BCPにおけるCDPの要請
CDPとは
本連載の第2回では、CDP(Continuous Data Protection、継続的データ保護)について解説します。CDPとは、ディスクに書き込まれたデータの更新を常にモニターし、変更の内容を保管し、その変更内容を用いることで、ディスクの内容を過去のいかなる時点にも復旧できることを狙いとした技術です。
この技術を実現したプロダクトの例として、ここでは米FalconStor Software(日本法人はファルコンストア・ジャパン)の「FalconStor CDP」を紹介します。従来のデータ・バックアップ技術との違いやBCPにおける必要性を示し、実際のユーザー事例から見えてきたBCPへの適用のポイントを探ります。
FalconStor CDPを提供している米FalconStor Softwareについて簡単に紹介しておきます。同社は、ストレージ/ネットワーキング分野で豊富な経験と技術力を持つメンバーによって2000年に設立され、データ保護、ディザスタ・リカバリ、事業継続性を支援しているソフトウエア企業です。
創設者のReiJane Huaiは、自分自身が社長兼CEO(最高経営責任者)を務めた米Cheyenne Software(米CAが1996年に買収)において、現在でも多くの企業ユーザーが利用するバックアップ・ソフト「ARCserve」のチーフ・アーキテクトでした。データ・バックアップ/リストアに関わる専門家であり、現在も特許技術を生み出しながらストレージ管理に関わるソフトウエア・プロダクトを開発しています。
FalconStor CDPは、高速リカバリを指向した継続的なデータ保護を行うソフトウエア・プロダクトです。データを保護するという観点ではバックアップと同じ立場に置かれる技術ですが、このプロダクトが本領を発揮するのは、リカバリ、つまりデータやシステムを復旧する時です。また、このプロダクツによって、従来のバックアップ運用が抱えている各種の課題も解決/軽減できます。
従来のバックアップとの違い(1)
まず、CDPが従来のバックアップ手法と異なる点について解説します。理解しやすくするため、従来のバックアップ・アーキテクチャーを「データを磁気テープに記録する手法」とし、これとの対比でCDP(以降、特別な断りをしない限りはFalconStor CDPを指します)の特徴を解説します。
CDPが従来と異なるポイントは、大きく2つあります。1つは、日々のバックアップ運用面での違いです。もう1つは、リカバリ時の違いです。
まず運用の観点で言えば、CDPにはバックアップ・ウインドウがありません。従来のバックアップ運用では、業務システムの稼働が終了するのを待ち、夜間にバックアップを始め、あくる日業務が始まる前に終了させていました。このバックアップが始まり終了するまでの時間枠をバックアップ・ウインドウと呼びます。データが増加すると、時間内にバックアップが終わらなくなる事態が発生します。
CDPの場合、自動的に、常時ミラー・ディスクを作ります。業務中も、ディスクの変更個所をモニターしており、変更個所と変更内容を記録します。従来のようにバックアップの運用をバッチ処理で行わないので、バックアップが終わらないという事態が発生しません。
単純にミラー(複製)を作るのであればデータを過去に戻すことはできませんが、CDPではスナップショットを作成しながら変更個所の履歴管理を行います。これにより、常にバックアップをしながら、なおかつ過去のある時点のデータにも瞬時に戻ることができます(図1-1)。
BCPの観点で見ると、第1回で取り上げたリカバリ要件のうち、RPO(復旧時点目標)について、かなり柔軟に設定目標を持つことができます。従来のバックアップ運用であればバックアップ・ジョブのインターバルがRPOを左右します。一方、CDPであれば分単位で履歴管理ができます。復旧時点の選択に自由度が増します(図1-2)。
次ページからは、CDPが従来のバックアップと異なるポイントについて、引き続き詳しく解説していきます。