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Know HowからKnow Whoへ 〜社内SNS構築指南
第2回:社内SNSと一般的なSNSの決定的な違い
著者:
TIS 倉貫 義人
2007/4/10
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社内SNSの特徴と制約
「
第1回:SNSによる社内情報共有の可能性
」では、なぜ社内の情報共有に社内SNSを利用したのかについて、筆者の所属するTISの社内SNS導入事例を基に解説しました。第2回の今回は、社内SNSと一般向けのSNSとの機能の違いを比較していきます。
社内SNSには、以下のような特徴があります。
社員だけが利用できる
他の社内システムとの共存が可能
ナレッジを共有できる
表1:社内SNSの特徴
それぞれの特徴を一般的なSNSと比較して見ていきましょう。
社員だけが利用できる
ミクシィのようなインターネットで展開するSNSは、招待制度という形で会員を増やしており、招待さえ受ければ、基本的に誰でも利用することができます。
それに対して、社内SNSの利用者は社員だけに限定されています。TISの社内SNSでは、利用の際に自己登録制を採用しています。これは社員管理システムと連動しており、社員だけしか登録できない仕組みになっています。
社内SNSでは、ミクシィでいうマイミクのような友人機能は用意していません。これは元々の発想が、
「部門や事業部を超えたコミュニケーションの実現」
であり、友人機能によって一部の閉じられた世界を作りたくなかったためです。友人機能によって、社員同士の間に壁が生まれては意味がありません。
また社内だけで利用するのに、「ある社員だけ友人が少ない」や「上司からの友人申請は断れない」などの状況が発生するのを避ける意味もあります。つまり全員がマイミクの状態からはじまると考えてよいでしょう。
さらに、前回述べたように社内SNSではKnow How(ノウハウ)よりもKnow Who(ノウフウ)を重視します。そのため社内にどういった有識者がいるのかを共有できるようにするために、プロフィールの登録は本名を必須にしています。システム上、社員の名前は既存の社員管理システムから自動的に取得するような仕組みを実現しました。また、写真やムービーを投稿できる機能の代わりに、ファイル共有機能を実装しています。
他の社内システムとの共存が可能
社内SNSを導入する際には、通常すでに稼働している社内システムとの共存が求められます。
最近の企業であれば、メールサーバやグループウェアを利用している企業も多いでしょう。そういった既存のシステムと競合する機能は、なるべく作り込まないようにしています。
インターネット上でSNS事業を展開している場合、自社の機能を拡充して利便性を向上させることはユーザの増加につながるため、機能の住み分けについてはさほど気にする必要はないでしょう。利用したいサービスはユーザ自身が組み合わせを考えればよいからです。
しかし社内システムの場合は、そうはいきません。利用する社員にとってサービスの選択肢はなく、与えられたシステムを使わざるを得ないからです。そのため社内にあるシステムで機能の住み分けをきちんと考えたうえでサービスを提供する必要があります。
図1:社内システムとインターネットの違い
具体的な例としてTISの社内SNSでは、簡易メールのようなメッセージ機能は実装していません。これは、すでにあるメールシステムの機能と競合するためです。
確かに機能としてあれば便利に使えるでしょう。しかし社内に似たような機能がいくつも存在すると、利用するユーザに混乱が発生すると判断したため、実装しなかったのです。同様に、グループウェアで実現できているスケジューラなども組み込んでいません。
またTISの社内SNSでは、社員の利便性を考えて、LDAPを活用してユーザ登録とログイン時に、他の社内システムとのシングルサインオンを実現しています。
ナレッジを共有できる
社内SNSの大きな目的の1つに社内の情報共有があります。よってコミュニケーションの活性化を目指した機能だけでなく、そのコミュニケーションの結果からナレッジを取り出せるようにする仕組みが重要になってきます。
そのために必須となる機能が、「全文検索」です。
定期的に多数のブログや掲示板から情報を取り出してレポート形式にまとめていくのは、コストがかかりすぎるため現実的な方法ではありません。そこで、情報は整理されないまま蓄積しておき、利用したい時に上手に取り出すことで利用すればよいと考えました。
この「情報が整理されていない状態」というのはインターネットの世界と似ています。インターネットで情報を取り出すといえば、読者の皆さんの多くは検索エンジンを利用するでしょう。そこで、社内システムにも検索エンジンを導入することで、情報の取得ができるようにしようと考えました。
TISの社内SNSでは、全文検索エンジンとしてGoogleが販売している「Google Mini」というアプライアンス製品を採用しています。その結果、ブログだけでなく、アップロードされたWordやPDFのドキュメント、さらに他の社内システムからもフラットに情報を取り出すことができるようになり、情報を有効的に活用できています。
注意点として、全社員が社内のすべての情報に検索してアクセスできてしまうと、コンプライアンス上の問題が発生してしまいます。社内SNSでは公開範囲に応じた表示ができるような仕組みを導入するのが望ましいでしょう。
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著者プロフィール
TIS株式会社 倉貫 義人
基盤技術センター所属。社内の技術支援をするかたわら、社内SNS構築のプロジェクトマネージャ兼メインプログラマとして従事している。一方で、eXtreme Programmingというアジャイル開発の研究・実践を行い、XP日本ユーザグループの代表もつとめている。
情報共有ソーシャルウェア/社内SNS「SKIP」
http://www.skipaas.jp/
XP日本ユーザグループ
http://www.xpjug.org/
INDEX
第2回:社内SNSと一般的なSNSの決定的な違い
社内SNSの特徴と制約
機能別にみた特徴
Q&A機能でノウハウの共有
アンテナで必要な情報はもらさずキャッチ