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OSS適用システムの障害解析ツール
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第5回:Disk Allocation Viewer for Linuxとは
著者: 日立ハイブリッドネットワーク  藤原 哲
日立製作所  杉田 由美子   2005/7/12
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はじめに

   Linuxのファイルシステムはフラグメントが発生しにくく、性能劣化が起きにくいと言われてきたが、果して本当にそうなのだろうか。最近では、同じパーティション上の同じサイズのファイルでも、シーケンシャルに読み込みを行うと大きく性能が異なる事例が散見されている。

   この性能差はフラグメントの状況に依存すると予想できるのだが、今までのLinuxではそれを確認する手段がまったく提供されていなかった。もし確認できれば、改善の方法が見出せるかも知れない。そこで我々は、フラグメント状況とファイルアクセス性能の関係を評価する手段として、フラグメント状況の可視化ツール、Disk Allocation Viewer for Linux(以後、略称としてDAVLと記する)を開発した。

   本稿ではDAVLの概要を簡単に説明し、次にフラグメントとアクセス性能の関係の評価を紹介する。また、DAVLに関して寄せられた質問とその回答もあわせて紹介する。

   DAVLは最近までDisk Allocation Viewer、略称DAVと呼んでいたが、Linux向けツールであることを明確にする意味から、先日公開したバージョンからDisk Allocation Viewer for Linux(略称DAVL)とした。本稿では、DAVLの最新バージョン1.2.0について説明する。


DAVLとは

   DAVLとは、ディスク内のフラグメント状況を可視化するツールである。以下で概要を説明する。


DAVLの特長

   DAVLは、ext2/ext3ファイルシステムのフラグメント状況を可視化するツールである。主な特長を下記に示す。

  • パーティションのマウント状態によらず、フラグメント状況を取得できる
  • 可視化対象として、パーティション/ディレクトリ/ファイルから選択できる
  • フラグメント状況をテキスト/GUIで表示できる

   また、Linuxカーネルをまったく変更せずに利用できることも、DAVLの長所のひとつである。


DAVLの構成

   DAVLは、下記の2つのプログラムと1つのカーネルモジュールから成る。

  • cdavl(CUI disk allocation viewer for linux)
  • gdavl(GUI disk allocation viewer for linux)
  • davl_liveinfo

   cdavlは、フラグメント状況を取得し、テキスト形式で出力するプログラムである。gdavlは、cdavlを実行した結果をGUIで表示するプログラムである。davl_liveinfoは、マウント中のファイルが変更された場合でも、変更後の最新情報を取得するためのカーネルモジュールである。

   DAVLの構成を図1に示す。

DAVL v1.2.0構成図
図1:DAVL v1.2.0構成図

   gdavlでは、あらかじめcdavlの出力をファイルに保存したもの(ディスクのスナップショット)を読み込み、GUI表示することもできる。

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資料紹介
「OSSの性能・信頼性評価/障害解析ツール開発」報告書

本記事は、OSS推進フォーラム 開発基盤ワーキンググループによって公開されている「OSSの性能・信頼性評価/障害解析ツール開発」報告書を基に記事を掲載しています。報告書には、本記事で紹介した障害解析ツールのさらに詳しい情報が記載されています。
Javaアプリケーション層の評価、DB層の評価、OS層の評価の各報告書や付録、障害解析ツール開発に関する各報告書などが、OSS推進フォーラム 開発基盤ワーキンググループのホームページにて公開されています。

■「ディスク割り当て評価ツール『Disk Allocation Viewer』の開発」報告書(PDF形式/99.9KB)
http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/Contents/DevInfraWG/dav-report.pdf

■日本OSS推進フォーラム・開発基盤ワーキンググループホームページ
http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/DevInfraWG.html
株式会社日立ハイブリッドネットワーク 藤原 哲
著者プロフィール
株式会社日立ハイブリッドネットワーク  藤原 哲
1986年に日立通信システム(現 日立ハイブリッドネットワーク)入社。入社当初は、主に交換機等のファームウェア開発を行っていた。その後は時代の流れと共に、アセンブラ使いからC言語使いに移行し、主にアプリケーションの開発を行ってきた。派遣先のシステム開発研究所において、2004年度から今回のDAVLを担当、現在もLinuxのソフトウェア開発に従事している。Linuxカーネルの魅力にはまりつつある今日この頃である。


株式会社日立製作所 杉田 由美子
著者プロフィール
株式会社日立製作所  杉田 由美子
システム開発研究所に勤務。OS、コンパイラなどの研究開発を経て、90年代後半からシステムの高信頼化研究に着手。Linuxカーネルの研究は2001年から担当。現在もLinux/OSSを中心とした研究開発に従事。LKST/DAVLのメンテナ。OSS関連のコミュニティ活動にも参加し、普及にも取り組んでいる。


INDEX
第5回:Disk Allocation Viewer for Linuxとは
はじめに
  DAVLの前提条件
  フラグメントとアクセス性能の評価
  DAVL Q and A