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オープンソース帳票システム
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第1回:電子帳票システムの種類と適用範囲
著者:ビーブレイクシステムズ  横井 朗   2005/3/4
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電子帳票をめぐるシステムの今

   OSSが業務システムに広く使用され始めて数年、商用ソフトと同等の選択肢として急激に存在感を増してきています。ソフト自体の機能や安定性の向上とともに、オープンソース導入の障壁となっていた保守/サポートサービスを様々なベンダーが提供し始めたことが大きな要因と言われています。また、政府や自治体も後押しするなど、ユーザ企業における認知度も増し、私の担当するプロジェクトでもOSSを使用することに対するユーザの不安・抵抗感はここ数年で急激に減少してきています。

   そのような状況の中、本連載のテーマである「電子帳票」という分野はつい最近まで商用ソフトに変われるようなOSSが存在せず、ユーザにとってはコスト面で大きな負担となっていた分野でした。しかしここ1年余りで状況は変化し、電子帳票を実現する選択肢の1つとなりうるOSSが出てきています。その大きな要因となっているのが第2回以降に説明するiReportという帳票のデザイン・実行環境です。今までもPDF等を出力するライブラリはありましたが、XMLを編集して座標を指定するなど生産性の面で難がありました。iReportの登場によりGUIでのレイアウト作成が可能になったため生産性の面でも商用製品に近づいています。
電子帳票に求められるもの

   電子帳票システムの実現手段としてOSSが台頭してきたと書きましたが、現段階で全ての要求をOSSで満たすことは困難で、作りこみが多く発生するとかえってコスト高を招くことになるでしょう。商用製品を使うか、OSSを使用するかで機能・コスト・期間などの面からトレードオフが発生します。

   一般的に電子帳票に求められる機能をリストアップすると、大体表2に収まるのではないでしょうか。

  1. デザインの容易さ
  2. 様々な出力形式(PDF、HTML、CSV、TIFF、グラフ)
  3. 出力した帳票の管理
  4. 大量の印刷に対応(パフォーマンス)
  5. 既存リソースの取り込み(レガシーマイグレーション)
  6. 出力デバイス(プリンタサーバ、FAXサーバ、メールサーバ)

表2:電子帳票に求められる機能


   これらの機能が全て必要というのであればOSSでの実現は難しいといえるでしょう。しかし、規模・要件次第ではOSSで実現することが可能です。私の判断の基準として、要件に必要な機能が1〜3のみでであればOSS、4〜6の機能が必要であれば商用製品といった判断が、ある程度成り立つと考えています。

   もちろん、ここに上げたような基準だけでなく、OSSを使用するということは、表3の様なメリット/デメリットを伴いますので、導入を決定する前にはライセンス形態などを把握、整理しておく必要があります。重要なのはOSS電子帳票という選択肢を持ち、要求に応じて最適なものを提案できる準備をしておくことです。

メリット デメリット
大体の場合において無料でソフトウェアが入手可能 問題発生時などの対応は自己責任となり、技術力が無いと対応できない
ソースコードが公開されているので自分でバグが取れる(原因が調べられる)
ユーザの利益が開発、販売会社に左右されない

表3:OSSのメリット/デメリット


   では、実際に私が担当したOSSを使った電子帳票の事例をご紹介します。どちらのプロジェクトでも商用製品を使用した場合と比較すると遥かに短期間・低価格で要件を満たしたシステムを実現しています。

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ビーブレイクシステムズ
著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ  横井 朗  
オープンソース指向技術コンサルタント。Java専門のソフトウェアハウス〜フリーエンジニアを経て現職。帳票開発のみならず、オープンソースを用いたシステム構築を日々提案。なによりもお客様の真のニーズを求めるため社内外でオープンソースに関する啓蒙活動を行う。


INDEX
第1回:電子帳票システムの種類と適用範囲
  はじめに
定型帳票
  適用事例