TOPシステムトレンド> UNIXサーバーにおけるIBM Systems Agenda
ITインフラの新しい展望
ITインフラの新しい展望

第4回:IBM System p5の仮想化機能とオープンへの取り組み
著者:日本アイ・ビー・エム  藤井 克美   2005/11/21
1   2  3  4  次のページ
UNIXサーバーにおけるIBM Systems Agenda

   これまでの連載でも触れていますが、IBM Systems Agendaは今後のITインフラに対するIBMの取り組み方の方向性を示すもので、「仮想化機能の強化(Virtualize Everything)」「オープンへの取り組み(Commit to Openness)」「協業・連携(Collaborate to Innovate)」の3つを柱としています。

   IBMは、UNIXマシンの利用形態について次の3つの世代があると考えています。

ワークステーション世代(1980年代)
グラフィック・アプリケーションのための高速グラフィック端末が主な用途であった世代。
サーバー世代(1990年代)
個別のアプリケーション・サーバーとしての利用に焦点を当てた世代。データベース・サーバーのパフォーマンスやRAS(信頼性、可用性、保守性)が注目された。
システム世代(2000年代)
より少数のサーバー・マシンによる柔軟で効果的なワークロードの最適化、セキュアで回復力の高いシステム・インフラ、ITシステムの簡素化・最適化・自動化が必要になると考えられる世代。

表1:UNIXマシンの3つの世代

   IBM Systems Agendaは、表1のシステム世代のUNIXサーバーのあり方を示すものです。

   IBM System p5はIBM System z9に続く、IBM Systems Agendaに基づいた製品の第2弾となります。今回はIBM UNIXサーバーがIBM Systems Agendaの柱である「Virtualize Everything」「Commit to Openness」「Collaborate to Innovate」に対して、どのように取り組んでいるかを説明していきます。


IBM System p5における仮想化機能

   IBMのUNIXサーバーに搭載された最初の仮想化機能は、2001年10月に発表したIBM eServer pSeries モデル 690の論理分割(Logical Partitioning:LPAR)です。この後、2002年10月にはAIX 5L V5.2により動的LPAR(Dynamic LPAR:DLPAR)がサポートされ、LPAR間でのCPUやメモリー、I/Oスロットのシステム資源を動的に移動できるようになりました。

   この時点での分割単位は、CPUでは1CPUごと、メモリーでは256MBごと、周辺機器はI/Oスロットごとでしたが、IBM eServer pSeries モデル690に搭載されたPOWER4チップは、1つのチップに2つのCPUコアを持つデュアル・コア・チップでありながら、同じチップ内のCPUコアを異なるLPARに割り当てることができ、一般にいわれる物理分割から比較すると「論理分割」と呼ぶに十分な機能を備えていたといえます。

   2004年7月には、POWER4チップを発展させたPOWER5チップを搭載したIBM eServer p5が発表されました。このIBM eServer p5では、CPU能力を1/10単位でLPARに割り当てるマイクロ・パーティションがサポートされ、より粒度の細かい分割ができるようになりました。また、I/O関連でも仮想イーサネットが提供され、同じIBM eServer p5の筐体内のLPARであれば物理的なネットワークを介すことなくお互いに通信することが可能となります。

IBM eServer p5のVirtualization アーキテクチャー
図1:IBM eServer p5のVirtualization アーキテクチャー
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   Virtual I/O Server(VIOS)は、ネットワーク・アダプターとディスクの仮想化機能を提供し、各LPARに物理的なアダプターを割り当てることなくネットワークやディスクへのアクセスを可能とします。VIOSが提供する仮想アダプターにより、IBM eServer p5のLPARは、搭載できる物理的なアダプター数を気にすることなく必要な数のサーバーをLPARとして稼働させることができるようになりました。

   これらの仮想化機能により、POWER5のスケーラビリティーは多数のCPUによるスケール・アップだけではなく、ハイ・キャパシティーなサーバーを多数のLPARに分割することでブレード・サーバーなどと同様のスケール・アウトにも対応します。このスケール・アップとスケール・アウトの両面を併せ持つスケーラビリティーは、スケール・ウィズイン(scale within)というニュータイプのスケーラビリティーとしてIBM eServer p5/System p5を特徴づけるものです。

1   2  3  4  次のページ

「System p5」「System z9」「iS/OS」「AIX」「eServer」は、米国または米国内外におけるIBM Corporationの商標または登録商標です。

「Red Hat」「SUSE」「Linux」「Windows」その他の社名・製品名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
日本アイ・ビー・エム株式会社 藤井 克美
著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社  藤井 克美
日本アイ・ビー・エム株式会社アドバンスド・テクニカル・サポート ACP ITスペシャリスト
1985年入社。NTT担当のシステムズ・エンジニアとしてメインフレーム系ネットワーク(VTAM/NCP)を担当。1991年より幕張システム・センター(現IBMシステムズ・エンジニアリング(株))にてAIXに関する技術サポートを担当。現在はアドバンスト・テクニカル・サポートにて、pSeries及びLinux on POWERの技術サポート全般を担当。


INDEX
第4回:IBM System p5の仮想化機能とオープンへの取り組み
UNIXサーバーにおけるIBM Systems Agenda
  マイクロ・パーティションの利点
  システム世代におけるUNIXサーバー基盤
  柔軟性