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UML導入に関する考察
UML導入に関する考察

第1回:UMLの現状
著者:野村総合研究所  田中 達雄   2005/06/16
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UMLの歴史

   UML(Unified Modeling Language)は主にオブジェクト指向言語による開発の分析や設計の際に使用するドキュメントの図の表記法を定めた標準の共通言語である。UMLの標準化は非営利団体であるOMG(Object Management Group)が行っている。
開発方法論の乱立

   そもそもUMLが標準化された経緯は、90年代初頭に乱立したオブジェクト指向開発方法論と共に様々なドキュメントの表記法が提案されたことに発端がある。当時はOMT法、Booch法、OOSE/Obectory法、シュレイヤー/メラー法などと様々なオブジェクト指向開発方法論が提案され、またそれと同時にその方法論に沿って分析・設計を行ったときの成果物として、様々なドキュメント表記法が提案された。

   当時はCOBOL/構造化手法が主流であって、新しい開発パラダイムといってもいいオブジェクト指向を学習したり検証したりする拠り所は、提案された開発方法論や表記法しかなかった。しかし提唱者によって開発方法論も表記法も異なっていたため、どれを拠り所とすればよいかに迷い、それぞれの開発方法論や表記法を比較検討したりしたものである。

   その後はJavaなどのオブジェクト指向言語が徐々に普及しはじめ、オブジェクト指向言語で実装するなら、オブジェクト指向開発方法論を取り入れるべきとの流れから、オブジェクト指向開発方法論に対する注目度も高まり、開発方法論や表記法の統一が望まれるようになる。

UMLの歴史
図1:UMLの歴史


UML

   そんな中、1994年にRumbaugh(ランボー)氏とBooch(ブーチ)氏が、そして1995年からはJacobson(ヤコブソン)氏も参加し、統一方法論の作成ならびに表記法の統一が行われる。1997年には統一表記法であるUMLがOMGへ提出されてUML 1.1がOMG標準となる。その後もOMGで標準化作業が重ねられ、今日に至っている。

   オブジェクト指向という新しい開発パラダイムを普及啓蒙する目的もあったのだろうが、このように開発方法論やその表記法が公開されること自体が驚きだった。それまで開発方法論や表記法などは各企業内で伝承される非公開の情報としての扱いが当たり前の時代だったからである。オブジェクト指向開発という新しい開発パラダイムでの経験がない開発者は、彼らの方法論や表記法を頼りに彼らの本を読み漁り、自社の開発スタイルにどのように融和させていけるかと頭を悩ませたものである。

   このような時代背景の中、丁度筆者自身もOMT法からオブジェクト指向開発方法論を学び、数年前にはUMLに関する書籍を執筆するなどUMLに深く関わってきた経歴を持つ。しかし現在のUMLの利用状況を見ると、一般の開発現場で当たり前に使われる状況には至っていない。先にThinkITで掲載された「OMG会長兼CEOリチャード・マーク・ソーリー氏インタビュー」の中でUMLの普及率について触れており、「欧州諸国は95%、米国は90%で多くの成功事例もあるが、日本は40%で成功事例もごくわずか」とコメントしている。筆者の感覚では普及率40%も多過ぎるくらいだ。

   1997年1月にUML 1.0が世に出てから既に8年が経過したが、日本ではなかなか火がつかない。ソーリー氏も訝しがっている日本での普及状況について、もう一度振り返って整理していきたい。

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野村総合研究所
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。


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