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商用&OSSデータベースの現状と今後
商用&OSSデータベースの現状と今後

第2回:止まらない安心&止まっても安心?
〜 有名ブランドだけが可用性を保証できるのか?

著者:オフィスローグ  工藤 淳   2005/4/1
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探せば、あった!クラスタリング対応の商品版OSSデータベース

   「それでも、やっぱりサポートや保証の心配は残るじゃないか!」。そこで注目したいのが、商用製品化されているOSSデータベースである。これならばOSSのコスト的なメリットを生かしながら、ベンダーや正規代理店によるサポートおよび保証が受けられる。なんら他の主要商用データベースと変わらないといっていい。

   そこで今回のテーマの「可用性」に絞って、クラスタリング機能を搭載したOSSデータベース製品を探してみたところ、ちゃんとあった。

   富士通の「PowerGres Plus」というプロダクトだ。これは、自社製RDBMSとして「Symfoware」を持つ富士通が、「PostgreSQL」のストレージ・マネージャ部分を「Extended Storage Manager for PostgreSQL」に置き換えることで機能拡張を実現し、エンタープライズ業務システムへの利用を可能にした、いってみればPostgreSQLの拡張仕様版で、Linux上で動く。

   これを同社の高信頼基盤クラスタリングソフトウェア「PRIMECLUSTER」と組み合わせることで、システムに異常が発生した際にはPowerGres Plusの運用ノード切替えを自動的に行うことができるため、高い可用性を実現するという。同製品のWebサイト(http://software.fujitsu.com/jp/powergresplus/)には、国内の主要導入事例も掲載されている。

   肝心のサポートについても、同Webサイトによれば、サービス契約にもとづく「365日24時間ノンストップを実現する富士通ならではのハード・ソフトウェア一貫のワンストップソリューションサポートサービスをご用意」とのことだ。


いろいろあっても、データベース製品選択は自社のスタンスまで含んだ問題

   さて、ここまで見てきて、それではOSSの"コストの安さ"と商用製品の"安心感"の折衷案として商品版OSSを選べばメデタシなのだろうか?残念ながらそんなにことがラクにすんだら、苦労はしないというのがデータベースをよく知る人々の真面目な結論だろう。

   たしかにOSSを使ってデータベースを立ち上げれば初期導入コストは安くなる。しかしデータベースは長く使い続けていくものである。安く立ち上げたからといって、管理・運用のコストまで下げられるわけではない。

   極端な話、OSSを使って導入が商用製品の半額で済んでも、管理エンジニアの給料を半値にできるわけではないのだ。このことは、世の中のエンタープライズソリューションがそうであるように、データベースもまた製品の価格や性能だけで決められるものではないことを示している。

   結局は、そのデータベースが自社に合っているかどうかをさまざまな角度から検証して導入しなくては、その後も長く使い続けることはできない。そこでは、「自社内部にデータベース技術者がいるかどうか」が重要な判断基準となるだろう。

   一般の中小規模の会社や商店だと、社員の8割が営業マンであとは総務と経理が2〜3人ずつ、などというところは珍しくない。もしこんな会社で社長が「安いから」という理由だけでOSSデータベースを導入したら、はたしてまともに使い続けられるだろうか?今回のテーマである「可用性」という観点からも、こんなに危なっかしい話はない。

   自社内に技術者を擁している、または自社のポリシーとして管理者を育てていこうという意志があれば、OSSを使うことは自社のミッションに合致したデータベース選びであるといえよう。だが、会社としてそうした技術要員を抱えようと考えていないならば、すみやかに商用データベースを選択して管理・運用までも一括してアウトソーシングすることが、システムの可用性を確保する上では不可欠といえる。

   自社の実情やスタンスを視野に入れず、やみくもにコストを惜しんだあげくにデータベースが落ちたりしては何にもならない。技術者が社内にいないのなら、ちゃんとオカネを払ってでも可用性を確保する方が、長い目で見れば得なのである。


データベースの可用性と企業のサステナビリティを考えてみる

   そういう意味では、上に紹介した商用サポート付きOSSソリューションも、あくまで選択肢のひとつに過ぎない。よく「企業は人なり」と言われるが、データベースだってそれを使い、維持する「人」なのである。最近、経営や投資の用語では「サステナビリティ」ということが盛んに聞かれる。ようするに「この先どれくらい、その企業が(つぶれずに)運営しつづけていけるか」ということだ。

   少々こじつけっぽいが、データベースの可用性にしても、いまや企業経営の観点からは一種のサステナビリティと考えてみるのもよいだろう。銀行のATM障害やコマースサイトの過負荷ダウンのように、データベースのトラブルが即企業の経営の脅威となる時代にあって、データベースの可用性を保つというのは、情報システム部門の担当者ひとりの仕事ではなくなっている。

   「うちの会社にとってデータベースはどれだけ必要で、そのために割ける人手と予算はいくらで……」という具合に、まず自社のビジネスとそのためのリソースを経営のレベルから正確に見直すところから始めなければ、商用もOSSも意味はない。「学問に王道なし」というが、データベース選びにも王道はないのである。

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著者プロフィール
オフィスローグ  工藤 淳
IT技術系出版社勤務を経て、オフィスローグとして独立。データベース関連誌編集に携わっていた流れで、現在もデータベース系の執筆が比較的多い。元々は楽器から建築、自動車まで何でも注文があれば書いてきたのが、気がついたらIT専門のような顔をして仕事をしているのに自分で少し驚愕、赤面。


INDEX
第2回:止まらない安心&止まっても安心?
〜 有名ブランドだけが可用性を保証できるのか?
  今日データベースの可用性は、企業の信用や社会の情報インフラに関わる問題
  データベースの可用性を実現する技術、主流は「クラスタリング」
  なぜOSSデータベースを選ぶ必要があるのか
探せば、あった!クラスタリング対応の商品版OSSデータベース