サーバー統合でシステム資源の効率を高める

2010年7月1日(木)
上野 仁

サーバー・スプローリングの解決 - 次の一歩はリソース利用率の向上

サーバーの性能は、年々向上していきます。いわゆる「ムーアの法則」では、半導体の集積度(半導体チップに集積されるトランジスタの数)は約2年ごとに倍増すると予想しています。サーバーに搭載されているCPU性能の観点からも、同程度の性能向上を期待できます。

4年前に導入したサーバーで稼働している業務処理システムを、最新のブレード・サーバー1台に搭載し直す場合を例に考えます。この場合、性能が4倍に増加したのに、業務量が増加していないので、サーバー性能の4分の1しか有効に利用できないことになります。業務量が2倍に伸びたとしても、まだ2分の1しか利用できません。

これでは、最新のブレード・サーバーへの投資は、あまり効率的とは言えません。だいたい、高度成長期ならまだしも、いまどき4年間で業務処理量が2倍になるというような景気の良い会社は、そんなにあるはずがありませんよね。

新規開発の場合も同様です。ある業務処理システムを開発しようと考えたとき、業務量に見合う性能を考えてサーバーを選ぶと、たいていのシステムは小型のサーバーで良いということになります。しかし、小型のサーバーを複数台用意すると、サーバー・スプローリングの問題が発生してしまいます。新規開発の場合は開発用のサーバーも多数準備しなければならないので、余計にスプロール化が進む傾向にあります。

サーバー・スプローリングの解決とリソース利用率の向上策として、まず考えられる対策は、1台のサーバー・ブレードの1つのOSの上に、業務処理ソフトウエアを複数個搭載する、つまり、従来複数の業務処理サーバーで動作していたプログラムを1つのサーバー・ブレードで走らせる、ということです。

しかし、この方法は、必ずしもうまくいくとは限りません。1台のサーバーの1つのOSの上で役割の異なる複数の業務処理システムを稼働させると、1つの業務処理プログラムの動作不良や急激な負荷の増加に影響されて、同居している別の業務処理プログラムのレスポンスが悪くなったり、実行不可能になったりすることがあるからです。また、それぞれの業務処理システムのプログラムが必要としているOS環境が異なり、同居できないというケースも多く存在します。

こうした問題を回避して1台のサーバー・ブレード上に複数の業務処理システムを搭載することができるとうれしいですね。これを現実に可能にしてくれるのが、サーバー仮想化技術です。

サーバー・スプローリングでは消費電力も問題に

サーバー・スプローリングが進んだ際に起こる、もう1つの問題が、コンピュータ室におけるサーバー消費電力の増大です。

電力会社と契約している電力量を気にする必要はありますが、極端なことを言えば、電力は必要なだけサーバーに使わせれば良いと思えます。しかし、サーバーは、使った電力の分だけ熱を発生するので、冷やしてやる必要があります。これは、建物に設置されている空調機の能力に依存してしまうのです。

つまり、サーバーの消費電力があまりにも増加すると、建物の空調機の能力が追いつかなくなり、常夏のコンピュータ室が出来上がってしまいます。これでは、サーバーやほかの機器の寿命も縮み、いいことは何もありません。「サウナ代わりになるかも」、なんて言っている人は・・・いませんか?

小型のサーバーが増加すると、各サーバーのCPU使用率が低く、システム全体の業務処理量に比べて消費電力が大きいという「効率が悪い」業務処理システムになってしまいます。

消費電力の面でも、1台のサーバーで複数のOSと業務処理システムを稼働させるサーバー仮想化技術が有効です。図2の例では、サーバー台数の削減に伴い、消費電力も半分に減っています。

図2: ブレードと仮想化を用いたサーバー統合によって、消費電力を削減できる(実際の効果は、利用環境によって大きく異なる。本図は、記載条件における1つの例)
日立製作所 エンタープライズサーバ事業部

(株)日立製作所エンタープライズサーバ事業部に所属。入社以来メインフレーム用OS、ファームウエアなどの研究開発を担当。現在はメインフレーム開発で培った仮想化技術をIAサーバに適用するとともに、利用システム拡大のために奮闘中。下手の横好きのゴルフにも頑張っている。
 

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