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リッチクライアントの現状と今後の動向 |
第4回:リッチクライアント製品/技術動向
著者:野村総合研究所 田中 達雄 2005/4/11
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Stand-Aloneリッチクライアント
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Stand-Aloneリッチクライアントは、クライアントにインストールされた独自の実行環境上で動作する。独自の実行環境は、リッチクライアントアプリケーションの開発や実行コード軽量化によるネットワークの負担を減らすために、多くの機能が盛り込まれている場合が多く、実行環境をインストールできるクライアントに制限が加えられることがある。つまり、Browser-BasedリッチクライアントのようにほとんどのPC上で動作するといった軽量感は無いが、多くの機能が充実しており、機能性/開発生産性に期待できるリッチクライアントである。
以下、主なStand-Aloneリッチクライアント製品/技術を紹介する。
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Windows Formアプリケーション
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Windows Formアプリケーションは、.NET Framework上で動作するリッチクライアントであるとともに、代表的なStand-Aloneリッチクライアントでもある。同製品は、その特徴として「ノータッチ・デプロイメント」というアプリケーション配布機能を備えている。
ノータッチ・デプロイメントとは、クライアントアプリケーション(Windows Formアプリケーション)が置かれたURLを指定するだけで、ダウンロードから起動までを一括して行えるという機能(図3)のことをいう。
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図3:ノータッチ・デプロイメントの仕組み(初回導入時)
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また、1度ダウンロードしたWindows Formアプリケーションはローカルディスクに保存され、2回目以降はそれを起動することができるため、Webサーバ/ネットワークの負荷の軽減や起動時間の短縮を実現することができる(図4)。
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図4:ノータッチ・デプロイメントの仕組み(2回目以降)
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さらに、配布済みのクライアントアプリケーションをバージョンアップする場合には、Webサーバ上に格納した配布用のクライアントアプリケーションを置き換えるだけでよい。すると、そのことをクライアント側が検知し、自動的にダウンロード/起動される。このバージョンチェックは、クライアントアプリケーションの起動時に行ったり、特定曜日の特定時刻を指定して定期的に行ったりすることができる。
以上のように、Windows Formアプリケーションではノータッチ・デプロイメントを利用することで、導入および運用の作業を大幅に軽減することが可能である。
もっとも、このようなリッチクライアントの配布方法にも問題がないわけではない。リッチクライアントは高度なGUIを備えたアプリケーションであり、かつクライアント側だけで完結する機能を数多く持つことになるため、プログラムのサイズが大きくなる傾向にある。つまり、ダウンロードにかかる時間がネックになるおそれがある。
確かに、HTMLクライアントに比べればダウンロードの回数は少ないので、バージョンアップのときだけ我慢すればよいのかもしれないが、例えば、些細なバグフィックスが頻繁に行われ、その度にサイズの大きなプログラムをダウンロードさせられたのでは、非常に効率が悪い。そうした事態を考慮すると、クライアントアプリケーションは単一のプログラムとして組むのではなく、複数の細かなモジュールに分割し、変更されたモジュールだけをダウンロードするという形式にしたほうが、利用者の利便性はより高まるはずである。
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Click Once
上記の問題に対処するために、Windows Formアプリケーション用開発環境の次期バージョンである「Visual Studio 2005」では、「ClickOnce」と呼ばれる機能が追加される予定となっている。
この機能を利用すれば、1つのアプリケーションとして作成したプログラムを複数のモジュールに分割したり、ダウンロードのタイミングを指定したりといったことをパラメータの設定によって行える。これは、リッチクライアント開発者にとって注目に値する機能であろう。
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また、先の調査結果で、リッチクライアントのデメリットとして評価されている項目に「開発ツールの未整備」があったが、Windows Formアプリケーションに関しては、すでに「Visual Studio .NET」という"成熟"した開発環境が用意されており、その心配はない。
実際、ある事例でも、使い勝手のよいVisual Studio .NETを利用し始めたことで、生産性が向上したという声が聞かれている。リッチクライアントのデメリットとして評価されている「開発環境」の問題をクリアしている点は、他の製品に対する大きなアドバンテージだといえる。
以上のように、多くの利点を備えるWindows Formアプリケーションであるが、実行環境に欠点がある。Windows Formアプリケーションの実行環境として.NET Frameworkをクライアントマシンにインストールする際、.NET Frameworkは多くのリソースを必要とするため、クライアントマシンによっては、インストールできなかったり、動作が重くなったりすることが起こりうる。
例えば、大手企業のA社では、Windows 98を搭載した古いマシンも数多く残っており、全てのクライアントにWindows Formアプリケーションを採用することはできない。したがって、A社でシステムの移行を行う際には、まずHTMLクライアントの導入を検討し、HTMLクライアントでは問題があると判明した場合にWindows Formアプリケーションを検討するという選択順序を考えている。
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著者プロフィール
株式会社野村総合研究所 田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。
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