BCPにおけるCDPの要請
従来のバックアップとの違い(2)
CDPと従来のバックアップとの違いについて、次に注目するのが、リカバリ視点での取り組み方の違いです。テープを使ったバックアップ・ソフトの例と比べてみましょう。
テープ・バックアップでは、フル・バックアップ後のデータの取り方によって、リカバリの方法が異なります。
毎日フル・バックアップを取る場合、一番最後に取ったテープだけを使ってリストアすれば、バックアップ時点の状態に戻ります。ただし、毎日のバックアップ時間は長くなり、かつ必要なテープ数の確保が必要になります。
フル・バックアップを日曜にとり、その後日々の“増分”だけをバックアップする場合、日々のバックアップ時間は短くなります。ただし、リストアする際は、古いテープから順にリストアしていく必要があります。土曜にディスクが壊れ、金曜の状態に戻す場合、フル・バックアップしたテープから順に月から金までのテープを順にリストアしていきます(図2-1、リストアデータの上段の組み合わせ)。
フル・バックアップを取った後の“差分”をバックアップする運用もできますが、この場合、バックアップした前日までの増分の蓄積分を日々バックアップすることになります。土曜にディスクが壊れても、日曜のフル・バックアップのテープと金曜の差分バックアップ・テープで回復ができます(図2-1、リストアデータの下段の組み合わせ)。
このように、差分バックアップは増分バックアップと比較して復旧時間を短縮できます。さらに、途中のテープが壊れても、フル・バックアップ時のテープと最新のテープさえ壊れていなければ回復が可能です。しかし、バックアップ時間やリストア時間がかかるという課題がなくなるわけではありません。
一方で、CDPでは、常に最新の状態を保ちながら、同時に時間経過を管理します。単純にミラーを取っているだけではなく、過去に変更があった時点のすべての内容と履歴情報をディスクに記録しているので、この情報をもとにすれば、指定した過去の時点にディスクの内容を戻すことができます。
さらにCDPでは、保護対象のディスクからCDPサーバーのディスク(ミラー・ディスク)までのネットワーク通信経路上で、無駄なデータの転送を防いでバックアップ効率を高める機能も備えています(図2-2)。
CDPでは、ディスクのドライバ・レベルでブロックの変更をトラッキングする仕組みを取り入れています。これにより、ディスクへの書き込みに対し、変更ブロックを検知して即時にミラー・ディスクへ差分を転送できます。この技術は、後で説明する遠隔地レプリケーションの際、回線負荷を低減するのに役立ちます。
BCPからの要件
簡単ですが、CDPと従来からあるバックアップ・ソフトとの違いを説明しました。以下では、本連載のテーマであるBCPの観点、つまりITを止めない/止まってもすぐに回復させる、という観点に立って、あらためてCDPを整理します。
まず、第1回でBCPにおけるITを俯瞰(ふかん)しました。ITに関わる危機管理の具体策として、データ/システムのリカバリ方法を確立させることの重要性を説きました。これらを振り返りながら、ITに求めるBCPを、以下の4つのポイントに整理し、それぞれについて具体的な方策のアウトラインを定めしょう。
(1)あらゆる障害/災害からストレージ内容を保護する
(2)常に最新の状態を確保することで短時間のリカバリを実現する
(3)短時間で業務回復/再開を実現する
(4)コストを低く抑える
次ページでは、CDPをこれらの視点で、あらためて解説します。