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ERP市場の実態と中期展望 |
第1回:2004年のERPパッケージ市場の動向と今後の予測
著者:矢野経済研究所 赤城 知子 2005/9/7
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大手企業の動向
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「大手企業におけるERPの導入が一巡した」といわれはじめたのは2003年中頃からだった。しかし2004年は、Y2K問題で1999年にシステムをリプレースした企業が基幹システムの更改に踏みきる年として期待する声もあった。
弊社も2004年当初「ERPパッケージ市場は2004年も順調に拡大するだろう。その理由はY2K問題で積極的にシステムのリプレースを行った企業がリース満了の5年を迎えるからである。ERPパッケージのライセンス売上高(ベンダー出荷ベース)で115.4%の伸びを示すだろう」との見解を示した。
しかし実際に2004年上半期(1〜6月)の傾向を見ると、大手企業向けERPパッケージの動きはあまり活発ではなかった。一方で2004年6月1日に「小型/中型のメインフレームの出荷台数が平成15年度(2003年度)は対前年で約106%(中型)〜115%(小型)の伸長を示した」とJETA(電子情報技術産業協会)より発表された。
確かに2003年のERPパッケージのライセンス市場の動向を振り返ると、市場こそは対前年比108.0%と拡大しているが、大手企業向けERPパッケージライセンス市場は102.9%(2003年実績)と限りなく横ばいに近い結果であった。
その反動で「2004年は大手企業向けが新基幹システム構築へと動きだすのではないか?」と分析したのだが、実際に2004年の大手企業のIT投資のトレンドについて、主要なSIベンダーにヒヤリングをしたところ、大手企業の基幹系システム構築においては、「自社開発型システムの構築」にトレンド回帰しているのだそうだ。
ここ10年「自社開発型からパッケージを活用した基幹系システムの構築へ」と、ITトレンドは大きく移行してきた。
しかし、実際にはERPパッケージやその他の業務パッケージによる基幹業務の適応範囲は「財務会計管理」が中心であり、「給与」や「販売」、「生産」の各管理業務においても、「財務会計」とデータを連携させるインターフェースとして、ERPのモジュールを導入するケースはあっても、システムの裏では相変わらずレガシーシステムが動いている、というような利用の仕方が多かったようである。
そこで、2004年に新規基幹システムの構築を考えた場合に、ERPや業務パッケージの自社適合範囲を考えると、どうしてもパッケージだけでは使い切れない状態であり、「パッケージをツールにしてその上にアドオンの開発をするくらいなら、最初から自社開発型のシステムを構築しよう」という判断が働らくケースが増えつつある、というのが実態のようである。
2004年も財務会計や人事給与といった、パッケージの適合性が拡大している領域においては、ERPまたは業務パッケージを積極的に活用する意向に衰えはない。
しかし「EPRパッケージで基幹システムすべてを導入するのだ」というようなビッグバン型の導入は2004年になって急速に案件数が減ったのである。
この傾向は2005年も大きく変わることはないのではないだろう。ERPパッケージが日本市場で本格的に導入されはじめたのが1998年頃である。それから6年が経過する中で、ERPに対する「根拠のない期待」を捨てざるをえないと判断する顧客企業も出てきているのだ。
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著者プロフィール
株式会社矢野経済研究所 赤城 知子
1989年矢野経済研究所入社。半導体・電子デバイスのマーケット担当から、1996年より「クライアントサーバを中心とした企業のコンピュータシステム導入実態調査」を手がける。1998年よりリサーチのフィールドをソフトウェア業界へと移し、主にERPやCRM、SCMといった企業向けアプリケーションパッケージのマーケットを専門に調査・分析を行う。
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