Facebookのデータセンターやビジネス活用の進むOSSなどを紹介 - オープンソースカンファレンス2013 Hokkaido -
2004年からはじまり、通算100回目の開催が目前となるオープンソースカンファレンス2013 Hokkaido(以降、OSC北海道)が、9月14日(土)に札幌コンベンションセンターで行われました。
Facebookのオープンソース仕様のデータセンターや、企業でどういったOSSが使われているかなど、いくつかのセミナー内容とともに、出展ブースの写真を紹介していきます。
セッション紹介
Open Compute Project 〜オープンソース化した Facebook のサーバーとデータセンター
データセンターなどのエネルギー効率を示す指標として使われているPUE(Power Usage Effectiveness)はデータセンター全体の消費電力量をサーバーなどのIT機器で使用している電力量で割った値です。
Cobalt Users Group/Project BlueQuartzの伊藤 正宏氏によるOpen Compute Projectのセッションは、このPUEの話からはじまり、米国にあるFacebookのデータセンターを伊藤氏が実際に訪問した様子が写真とともに紹介されました。
ちなみに、PUEを式で表すと以下のようになります。
PUE= (1)データセンター全体の消費電力 / (2)データセンター内のIT機器の消費電力
最も効率が良ければ、数値は1.0になりますが、実際にはデータセンター全体の空調設備や照明設備などに電力が必要なため、2.0〜3.0が現実的な数字です。3.0以上だと電力効率が悪く、2.0より小さければ効率が良い、というのが大体の目安になりますが、この数字も徐々に改善されています。
このように、PUEを下げることはデータセンターにとって電力使用量のメリットを示す基準になるのですが、ここにちょっとしたトリックがあります。
データセンターの電力を節約して全体の電力量(1)を下げれば、それだけPUEの値が下がるわけですが、多くのデータセンターに使われているサーバー機器には内部に多くのファンが取り付けられており、このファンによって内部機器の冷却が行われています。
すると、このファンが使用する電力量は、式に書いた(1)ではなく(2)として計上されるため、一見PUEは下がったように見えます。しかし、実際にはサーバー内のファンに冷却の一部を肩代わりしてもらっているため、下がったPUEほど効率的に電力を処理できていないことになります。他にも、サーバーの電力供給装置(PSU)は(2)として計上されるため、伊藤氏は装置単位で切り分けるのではなく、機能単位で(1)と(2)を切り分けるべきだと述べました。
サーバー内部を冷却するためには機器の内部まで空調効果が発揮できるよう工夫が必要ですが、伊藤氏が訪問したFacebookのデータセンターで使われているOpen Compute仕様のサーバーには、ほとんどファンは使われていません。つまり、PUEと合わせてデータセンターの総電力が節約されていることになります。
とはいっても、こういった理想的なデータセンターの建設には、立地という大きな要素も影響するため、どこでも出来るわけではなく、Facebookのデータセンターでも、温度や湿度が最適な場所が選ばれました。以前Think ITでも紹介した、さくらインターネットの石狩データセンターも、こうした条件等を考慮した上で現在の場所に建てられています。
セッションでは、ファンのないスカスカなサーバーの写真や、CADデータでラックの仕様が公開されていること、用途に合わせた5種類のサーバー構成など、興味深い話が続きました。
米国スタンフォード大学の顧問教授であるJonathan Koomey氏のレポート『GROWTH IN DATA CENTER ELECTRICITY USE 2005 TO 2010』によると、全世界のデータセンターで使用されている電力使用量は、全世界で使われている総電力の1〜2%と非常に大きな割合を占めるため、伊藤氏はデータセンターが電力使用量の削減で果たす影響は大きいと述べました。
オープンソース「超」入門
オープンソースビジネス推進協議会(OBCI)の会員で、株式会社 日立ソリューションズに所属する岡本 雅幸氏より、ビジネス活用という視点でOSSが持たれているイメージや、現場で実際にどんなOSSが使われているのか、どのジャンルが増加傾向にあるのか、といった内容が紹介されました。
はじめに、品質が低い、導入コストが高い、使えるエンジニアがいないのでは?といった、一部の企業がOSSに対して持っているイメージに対し、実際にはそれらが誤解であることが説明されました。OSS製品にも商用製品より品質の高いソフトがあり、有償サポートを活用すればリスクを回避しつつコストを下げられる、商用製品を扱うエンジニアはオープンソースも簡単に扱えるといった内容です。
続けて、ビジネスの現場でどんなOSSが導入されているのか、2012年度にThe Linux Foundationが実施したアンケート結果が紹介されました。アンケートを行った企業は、NTTデータ、NECソフト、日本ヒューレット・パッカードなど、OSSと馴染みの深い大手企業8社が対象です。
それによると、上記の内、3社以上が導入実績のあるツールは114、さらに、5社以上が導入実績のある定番化したOSSは41ツールに上るとのこと。このことからも、ビジネスの現場で多くのOSSが活用されていることが分かります。
また傾向としては、仮想化・クラウド関連ジャンルの普及が顕著であること、データベース関連ではinfiniDBやMongoDBなどの導入事例が出てきてOSSデータベースの活用オプションが拡大していることが合わせて紹介されました。Hadoopなどビッグデータ関連のOSSも増加が認められるようです。
続けて、細かく分類された表を使って、それらのOSSがどんなジャンルに当てはまるのか、また、使われることの多い代表的なOSSが紹介されました。
知らなきゃ損!今話題の自動構築フレームワークChef!
Chefとは、システムの自動構築を行うOSSのフレームワークです。株式会社 日立ソリューションズの喜納 健氏より、このChefの概要や導入効果、具体的な使い方について紹介されました。
近年、オープンスタックなど大量のマシンを使った大規模なクラウド基盤が注目を集めていますが、喜納氏はこういったクラウドの構築を行う際に想定される作業として、同じような設定を沢山のマシンに行う単調な作業の繰り返しや、パッケージをインストールする際の待ち時間などが発生することを挙げました。
こういった単純作業は、作業者にモチベーションの低下につながり、同時に設定ミスをもたらします。大量のマシンの内、1台でもミスが発生すると、大規模環境は動かなくなってしまう上、どこで問題が発生しているのかといった障害の切り分けが必要になり、作業にも膨大な工数が必要になってしまうことが問題です。
こういった問題を回避するためにも作業の自動化が必要なことから、喜納氏は最近開発が活発なツールとしてた。SNSやソーシャルゲームといったサービスを提供するユーザー企業が多く、またそれらの企業にSaaS環境を提供するクラウドベンダーにも多く使われてるChefを紹介しました。最近ではFacebookが採用していることも知られています。
Chefの重要なコンセプトは「システムをコードで管理する」ことで、これまでのような構築手順書やパラメータ設定書で行ってきた作業をコードに落とし込むことでシステムの管理を実現します。コードの重複を防ぎ、シンプルなシステム構築を行うことで、環境構築、設定変更の自動化を可能にし、構築コストの削減、オペレーションの可視化によるセキュリティ・コンプライアンスにも対応することが導入効果として考えられます。
セッションでは、“レシピ”と呼ばれるファイルを使ってシステムの状態を管理する手順やWebサーバーの構築例、実際のレシピ記載例などが紹介されました。
この他、OSC北海道のページでも閲覧可能な資料が紹介されています。
→ https://www.ospn.jp/osc2013-do/
OSC2013北海道 出展ブース紹介
出展ブースを写真で紹介していきます(写真をクリックすると拡大表示します)。全てのブースは紹介しきれませんでしたが、会場の雰囲気を体験してください。
日本MySQLユーザ会(MyNA)/USP研究所
株式会社パソナテック 札幌支店/OpenStreetMap Japan
株式会社サムシングプレシャス/株式会社インフィニットループ
オープンソースビジネス推進協議会(OBCI)/株式会社日立製作所
特定非営利活動法人コモンズネット/サイトブリッジ株式会社
baserCMSユーザー会/Bashoジャパン株式会社 / 東京エレクトロン デバイス株式会社
OpenStreetMap Japan/小江戸らぐ
日本NetBSDユーザーグループ/WordBench 札幌
サッポロ・オープン・ラボ/株式会社ハートビーツ
日本マイクロソフト株式会社/さくらインターネット株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社/株式会社オージス総研
一般社団法人日本Rubyの会/Ruby札幌/EC-CUBEユーザグループ
株式会社イージフ/日本Jenkinsユーザ会
日本openSUSEユーザー会/株式会社インターネットイニシアティブ
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社/日本CloudStackユーザー会
特定非営利活動法人エルピーアイジャパン/OSGeo財団日本支部
Sapporo.cpp/特定非営利活動法人OpenOffice.org日本ユーザー会
終了後は観光用のバスに分乗して懇親会場に移動、参加人数が非常に多いため、こうした会場選びも大変だと思いますが、参加者による、思い思いの交流やLT、ジャンケンによるグッズ争奪戦などが繰り広げられました。
次回は、10月6日(日)にOSC広島、10月19日、20日にOSC東京が開催されます。
【関連リンク】
(リンク先最終アクセス:2013.09)
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