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構成の変更:lk_chg_value
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次に構成情報の変更の際に使用するコマンドを紹介する。実際に使用される機会としては表5のようなものがあげられる。
- ネットワーク構成変更に伴いVIP(仮想IP)の変更が必要なとき
- ネットワーク構成変更に伴い、ハートビートで使用する実IPの変更が必要なとき
- ホスト名の変更を行ったとき
表5:構成情報の変更をする機会
このようにHAシステムの前提となる情報が変更された場合で最も確実に変更の内容をHAシステム上に反映させる手段としては、リソース/HAシステム自体の再定義(リソース情報などを一旦削除し、構築し直す)ことが考えられる。
しかし、lk_chg_valueコマンドを用いて直接構成情報を書き換えることも可能である。ここではコマンドの使用例として、VIP(192.168.1.101)を192.168.1.201に変更することを想定してコマンドの実行例を示す。
lk_chg_valueコマンドは、LifeKeeperの構成情報データベース内の情報を直接書き換える処理を行うため、実行前にlkstopコマンドを使用して一旦LifeKeeperを停止する必要がある。lkstopコマンドを実行し、LifeKeeperを停止した後、以下のコマンドで変更を行った場合の影響範囲について確認する。
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[root@lk1 root]# lk_chg_value -Mvo 192.168.1.101 -n 192.168.1.201
(出力略)
--- /opt/LifeKeeper/subsys/comm/resources/ip/.instances 2006-01-08 16:39:35.000000000 +0900
+++ /tmp/instances 2006-01-08 16:39:36.000000000 +0900
@@ -1 +1 @@
-ip-192.168.1.101 IP-192.168.1.101 E lk1.example.com eth0 192.168.1.101 ffffff00 none u remove action has succeeded 0 0 0 I
+ip-192.168.1.201 IP-192.168.1.201 E lk1.example.com eth0 192.168.1.201 ffffff00 none u remove action has succeeded 0 0 0 I
(出力略)
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まず、実行例における各オプションの概要を表5に示す。
オプション |
概要 |
-o <値> |
構成情報における現在の(Old)値を指定する |
-n <値> |
構成情報における変更後の(New)値を指定する |
-v |
処理時の情報を冗長に(Verbose)出力する |
-M |
変更を反映させずに(Modify=0)、実行する。-vオプションとあわせることで実行した場合の変更内容が画面上に表示される |
表5:各オプションの概要
今回、-Mオプションをつけることにより「実行した場合の変更状態」を確認することができる。出力例において、行頭が「-」ではじまっているものが変更前の値であり、行頭が「+」になっているものが変更後の値となる。全出力を確認し、意図しない設定が変更されていないかを確認する必要がある。
出力に問題がなかった場合、今度は-Mオプションを省いて実行し、LifeKeeperの構成情報データベースを変更する。
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[root@lk1 root]# lk_chg_value -vo 192.168.1.101 -n 192.168.1.201
(出力略)
--- /opt/LifeKeeper/subsys/comm/resources/ip/.instances 2006-01-08 16:39:35.000000000 +0900
+++ /tmp/instances 2006-01-08 16:39:36.000000000 +0900
@@ -1 +1 @@
-ip-192.168.1.101 IP-192.168.1.101 E lk1.example.com eth0 192.168.1.101 ffffff00 none u remove action has succeeded 0 0 0 I
+ip-192.168.1.201 IP-192.168.1.201 E lk1.example.com eth0 192.168.1.201 ffffff00 none u remove action has succeeded 0 0 0 I
(出力略)
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同様にして、両系の情報を変更した後にLifeKeeperを起動しリソースの情報を確認する。
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[root@lk1 root]# lkstart
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(出力略)
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[root@lk1 root]# lcdstatus -e
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BACKUP
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TAG
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ID
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STATE
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PRIO
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PRIMARY
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lk2.example.com
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app-ThinkIT
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app-ThinkIT
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ISP
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1
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lk1.exa
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lk2.example.com
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ip-192.168.1.201
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IP-192.168.1.201
|
ISP
|
1
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lk1.exa
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(出力略)
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今回はコマンドの用例として紹介しているが、lk_chg_valueコマンドが行うのは「LifeKeeperの設定情報の書き換え」だけである。実際の構成変更を行う場合には、OSやアプリケーションなどの影響範囲を検討して行う必要がある。
また、コマンドラインにおいて意図しない変更を行った場合(例えば両系で別の設定を行ってしまうなど)は、復旧のために再度コマンドを実行したり、HAクラスタ化の再定義を行う必要さえ生じてくる。
そのような意味で、-Mオプションを用いた「実行時に変更される設定情報」については、情報を精査する必要がある。今回の構成例程度の例であればHAシステムの再定義を行った方が確実な場合もあるので、状況に応じて使い分けてほしい。
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構成・ログ情報の収集:lksupportユーティリティ
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LifeKeeperでコマンドラインから使用できるユーティリティは他にも数多くあるが、最後に「LifeKeeperのサポート窓口への問い合わせを行う際に必要な情報を一括で収集する」ユーティリティとしてlksupportコマンドを紹介しておきたい。
lksupportコマンドは、各種の情報をテキストに出力しアーカイブを行うスクリプトであり、LifeKeeper for Linux v4.6以降には標準で備えられているユーティリティである。
使用方法としては以下のように、コマンドを実行するのみとなっている。
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# lksupport
Collecting info under /tmp/lksupport/lk1.example.com
saving LifeKeeper status
saving LifeKeeper logs
saving LifeKeeper defaults file
(出力略)
Creating support file /tmp/lksupport/lk1.lksupport.0601071024.tar.gz
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出力される内容や、収集される情報・作成されるアーカイブ名はLifeKeeperのバージョンによって若干異なるが、これによってLifeKeeperの各種ログや構成情報などが/tmp/lksupport以下にアーカイブされることになる。
LifeKeeperのサポートに問い合わせを送る場合には、まず最初に収集してほしい情報がこのコマンドの実行により一括で収集できるようになっている。操作という面で使用されるコマンドではないが、覚えておくべきコマンドの1つといってよい。
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おわりに
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これまでも述べてきたが、LifeKeeperの特徴は「充実したGUIからの操作性」である。LifeKeeperは通常使用時において各種のコマンドを意識させないように設計されている。これは、裏側のアーキテクチャやコマンドを覚えることなく使用できるように配慮されたゆえの特徴だが、一方のコマンドラインでの使用においても数多くのユーティリティを備えている。
HAシステムを作成・維持する上で「アーキテクチャを意識しない」ためのGUIは非常に有用だが、より可用性を高める上ではアーキテクチャの理解も必須といえる。LifeKeeperに限らずコマンドラインなどのCUIからのアプローチは、GUIの裏側を学ぶ上でも非常に有用なアプローチなので、是非とも習得しておきたい項目であるといえる。
今回は、スペースの関係から代表的な一部のコマンドの紹介に留まってしまったが、本連載がLifeKeeperのコマンドラインへのアプローチを通じて、HAシステム構築/管理者のステップアップのきっかけとなれば幸いである。
SteelEye社のWebサイト上にコマンドラインからの使用に関するドキュメントも掲載されているため、あわせて参照していただき、一段階上のHAシステムの構築に役立てて欲しい。
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SteelEye:Support > Documentation
http://licensing.steeleye.com/support/docm.php
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著者プロフィール
サイオステクノロジー株式会社 クラスタソリューショングループ
サイオステクノロジーにおいて、SteelEye LifeKeeperの技術サポートや構築支援を行うエンジニア集団。日本国内で、彼ら以上にLifeKeeperを知る者たちはいないと自負している。世の中のすべてのHAクラスタがLifeKeeperになることを夢見て日々奮闘を続けている。
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監修者プロフィール
サイオステクノロジー株式会社 小野寺 章
インフラストラクチャービジネスユニット
エンタープライズソリューション部 部長
国産汎用機メーカに入社し、汎用機のSEを10数年担当、1994年頃からオープン・ダウンサイジングブームの到来とともにUNIX系OSを担当し、Solaris、HP/UXでSun Cluster、Veritas Cluster、MC/ServiceGuardなどを使用した、多数のミッションクリティカルシステムのHAシステム構築に従事。2001年ノーザンライツコンピュータ(現サイオステクノロジー)へ入社後、SteelEye LifeKeeperの総責任者としての国内での販売・サポート業務に従事。
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