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情シスマネージャの挑戦!
IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦

第3回:オーナーシップの発揮とビジネスモデルの構築が必要

著者:有田 若彦   2007/2/14
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T部門のコアコンピタンスはビジネスプロセスではない

   オーナーシップを発揮するということは、IT部門を「経営」するということだ。「経営」するからには「儲ける構造」、つまりビジネスモデルを生み出す必要がある。順を追って説明していく。

   まず、IT部門のコアコンピタンスを何と考えるか。

   大方のコンサルタントやIT関係者は「自社のビジネスプロセス」だというが、これは必ずしも正しくない。なぜなら、IT部門が把握している「ビジネスプロセス」は古いからだ。

   ドッグイヤーの時代、旧式のビジネスプロセスや業務知識をよりどころに判断してはいけない。むしろ、「新しいビジネスプロセス」をユーザとともに、議論できなければならない。そのために必要なのが「論理力」「想像力」といった中核能力だ。

   さらに、もっとコアなものがある。それは「IT資産(設備)」だ。これなくして、IT部門とはいわないだろう。仮にASPを使っていたとしても、他のどの部門でもASPのマネジメントはできないだろう。IT部門があって、はじめて可能になることだ。

   見方を変えると、IT部門は「設備産業(設備保有産業)」ともいえるだろう。とすれば、IT部門は「設備産業」のビジネスモデルに着目していけばよいことになる。

   世に中にある「設備産業」を思い出してみよう。○○ホテル、××スタジアム、△△カントリー(ゴルフ場)などなど。ここでアレと思われた読者はかなり鋭い。これらの設備産業は、ほとんどサービス産業化しているのだ。つまり、IT部門も設備の保有と維持・改修に止まるのではなく、活用推進というという領域にまでサービスを広げていかなくては、儲からない、評価されないということになる。

   例えば「スタジアム経営=IT部門」と仮定してみよう。

   スタジアムを保有すると維持改修が必要になる。これは情報システムを保守メンテする行為と等価だ。スタジアムの警備は、ITリスク対策と捉えることもできる。

   スタジアムに来る顧客が快適に過ごすためには、様々な顧客満足向上対策を講じるだろう。シートの変更やサービスデーの企画、照明器具類の変更などなど。これらは、情報システムが現場のニーズを取り入れて改造・機能追加していく過程と似ている。

   スタジアムを改造しても客足が遠のいていれば儲からない。コンサートに使える、サッカーの試合にも使えるなど、スタジアムの利用を売り込んでいかなければならない。これは、情報システムの活用推進と同じことだ。

   さらに、スタジアムの活用効果を上げるには、異業種との提携や連携も必要だ。例えば、隣接するホテルや式場と連携して顧客の定着化と共用化をはかったり、逆にスタジアムで挙式できるようにして、既成概念を打ち破った価値を作り出すことも考えられる。このことは、情報システムを経営戦略との融合と連携に等しい。
IT部門の運営はスタジアム経営さながらだ
図2:IT部門の運営はスタジアム経営さながらだ
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

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有田 若彦
著者プロフィール
有田 若彦
製品開発技術者やFAエンジニア、SEなど、一貫して製造業のエンジニアリングを歩む。現在は、某化学メーカーの情報システム部に所属。グループウェアの全社展開やDWH/BI、汎用機ダウンサイジングなどのプロジェクトのほか、EUCやEUDの案件を経験。目下は、IT企画やITマネジメント、IT教育、システム監査など多方面を担当。システムアナリスト、CISA公認システム監査人、ITC公認ITコーディネーター、経営品質協議会認定セルフアセッサー、行政書士。


INDEX
第3回:オーナーシップの発揮とビジネスモデルの構築が必要
  社内IT部門の何なのか?
  社内の一部門ではなく独立した1企業と考える
T部門のコアコンピタンスはビジネスプロセスではない
  3種類のモデルを組み合わせて行動する