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情シスマネージャの挑戦!
IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦

第3回:オーナーシップの発揮とビジネスモデルの構築が必要

著者:有田 若彦   2007/2/14
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社内の一部門ではなく独立した1企業と考える

   情報システム部のあり方を考える際に、まず考えなければならないことが2つある。「オーナーシップの発揮」と「IT部門のビジネスモデル」だ。

   前者は、平たくいえばIT部門を社内の一部門ではなく独立した1企業と考えることだ。IT部門長は、自分を社長だと自覚し、配下の中間管理職は取締役という実感を持って業務を遂行してもらうということだ。

   IT部門長(仮想社長)は部員(仮想社員)の生活をあずかっており、積極的かつ責任ある行動をとる必要がある。また、ステークスホルダーや顧客となる自社の経営層やユーザに対して、価値あるサービスを提供する、あるいは存在価値を認めてもらわなければならない。そのためには、明確なビジョンと戦略を定めて、社員を引っ張っていくことが必要だ。

   IT部門の中間管理職たる仮想取締役は、社長のビジョンと目標を経営視点でブレークダウンし、積極的に資源の配分や獲得、社員の育成と動機付けを実施する。

   また、経営視点で考えて行動することを要求されているのだから、抜けているアクションに目を光らせながら、ムダなく目標に邁進していかなければならない。社内のIT部門といっても、マネジメント意識は外部のIT企業と同じ目線を持つことも必要だ。

   繰り返しになるが、ビジョンと目標を持ち、そこへ到達するための計画を定める。そして、地道にマネジメントするのだ。例えば、実際に自部門のバランススコアカードを書いて手段と目標の関係や、今すべきことを熟考するのもよいだろう。

   もし、こうした対策を実施しなければ、受け身のIT部門に成り下がったままという破目になってしまう。

   ところが世間では意外と、目標と戦略を持たない社内IT部門が多いそうだ。目標らしきものを持ってはいても、中味はインフラの整備計画そのものであったりして、何を目指すのかが伝え切れていない場合が多い。

   規模の大きいシステム改修やバージョンアップは、担当者にとっては間違いなく一大イベントであり、大変さは想像できる。だが、ステークスホルダーや顧客には単なる作業としか映らない。どういったビジネス価値を与えるための通過点なのかを、顧客に明確にできなければ同じ作業をやっていても意味がないということを肝に銘じて欲しい。
ドイツレポート2〜KMはあくまで記憶に留めおくために使う

   コミュニケーションを大事にするドイツ人らしく、KMはあくまで「忘れないように記憶に留めておくもの」と割り切っているように感じた。日本のようにKMで業務プロセスを自動化するという発想ではなく、「備忘録」のような使い方だ。ナレッジをマネジメントするのはあくまで人であり、必要な情報が蓄積されていれば良いということのようだ。

   これはBIでは顕著に現れる。日本では、データの傾向や規則性などを自動分析し、意思決定に直結する何らかの答えをコンピューターが導き出すことを期待しているが、ドイツでは「データから何か発見をするための道具」として位置づけている。

   つまり、分析者はあくまで人であり、それを補助するのがBIツールという考えだ。ITに過度に期待する日本と、そうでないドイツの差をまじまじと感じた。

   日本の都道府県単位に当たる各州政府では、日本よりも急速に電子政府化が進んでいる。たとえば、ヘッセン州では州ポータルや地理・交通情報サービス、電子申請・申告、電子警察、電子診療など30を超えるサービスが既にアナウンスされている。

   これらの行政サービスは、州政府の合理化はもちろん、住民の獲得と企業誘致にも一役買っている。サービスの良い州にすることで、企業が集まり、雇用機会を創出。住民が集まり、税収も増加する、という連鎖構造を期待しているようだ。

   また、CEBITでは、各州が構築したシステムをベンダとともに紹介し、売り込んでいた。技術誇示の意味もあろうし、民間移転、あるいは他州への横展開といったこともあるのだろう。日本では談合問題やベンダの囲い込み問題、それらによるコスト高といった問題が深刻化しているが、ドイツではオープンに官民一体となってシステム整備しているのはユニークだ。

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有田 若彦
著者プロフィール
有田 若彦
製品開発技術者やFAエンジニア、SEなど、一貫して製造業のエンジニアリングを歩む。現在は、某化学メーカーの情報システム部に所属。グループウェアの全社展開やDWH/BI、汎用機ダウンサイジングなどのプロジェクトのほか、EUCやEUDの案件を経験。目下は、IT企画やITマネジメント、IT教育、システム監査など多方面を担当。システムアナリスト、CISA公認システム監査人、ITC公認ITコーディネーター、経営品質協議会認定セルフアセッサー、行政書士。


INDEX
第3回:オーナーシップの発揮とビジネスモデルの構築が必要
  社内IT部門の何なのか?
社内の一部門ではなく独立した1企業と考える
  T部門のコアコンピタンスはビジネスプロセスではない
  3種類のモデルを組み合わせて行動する