弱点2:リスクの分析
第1回では、システムの5つの弱点として、「資産の特定」「リスクの分析」「リスクの評価・管理策の適用」「管理策の有効性の評価」「リスクの変化への対応」ができていない、ということを説明しました。そして、システム内の「資産の特定」と「リスクの分析」についての注意点を紹介しました。
今回は、実際にリスクを分析するために、システムの脅威と脆弱(ぜいじゃく)性を明らかにする手法を紹介します。
なお、本連載の用語の定義を図1-1に示します。つまり「脅威」は「脆弱性」を利用して「資産」に対して損害を与えます。この損害が起こる可能性が、情報セキュリティーの「リスク」です。
例えば、金庫に入った現金は、もろい鍵や、外れる扉、という脆弱性があったとしても、それを盗もうとする泥棒(脅威)がいなければ、なくなることはありません。同様に、泥棒が金庫から現金をとろうとしても、つけいるすき=脆弱性がなければ、現金を盗むことはできません。このように、資産に対して、脅威と脆弱性がセットになることで、被害が発生します。そしてこの起こるかもしれない被害がリスクとなるわけです。
リスクの分析はベストエフォートで
リスクがある、という表現はよく使われますが、リスクの分析ほど人を困惑させるプロセスはない、と筆者は考えます。
すべての事象にはあらゆるリスクがありますし、リスクに対応すると新たなリスクが生まれるなど、リスクが連鎖していくこともあります。このようなリスクの「無限性」にとらわれ、混乱した担当者の方から、恨み言を聞くこともありますが、筆者はリスク分析に対しては、ある程度の割り切りが必要だと感じています。
その割り切りポイントは3つです。
・リスクは不変ではない(時間経過と共に変化する)
・リスクは人による(判断する人によって変化する)
・リスクを信じることもリスク(絶対真理ではない)
それぞれの割り切り方については、図1-2にまとめました。
ビジネスを継続したまま、すべてのリスクを明確にして、適切な施策を必要なだけ適宜実施し、リスクを完全に防ぐのは、どんな専門家であっても不可能です。もっともビジネス自体を停止させれば、セキュリティーリスクはなくなるかもしれませんが、それは大前提を無視した話です。
つまりリスク分析は、完ぺきを求めるための作業ではなく、意思決定をするためのより良い状態(ベストエフォート)を求めるための作業だという意識が重要です。
続いて、割り切った脅威の特定の方法から説明していきましょう。
著者について
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 佐藤 元彦
ITサービスコンサルティング部。特定非営利活動法人 日本セキュリティ監査協会(JASA)幹事。ISSA Tokyo Chapter Recording Secretary。公認情報セキュリティ監査人、公認システム監査人、システム監査技術者、情報セキュリティアドミニストレータ。2003年から、情報セキュリティサービスを、公共・民間問わず、さまざまな形式で実施。2006年より現職。現在は、情報セキュリティ監査をメインに、ITリスクに対応するマネジメント・テクニカルサービスを提供している。所属学会(国内):情報ネットワーク法学会、情報処理学会、日本セキュリティ・マネジメント学会(JSSM)。 http://www.ctc-g.co.jp/



