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OSS適用システムの障害解析ツール
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第5回:Disk Allocation Viewer for Linuxとは
著者: 日立ハイブリッドネットワーク  藤原 哲
日立製作所  杉田 由美子   2005/7/12
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フラグメントとアクセス性能の評価

   フラグメントとアクセス性能について2つの評価を行ったので、ここで紹介する。ひとつは同時書き込み数を変えたファイルのフラグメント数およびその読み出し時間を数値で評価したものであり、もうひとつはベンチマーク実行時のIO性能とフラグメント状況を、DAVLを使って視覚的に評価したものである。
同時書き込み数を変えたファイルについて

   評価した際の手順の概要は下記の通りである。

  1. 同時書き込みの数を変えてファイル書き込みを行う
  2. 書き込んだファイルに対し読み出しを行い、読み出し時間を計測する

ディストリビューション MIRACLE LINUX v3.0
ファイルシステム ext2/ext3
ファイルサイズ 32MByte
ブロックサイズ 4KByte

表1:評価環境の概要

   この結果、同時書き込み数とフラグメント数の関係は図4のようになり、同時書き込みを行うことでフラグメント数が増えることがわかる。また、フラグメント数とファイル読み出し時間の関係は図5のようになり、フラグメント数が多いほど読み出し時間が増加し、フラグメントのないファイルと比べると、約2倍もかかる結果となった。

同時書き込み数とフラグメント数の関係
図4:同時書き込み数とフラグメント数の関係

フラグメント数とファイル読み出し時間の関係
図5:フラグメント数とファイル読み出し時間の関係

   このように、考えていた以上にフラグメントは発生しやすく、アクセス性能にもかなり影響するということがわかった。

   上記の詳細な評価手順および評価環境については、IPAで公開している評価報告書に記載しているので参照して頂きたい。またその評価報告書では、この評価とは別に既存のデフラグツール(defrag)を用いたデフラグの評価も行っているので、あわせて参照して頂きたい。

備考: お断りしておくが、このdefragを用いた評価はあくまでもDAVLの効果を示すためのものであり、defragツールのそのものの評価は行っていない。またこのツールは、現在はメンテナンスが止まっているようなので、ご注意頂きたい。
IOzone実行時のフラグメント状況について 〜 LKSTとの連携

   第3回のLKSTの紹介記事の最後の方に、システムコール実行時間、ブロックIO処理時間、連続して読む2つのデータブロックの距離の情報を収集した話があったことを覚えているだろうか?

   図6に、そのグラフとその時のファイルのフラグメンテーション状態をDAVLで表した図を示す。LKSTの測定結果グラフの青い線がデータブロック間の距離を表している。一番左側の点線で囲んだ部分はリード性能が良く、その分をDAVLで見ると、黄色のブロックの連続、すなわちその部分のデータは連続していることが見て取れた。

IOzone実行時のフラグメント状況の可視化(LKST性能評価結果との対応)
図6:IOzone実行時のフラグメント状況の可視化(LKST性能評価結果との対応)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   さらに、それ以降は離れた位置にデータがあることがDAVLからわかり、その部分をLSKTのグラフで見るとリード性能が落ちていることがわかった(一番右側の点線で囲んだ部分)。

   このように、LSKTの分析結果とDAVLで得られる結果に一致性を見ることができる。すなわち、LSKTが適用されていないシステムでも、DAVLによって粒度は粗いものの性能に関する情報を得ることができることがわかった。

   そこで、DAVLを使ってまず状況情報を得て、フラグメンテーションによる性能劣化の疑いがあるかを判断し、あればLKSTを適用した検証システムで再現して解析を進める。そして解決策を適用した場合には、運用中でのその効果をDAVLで確認するという、連携した使い方ができると考えている。

   なお、本内容の詳細はLinux Conference 2005で発表した論文や発表資料に記載されているので、参考にして頂きたい。資料は下記に示すURLにて公開されている。

http://lc.linux.or.jp/lc2005/slide/CP-06s.pdf
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株式会社日立ハイブリッドネットワーク 藤原 哲
著者プロフィール
株式会社日立ハイブリッドネットワーク  藤原 哲
1986年に日立通信システム(現 日立ハイブリッドネットワーク)入社。入社当初は、主に交換機等のファームウェア開発を行っていた。その後は時代の流れと共に、アセンブラ使いからC言語使いに移行し、主にアプリケーションの開発を行ってきた。派遣先のシステム開発研究所において、2004年度から今回のDAVLを担当、現在もLinuxのソフトウェア開発に従事している。Linuxカーネルの魅力にはまりつつある今日この頃である。


株式会社日立製作所 杉田 由美子
著者プロフィール
株式会社日立製作所  杉田 由美子
システム開発研究所に勤務。OS、コンパイラなどの研究開発を経て、90年代後半からシステムの高信頼化研究に着手。Linuxカーネルの研究は2001年から担当。現在もLinux/OSSを中心とした研究開発に従事。LKST/DAVLのメンテナ。OSS関連のコミュニティ活動にも参加し、普及にも取り組んでいる。


INDEX
第5回:Disk Allocation Viewer for Linuxとは
  はじめに
  DAVLの前提条件
フラグメントとアクセス性能の評価
  DAVL Q and A