TOP調査レポート> 3種類のモデルを組み合わせて行動する
情シスマネージャの挑戦!
IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦

第3回:オーナーシップの発揮とビジネスモデルの構築が必要

著者:有田 若彦   2007/2/14
前のページ  1  2  3  4
3種類のモデルを組み合わせて行動する

   このようにIT部門は「サービス産業化している設備産業」に、業態とビジネスモデルが似ているといえるだろう。

   とすれば、「1. 経営改革者としてのIT部門」「2. 現場支援者としてのIT部門」「3. IT管理者としてのIT部門」、の三者択一のビジネスモデルではない。いづれもが価値連鎖している、機能循環のモデルを取る方が理にかなっているわけだ。

   つまり、「インフラ整備 → 活用推進 → 戦略的応用 → ローコストな維持運営 → シナジーを生む活用の提言 → 戦略的応用の模索 → ・・・」と続いていくのだ。

   後は自社の業種特性や置かれ得た立場によって、1に力点を置くか、はたまた②かを資源配分上、考えればよい。

   アウトソーサを使って資源補完するのも手だし、時節によって部員の配置を変えていくことも考えられるだろう。

   要は、「IT部門としてどのようなビジネスモデルを作るか」「社内ステークホルダー・顧客に対して貢献すべく行動は何か」「ビジネスモデルをコントロールしていけるか」に尽きるのだ。

   「組織は戦略に従う」という言葉の下、社内のIT部門は解体されるか、畑違いの分野に動員されて苦悩しているケースが少なくない。

   だが、それはサラリーマン的な受動的考え方であって、経営者的な建設的視点の発想ではない。情報システム部門は社内で誰よりも「IT」に精通し、それをマネジメントできる最も近い位置にいる集団なのだ。ITが戦略的道具というなら、この専門家的マネジメント集団を活かさないのは経営上の失策といっても過言ではない。

   これからのIT部門は、自らの価値戦略を描き、社内に売り込み、経営戦略にまでインパクトを与えるように行動していく必要がある。

   IT部門を「経営」するとは、自分たちの未来を切り開くことにつながるのだ。
ドイツレポート3〜発生頻度が高いイレギュラーなイベントに対応

   ドイツ人は議論好きな国民なので、何事も実に深く考慮されていると思えることがあった。ドイツ鉄道の券売機が列車運行管理システムと接続されているので、乗客は目的地までのスケジュールが印刷できたり、路線バスの運行について到着予定までの時間や系統番号を実にシンプルな形で確認できる。こうすることで、乗客がまごつかなくて済むようになっているのだ。

   他にも、ルフトハンザ航空ではロストバゲージした場合、目的地に着いた時点で「荷物は同便してない」と即座に知らせる仕組みとなっている。また、あるビジネスホテルでは、チェックアウトして数時間後に再度宿泊を延長するために舞い戻ってきた場合でも、名前を告げるだけで簡単に延泊処理が完了する。

   こういった「発生頻度が高いイレギュラーなイベント」に、ITシステムが十分対応できていることには感服した。日本では、ノーマルな状態を想定して構築することが一般的なので、イレギュラーな事態では端末をあれこれ叩いたり、電話で担当を呼び出したりしなければ対応できない場合が多い。つまり、非正常な事態を例外処理と位置づけ、コンピューター化対象から外して検討し、むしろ手作業で処理することを奨励しているケースが多いということだ。

   今後、こうした「発生頻度が高いイレギュラーなイベント」に対応するためには、サービスの受け手(=顧客)が願っていることや、情報なりをあらかじめつかんでおく必要があろう。日本では、往々にしてサービスの提供者(=従業員)の行動パターンを、忠実にトレースすることに主眼を置きがちで、最終顧客に本当に役立つITシステムを十分検討できているかは疑問だ。

   これからは、エンドユーザをはじめ、ユーザ企業のIT部門やベンダーといったシステム化に携わるすべてのメンバーが、システム設計段階で「最終顧客が願っている情報やサービス内容を考えたり、一緒に論議できる」ようになれば、ますます経営に価値ある情報システム作りが進展していくだろう。それに伴い、IT部門やベンダーも従来とは違った目線を要求され、リードオフマンとしての役割が高まっていくと考えられる。


前のページ  1  2  3  4

有田 若彦
著者プロフィール
有田 若彦
製品開発技術者やFAエンジニア、SEなど、一貫して製造業のエンジニアリングを歩む。現在は、某化学メーカーの情報システム部に所属。グループウェアの全社展開やDWH/BI、汎用機ダウンサイジングなどのプロジェクトのほか、EUCやEUDの案件を経験。目下は、IT企画やITマネジメント、IT教育、システム監査など多方面を担当。システムアナリスト、CISA公認システム監査人、ITC公認ITコーディネーター、経営品質協議会認定セルフアセッサー、行政書士。


INDEX
第3回:オーナーシップの発揮とビジネスモデルの構築が必要
  社内IT部門の何なのか?
  社内の一部門ではなく独立した1企業と考える
  T部門のコアコンピタンスはビジネスプロセスではない
3種類のモデルを組み合わせて行動する