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ITインフラの新しい展望
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第6回:IT基盤の展望IBMのオープン化と先進技術への取り組み
著者:日本アイ・ビー・エム  木元 一広   2005/12/19
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特許の公開

   2005年1月25日にIBMは500件の米国特許ならびにこれらに対応する各国の特許を公開し、オープン・ソースに取り組む個人および団体が、これらの特許に対して自由にアクセスできるようにすることを公約しました。これはイノベーション/相互運用性/オープン・スタンダードの進展を狙いとした取り組みに寄与するもので、業界規模の「パテント・コモンズ(特許共有資産)」の基盤形成を目指すことを具体的に示し、業界の内外から広く受け入れられました。

   10月24日には、医療および教育分野における業界標準の普及のために、ソフトウェアにおけるオープンな標準の開発を通じた相互運用性および情報アクセスの向上に役立つIBMの特許ポートフォリオに対して無償でアクセスできるようにしていくことを発表しています。

   いうまでもなく、医療・教育はすべての人の現在から将来の生活にとって重要な位置を占めています。これらはイノベーションの最も望まれる分野であり、オープンな標準が利用され、ソフトウェア間の相互運用性が向上することは非常に大きな意義を持つでしょう。


Eclipseの公開と普及・開発プロセスの公開

   2001年にEclipseが発表されてから既に4年、オープンで拡張可能な開発プラットフォームのデファクト・スタンダードとしてEclipseは高い評価を受けています。今や書店のIT関係の売り場に、多くのEclipseに関する書籍・ムックが並んでいても驚く人はいなくなりました。

   Eclipseは2001年にIBMからオープン・ソースの統合開発環境ソフトウェアとして公開され、2004年にはより広範な発展と普及を目指して多くの企業が参画した独立の非営利団体となりました。

   Eclipseの特徴はオープン・ソースであり、無償で公開されているプラグ・イン、製品として販売されているプラグ・インなどの様々なプラグ・インを用いてニーズにあわせて機能を拡張できることです。

   開発環境をオーダー・メイドのように作りあげられる拡張性を備えたEclipseは、開発者自身にとっても開発ツールベンダーをはじめとするITベンダーにとっても非常に魅力的でした。さらに今日では単なる開発環境にとどまらず、エンドユーザー用のクライアントアプリケーションの実行環境のベースとしても利用されるようになっています。

   Eclipseの成功はLinuxやApacheと同様に、人々のニーズを実現する「場」がオープンであり、ニーズとそれを実現する力がその場に結集し、コラボレーションによって技術の発展・普及のサイクルが機能することを示した好例といえます。

   2005年10月12日、IBMはRUP(IBM Rational Unified Process)の一部をEclipseに提供すると発表しました。eclipse.orgでは、これを受けてThe Process Framework Projectの設立が審議されています。これは、要求の収集やプロジェクト開発などを含む開発プロセスの全体におけるベスト・プラクティスをIT業界が広く共有し、プロジェクトとその成果であるITシステムの品質を向上させる可能性に道を拓くものとして重要な意義を持っています。


仮想化ソフトウェア「Xenプロジェクト」

   仮想化の中でも注目を集めている仮想モニターの分野で、2005年になって急速に注目を集めているOSSのXenに関しても、IBMはその中核であるハイパーバイザーの開発を中心に協力しています。

   IBMはバーチャル・マシンの開発の長い歴史を持っています。それが、IBM System z9、IBM eServer p5、IBM eServer iSeriesなどのIBMサーバーファミリーでの最新の仮想化技術に結実していることは本連載でも触れた通りですが、IBMが開発しているハイパーバイザー技術であるsHype(Secure Hypervisor)の技術がXenに提供されています。

   IBMはストレージにおけるSNIA(Storage Networking Industry Association)や分散管理に焦点を当てるDMTF(Distributed Management Task Force)、XML、Webサービスを中心とする多くのIT基盤標準化団体やコンソーシアムにも積極的に参画して標準化の策定・普及に取り組むほか、既に本連載で取り上げられているように、ハードウェアの領域でも、blade.orgやpower.orgなど、業界の持つ技術を結集して互換性の確保・相互運用性の向上・新技術の取り込みをはかるという新たなチャレンジを展開しています。次項で説明する仮想化への取り組みでも、オープンへの対応を紹介しながら解説していきます。

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日本アイ・ビー・エム株式会社 木元 一広
著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社  木元 一広
日本アイ・ビー・エム株式会社 ICP-シニアITアーキテクト
1984年日本アイ・ビー・エム入社後、お客様担当として汎用機及びUNIX系の基盤から適用業務システムの設計・実装まで幅広く活動。2002年より、グリッド・コンピューティングに取組み、アーキテクトとして製造業・ライフサイエンス・金融等の分野でのお客様の実証実験及び実業務への展開をリードし、グリッドおよび仮想化の実用性の検証・普及に従事している。


INDEX
第6回:IT基盤の展望IBMのオープン化と先進技術への取り組み
  はじめに
特許の公開
  仮想化を中心としたIBMの先進技術への取り組み
  仮想化の新たな一歩 - IBM Virtualization Engine V2