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UML導入に関する考察
UML導入に関する考察

第1回:UMLの現状
著者:野村総合研究所  田中 達雄   2005/06/16
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開発方法論

   最後に開発方法論を提供しているプレイヤーについて整理する。

   UMLはオブジェクト指向開発における単なるドキュメントの表記法であり、実際の開発現場では、オブジェクト指向開発の進め方や分析設計の手法などが別途必要となる。それがオブジェクト指向開発方法論であり、いくつかの開発方法論はベンダーなどから提案・提供されている(表4)。
開発方法論(ABC順) 提供会社
ComponentAA/BRMODELLING 富士通株式会社
Coup(クー) セントラル・コンピュータ・サービス株式会社
LUCINA(ルキナ) 日本ユニシス株式会社
OKI Software Object Oriented
Development Methodology(O3DM)
沖ソフトウェア株式会社
RUP(ラップ:Rational Unified Process) 日本アイ・ビー・エム株式会社(旧Rational社)

表4:主な開発方法論と提供会社

   この中でも、Rumbaugh(ランボー)氏、Booch(ブーチ)氏、Jacobson(ヤコブソン)氏らが所属していたRational社(現IBM)の開発方法論であるRUPは知名度や普及率が群を抜いており、他の企業が提供する開発方法論も多分に影響を受けている。

   これら開発方法論では、オブジェクト指向の概念を取り入れた分析・設計・実装の方法や開発プロセス(開発工程やその進め方)、プロジェクト管理、さらにはテスト手法、運用まで幅広く用意され、従来型の開発方法論(構造化手法やデータ中心手法など)から置き換えられるよう努めている。

   開発プロセスでは、従来型のウォーターフォールに加え、反復型やアジャイル型(表5)の開発プロセスが提案・提供されている。

XP(eXtreme Programming)
Kent Beck、Word Cunningham、Ron Jeffriesらが提唱。実践的でツボを抑えた内容がプログラマの支持を集め、数あるアジャイル開発プロセスの中ではもっとも関心を集めている。各プラクティスの実践については厳しく制約を課しており、他のアジャイル開発プロセスと比べて規則性が特に高い
Scrum
Ken Schwaber、Jeff Sutherland、Mike Beedleらが提唱。ラグビーのスクラムから由来した名称で人とチームを非常に重視する。プロジェクト管理プロセスと呼ぶに相応しい方法論であり、XPのプロジェクト管理を補完する
ASD(Adaptive Software Development)
Jim Highsmithが提唱。変化への適応を重視し、複雑系の理論を取り込んでいる。具体的なプラクティスというよりは、他のアジャイル開発プロセスも包含するフレームワークとしての理論的基盤がしっかり整備されている
FDD(Feature-Driven Development)
Peter Coad、Jeff De Lucaらが提唱。「フィーチャー」と呼ぶユーザ機能を中心として開発を進める方法論。モデルを重視することが特徴で、明確にオブジェクト指向開発が意識されている。作業の進め方や計画の立案方法がRUPなどアジャイル開発以前の反復型開発に比較的近いため、他のアジャイル開発と比較し違和感なく移行できる
Crystal
Alistar Cockburnが提唱。コミュニケーションと会話の重要性を明確に強調した開発プロセス。プロジェクトに関わる人数とシステムの欠陥によるダメージの大きさという2つの要素に加えて、いくつかの開発方法のテンプレート群を用意している。継続的にプロセスを改善していく具体的な方法も言及している

表5:アジャイル型の開発プロセス

   今回はUMLと関係の近いプレイヤーである認定資格/認定機関、UMLモデリング・ツール、開発方法論について触れるとともに全体を見渡してきたが、次回はUML導入実態として事例をいくつか紹介していく。

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野村総合研究所
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。


INDEX
第1回:UMLの現状
  UMLの歴史
  関連プレイヤー(業界マップ)
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開発方法論