第9回:VMware ESX Serverの性能〜ベンチマークテスト (1/4)

VMware ESX Server サーバ統合ガイド
VMware ESX Server サーバ統合ガイド

第9回:VMware ESX Serverの性能〜ベンチマークテスト

著者:デル   2006/8/29
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今回の概要

   Dell PowerEdge 2850およびPowerEdge 6850サーバは、仮想化にお勧めできる強力なプラットフォーム。VMWare ESX Serverソフトウェアを搭載することで、多様なアプリケーションやオペレーティングシステムをサポートすることができます。

   最適なPowerEdgeサーバを選択するには、運用する仮想化環境にいくつの仮想マシン(VM)が必要になるのか、容量はどれくらいか、どの程度の高性能・高可用性が求められるのかといった、多くの要因を検討する必要があります。

   強力な仮想化機能をサポートするESX Serverソフトウェアは、1台の物理ハードウェア上で多数のVMを同時実行することができます。ESXは、同一サーバ上の各VMにそれぞれ専用のパーティション(スライス)を割り当てます。ESXは、これらのVMを動的に管理することができるので、処理量が増えてきたVMにはサーバ・リソースの割り当て量を増やすことができますし、後ほどワークロード(負荷)が変われば、減らすこともできます。

   Dell PowerEdge 2850とPowerEdge 6850サーバは、インテルXeonプロセッサ、PCI Express対応のI/Oスロット、ECC DDR-2 SDRAMメモリなど、先進の機能を豊富に備えた強力なプラットフォーム。その優れたスケーラビリティと拡張性は、仮想化に理想的です。仮想化環境で運用するVMの要件がはっきりすれば、おのずと最適なPowerEdgeサーバも決まってきます。

   そこでデルは、Dell PowerEdge 2850およびPowerEdge 6850サーバ上で4種類のワークロードを実行し、様々な負荷に対するESX Serverソフトウェアの処理能力を検証しました。本書では、そのテスト結果を説明すると共に、サーバ選定のガイドラインをご紹介いたします。


VMWare ESX Serverソフトウェア

   VMWare ESX Serverを使うと、様々な種類のアプリケーションを1台のハードウェアで安全に連動させることができます。ESX Serverは、ハードウェアのすぐ上に仮想化レイヤと呼ばれる層を形成し、そこに複数の仮想マシン(VM)コンテナを作成します。

   各VMには、それぞれ個別にオペレーティングシステム(OS)をインストールするので、OS固有のサービスやアプリケーションが実行できます。ESX Serverは、あたかも別の物理システム上で運用するかのように、VM同士を互いに切り離して実行できるため、種類の異なるOSやアプリケーションを1台のサーバで同時に稼動させるといった柔軟な対応が可能になります。

   それぞれのVMは、個別に再起動したり電源を切ったりすることができます。その際、同じ物理サーバ上で稼動している他のVMに影響を与えることはありません。この機能は、アプリケーションのアップグレードや修正プログラムの適用に威力を発揮します。

   あるVM上のアプリケーションをアップグレードした後、このVMを再起動しても、同じ物理システム上で稼動する他のアプリケーションをダウンする必要はありません。このような運用が可能になるのも、各VMが自分専用のオペレーティングシステムとアプリケーションを実行しているからです。

   さらに、VMWare ESX Serverは、VMotionという強力な機能もサポートします。VMotionを使うと、ある物理サーバ上で稼動中のVMをダウンすることなく、他の物理サーバに移動することができます。

   たとえば、ESX Serverソフトウェアを搭載した複数のシステムでサーバファームを形成し、VMotionを活用すれば、VMを稼動させたままサーバ間で自在に移動できるので、負荷分散に応用できます。また、メンテナンス作業中もVMのダウンは不要となるため、エンドユーザにサービス中断という迷惑がかかりません。

   この機能をサポートするには、VMの移動に関わるサーバをすべて同じSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)の共有ストレージに接続する必要があります。これにより、VMotionを使ってVMを移動しても、実際には、移動するVMのRAM内にあるデータをネットワーク経由でコピーするだけですみます。移動元/先の両サーバとも共有ストレージ内にあるVMのディスクには既にアクセスできる状態なので、ディスク内のデータをコピーする必要はありません。

   VMWare ESX Serverを使ったサーバファーム環境では、各物理サーバで多数の異種オペレーティングシステムとアプリケーションを同時実行する運用例が一般的です。したがって、第8世代(G8)のDell PowerEdgeサーバ上でESX Serverの性能とスケーラビリティを評価するには、様々なワークロードをシミュレーションし検証する必要があります。

   ハードウェアの構成とセットアップ今回のテストに使ったデル・サーバは、PowerEdge 2850とPowerEdge 6850です。両方のサーバとも、Microsoft Windows Server 2003やRed Hat Enterprise Linux 4などの一般的なオペレーティングシステムではなく、VMWare ESX Server 2.5.1をインストールしました。

   各サーバには、テスト実施現在(2005年7月)で利用可能な最上位のプロセッサを選択しています。PowerEdge 2850には、インテルXeonプロセッサDP(3.6GHz、2MBの2次キャッシュ)を2基、PowerEdge 6850には、インテルXeonプロセッサMP2005年7月5ページDell EPG(3.66GHz、1MBの2次キャッシュ)を4基搭載しました。さらに、もう1台のPowerEdge6850には、インテルXeonプロセッサMP(3.33GHz、8MBの3次キャッシュ)を4基搭載しています。

   各サーバは、2台のQlogic 2340 HBAを使ってSANに接続しました。2台のHBAを通じてLUNに複数のパスが渡されるため、ESX Serverからフェイルオーバがサポートできます。

   SANストレージには、Dell|EMC CX700を採用しました。今回のテストでは、CX700に73GB(10,000回転)のファイバチャネル・ディスクを48台搭載し、そこに複数のVMを作成しました。LUNは8個作成し、それぞれ、5台(4+1)のディスクでRAID 5を構成しています。このうち4つのLUNは、SQL Server、NetBench、LAMP、ExchangeのVMに使いました。

   さらに、Exchangeをテストするときは、メールストア用のデータ・ドライブが必要になったため、4つのExchange VMそれぞれに、もう1つずつLUNを割り当てています。残り8台のドライブは、2台ずつでRAID 1を4組作り、各Exchange VMのトランザクション・ログ用ボリュームとして使用しました。

コントローラ
Dell|EMC CX700×1
ディスク・エンクロージャ DAE2×4
ディスク 73GB(10
LUN 5ディスクのRAID 5×8
2ディスクのRAID 1×4
ソフトウェア Navisphere Manager
Access Logix

表1:Dell|EMCストレージの構成


VMのテストに使用した4種類のワークロード

   ESX ServerのVM上でアプリケーションを実行するユーザ環境をシミュレーションするため、サーバ全体のCPU利用率が85%に到達するまで、システム上のVM数を増やしていくテストを実施しました。

   「利用率85%」とは、飽和状態の100%には十分余裕があるものの、許容範囲内でサーバがかなり頻繁に利用されている状態です。実際の業務運用でも到達することがありますが、できれば避けたいレベルです。多くの業界標準ベンチマークでこの85%が目安となっているため、今回これを採用しました。

   サーバの仮想化環境をテストするため、4種類のワークロードを用意しました。その4つとは、SQL Server 2000のOLTP(オンライン・トランザクション処理)プログラム、MicrosoftExchange 2003 ServerのLoadSim 7.03、SuSE LinuxのLAMPスタック、Windows2003 ServerのNetBench 7.03です。

   いずれのワークロードも複数のVMにセットアップし、同種の負荷のもとで同時実行しました。そして、ドライバシステム(注1)とVM上の設定をすべて同等に保ったまま、VM数を増やしていき、1台のサーバでいくつのVMが同時実行できるか調べました。

注1: 本書の「ドライバ」システムとは、テストを「駆動」するマシンを指します。

   表2は、全4種のテストで使われたVMの構成内容を示しています。

ワークロード
RAM
ディスク
NIC
仮想CPU数
SQL Server 2000 512MB 10GB Vmxnet 1
SuSE LAMP 1,024MB 10GB Vlance 1
NetBench 512MB 10GB Vmxnet 1
Exchange 2003 512MB 10GB
130GB - データ
10GB - ログ
Vmxnet 1

表2:テストに使用した仮想マシンの構成

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デル株式会社
著者プロフィール
著者:デル株式会社
デルはスケーラブル・エンタープライズ戦略の重要な要素の1つとして、VMware社の仮想化技術を用いたサーバ統合ソリューションを提供しています。業界標準技術を採用した、デルのPowerEdgeサーバとDell | EMCストレージから構成されるハードウェアプラットフォームと、仮想化ソフトウェア「VMware ESX Server」、仮想マシン管理ツール「VirtualCenter」、仮想マシンの無停止マイグレーション技術「VMotion」を組み合わせることにより、柔軟でコストパフォーマンスに優れるサーバインフラストラクチャが構築可能です。

http://www.dell.com/jp/


INDEX
第9回:VMware ESX Serverの性能〜ベンチマークテスト
今回の概要
  Microsoft SQL Server 2000
  PowerEdge 2850サーバ上のESX:ハードウェアの概要
  PowerEdge 6850サーバ上のESX:ハードウェアの概要
VMware ESX Server サーバ統合ガイド
第1回 VMware関連基礎用語
第2回 仮想化環境の設計と物理サーバから仮想マシンへの移行方法
第3回 サーバの構成
第4回 インストール時の注意点とチューニングポイント
第5回 SANブート
第6回 ブレード・サーバへの導入
第7回 Dell PowerEdge 1855ブレードサーバのVMware VMotion性能
第8回 ブレードサーバで構築するVMware ESX ServerのVLANネットワーク
第9回 VMware ESX Serverの性能〜ベンチマークテスト
第10回 ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(前編)
第11回 ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(後編)
第12回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(導入編)
第13回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(仮想化CPU機能編)
第14回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(リソース管理編)
第15回 デュアルコア・サーバによるVMware ESX Serverの性能向上

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