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教育現場におけるオープンソース実証実験

第4回:クラスルームPC管理ソフトウェア
著者:三菱総合研究所  比屋根 一雄   2005/9/16
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つくば市での実証実験

   つくば市の5校に、実際にクラスルームPC管理サーバを設置し、約2ヶ月間にわたり運用実験を実施しました。

   各校20台〜40台のLinux PCに対して、夜間に20〜30回の自動イメージ配布を行っています。その結果、性能、機能は十分に実用に耐えることがわかりました。

   特にイメージの配布時間は、実験で最も気にしていた点です。今回使用したLinux PCのディスクイメージは約1.6GBです。これを40台に配布するには、毎晩に64GBの膨大なデータを転送しなければなりません。

   参照PCのイメージ取得時間は約15〜25分でした。また、1台のクライアントPCへのイメージ配布時間は約10〜15分です。問題は40台一斉配布に要する時間でした。

   当初、40台同時に配布していましたが性能が十分に出ませんでした。といっても1台ずつ配布していたのでは、400分(6.5時間)〜600分(10時間)も要してしまいます。一晩では終わりますが、40台で限界になってしまいます。

   そこで数台ずつまとめてイメージを配布することにしました。下図のように同時配布台数を変えて実験した結果、5台でほぼスループットが飽和することがわかりました。この時、40台のイメージ配布は約2時間で完了しました。スループットは76Mbpsですので、100Mbpsのイーサネットとしては、十分な性能といえるでしょう。

同時配布台数と転送速度
図4:同時配布台数と転送速度

   クラスルームPC管理ソフトウェアを導入することで、最も大きな効果は、PC管理負荷の軽減です。最初に述べたように、ある学校では毎月2〜6台の調子が悪くなり、週1回2〜3時間の復旧作業を行っていたのです。年間で考えれば約100時間もかけていることになります。

   2ヶ月間の実証実験の期間中、デスクトップが児童生徒に壊されたりすることは、実際にはあまりありませんでした。しかし毎晩、導入時のデスクトップに復旧するため、児童生徒に注意する必要もなく、管理負荷は大幅に軽減できるという、教員の意見もいただきました。

   今後、クラスルームPC管理ソフトウェアは、さらに機能・操作性などを改良すると共に、他ディストリビューションにも対応していきたいと考えています。

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三菱総合研究所
著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所  比屋根 一雄
情報技術研究部  主席研究員
1988年(株)三菱総合研究所入社。先端情報技術の研究開発および技術動向調査に従事。最近は「OSS技術者の人材評価調査」「日本のOSS開発者調査FLOSS-JP」「学校OSSデスクトップ実証実験」等、OSS政策やOSS技術者育成に関わる事業に携わる。著書に、「これからのIT革命」、「全予測情報革命」、「全予測先端技術」(いずれも共著)などがある。「オープンソースと政府」週刊ITコラム「Take ITEasy」を主宰。


INDEX
第4回:クラスルームPC管理ソフトウェア
  クラスルームPC管理ソフトウェアの概要
  クラスルームPC管理ソフトウェアの動作イメージ
  操作を容易にするシナリオ
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