまだまだ少ないものの、導入意向は約40%と非常に高い。導入したい理由としてはTCO削減効果が圧倒的に多く、ユーザの基幹系システムに対するコスト削減意識が非常に高いことがわかる。既に導入しているユーザの評価では、導入コスト、運用コストともに満足度は高く、実際にTCO削減効果の役割を果たしている。また、性能・機能、信頼性・安定性も高い評価を得ており、基幹系システムでも十分に通用している。

   導入したい業務として多いのは販売管理、財務・会計管理。とくに財務・会計管理、いわゆる勘定系ではどの業種からも導入意向が高く、またどの業種でも必ず存在するシステムという点からも、今後の導入ポイントとなってくるだろう。


大きな2つの課題

   基幹システムへの導入に立ちはだかる大きな壁として、管理者・技術者の不足、サポートに対する不安がある。もともとLinuxだけではなくOSS全体でも言われてきたことだが、基幹システム導入となると更にそれが顕著に出ている。

   サポート面については、ハードウェアベンダーやディストリビューションベンダーをはじめ充実されてきているので、徐々にユーザの不安も解消されていく方向になっていくことが予想される。しかし、管理者・技術者の不足はすぐに補えるものではない。UNIX技術者がLinuxのスキルを習得することは難しくはないが、Windows技術者がLinuxをマスターするのは難しいとも言われている。

   ただし、ディストリビューションベンダーがトレーニングコースを設置し、技術者の育成ビジネスに注力しており、Linuxの裾野は徐々に広まりつつある。技術者が十分な人数になるまで、SIerがユーザをサポートしていけるかどうかが重要になってくる。


基幹Linux導入への準備整う

   特に2004年に入ってから日本IBMやNECをはじめとするサーバベンダーが、ハイエンドLinuxサーバを用いた基幹系Linuxソリューションを積極的に推進している。例えば、2005年4月には富士通がインテルと共同開発した基幹Linuxサーバ「PRIMEQUEST」の販売を開始した(表2)。また、そのためのミドルウェアの対応、サポートや技術者の体制を整えている。

   Webサーバなどフロントエンド領域で実績を出してきたLinuxが、本格的にミッションクリティカル領域に進み始めたと言えるだろう。

ベンダー 取組内容
日本IBM 「Linux on Power」というテーマを掲げ、Powerアーキテクチャを採用しているzSeriesやpSeriesなどのハイエンドサーバでのLinuxを推進。また、Linux専用サーバ「eServer OpenPower」の販売も行っている。
NEC 「エンタープライズLinuxソリューション for MC」として、Linuxを使ったミッションクリティカルシステムの構築を推進していく。
富士通 インテルと共同開発した基幹Linuxサーバ「PRIMEQUEST」を軸に、Linuxを採用した基幹システムソリューションを展開していく。
日本HP LinuxをItanium 2ハイエンドサーバ「Superdome」で展開をすることにより、メインフレームやRISCサーバからのマイグレーションを積極的に推進していく。

表2:サーバベンダーの基幹Linux戦略

   データベースや業務アプリケーションも対応が積極的に図られている。主要データベースはほとんどが対応していると言っても良い。ERPなどの業務アプリケーションについても大規模企業向けのソフトは対応が図られているが、Windowsをメインプラットフォームとしてきた中堅・中小企業向けのソフトは対応が図られておらず、今後の予定がないというベンダーが多いのも現状である。

   もともとメインフレームやUNIX系しか選択肢のない大規模企業では徐々にLinuxが浸透していくことが予想されるが、システムの規模的にWindowsかLinuxどちらにも振れる可能性がある中堅企業をターゲットとするベンダーの対応がポイントになってくるだろう。

   最後になるが、サーバ、ソフト、ディストリビューションどのベンダーからも、取材時に最も多く聞かれたのはSIerがキーポイントになっているということである。ユーザとシステム構築で直接やり取りをするSIerがLinux技術者を要し、今後Linuxによるシステム構築を積極的に提案していくかどうかが大きな注目点になっていくだろう。

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書籍紹介
「企業情報システムにおけるLinux/オープンソースソフトウェアの導入実態と今後の展望 2005」

本記事は矢野経済研究所より発刊されている「企業情報システムにおけるLinux/オープンソースソフトウェアの導入実態と今後の展望 2005」から抜粋し、加筆、修正を行ったものです。上記調査資料には、さらに詳しいデータや分析結果が記載されています。調査資料のご購入は下記のリンクより行えます。

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矢野経済研究所
著者プロフィール
株式会社矢野経済研究所  入谷 光浩
民間総合調査会社である矢野経済研究所のITリサーチ部門にて、サーバやミドルウェアを中心としたエンタープライズコンピューティングのリサーチを担当。近年はエンタープライズにおけるOSSの市場動向に着目しリサーチを行っている。


INDEX
第7回:Linux/OSSの将来展望
  今後のOSS/Linuxの普及可能性について
  オープンソースDBMSの成長に期待
Linuxの基幹システムへの導入可能性