VMwareによるOpenStackの取り組みはVで始まるハイブリッド型
VMwareのOpenStackはVOVAとVIO
OpenStackを最初に検討し始めた時よく聞く不満としてチュートリアルに相当するドキュメントが無く、わかりづらいという内容が多い。またOpenStackはコンポーネントも多くそれらを適切に構成するのは難しい。そんな不満を見透かしたようにVMwareが提供するのは2つのOpenStack関連のパッケージだ。一つ目はVOVA(vSphere OpenStack Virtual Appliance)、2つ目はVIO(VMware Integrated OpenStack)だ。VOVAは1年ほど前に公開された、ある程度VMwareを理解できるエンジニア向けのノンサポートパッケージ、簡単にVMwareベースのOpenStackを体験できるという。VIOはOpenStackとVMware製品を組み合わせて検証を行い、最も安全でかつ高速なVMware版のOpenStackというふれこみだ。オープンソースでしばしば問題になる「問題が起こった時に誰が責任を持ってくれるのか?」に対する完全ではないが次善の解決策とでも言えるのではないだろうか。ただし、日本での扱いについては未だ決まっていないらしく、vForumのセッションでは紹介のみということだった。
仮想化の技術と実績を持つVMwareだからこそOpenStackにおいても最高の性能と安心できるサポートを得られるということが、エンタープライズ向けのプライベートクラウドを検討している情報システム部門の担当者に向けたVMwareのメッセージといえるだろう。
セッションの最後で遠藤氏は、VMwareとしてのOpenStackへの取り組みをまとめ、「単一ベンダのサポート」という項目ではVMwareがOpenStackのコードですらもサポートすると説明し、セッションを締めくくった。
OpenStackのセッションの後に始まったジェネラルセッションではVMwareのCEO、パット・ゲルシンガー氏が登壇。OpenStackやコンテナー技術にも言及し、エンタープライズ向けの仮想化の拡がりを印象付けた。ここでもOpenStackは一つの選択肢であり、他にも選択肢はあることを強調した。
そして2014年8月のVMworld 2014で発表されたEVO:RAILの上位機種としてEVO:RACKが紹介された。EVO:RAILはいわゆるハイパーコンバージドアプライアンスのためのソフトウェアで、VMwareがソフトを提供し、ハードウェアメーカーがそれに準拠した2Uのラックマウント型サーバー群と組み合わせてパッケージされたアプライアンス製品だ。新興のNutanixやTintri、EMC Isilonなどのソフトウェアで実現するスケールアウト型ストレージと同じくCPU、メモリ、SSD、HDD、ネットワークインターフェースがセットになっている。
VMwareがEVOシリーズとしてソフトを提供し、これまでのパートナーであるDELLやEMCが準拠するハードウェアと組み合わせることで信頼性のあるハードウェアとソフトウェアによって差別化が可能だとVMwareは考えているようだ。現行のEVO:RAILではまだ構成出来る最大のノード数など拡張性に劣る部分もあるが、EVOシリーズは上位機種の発表によって拡張性はカバーできると考えているのだろう。EVO:RACKは主にデータセンター規模のサイトでの導入を狙っているという。
仮想化の実績をベースにOpenStackからハイパーコンバージドアプライアンス、プライベートクラウドまでも提供することでこれまでのVMwareのエンタープライズだけではなく中小規模市場までも狙うVMware、引き続き注目したい。
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