IBMはグリッドのオープン化に積極的に取り組んでいます。グリッドの標準化団体GGFでの様々な標準化活動への参加、GGFの推進する基幹アーキテクチャーであるOGSA(Open Grid Service Architecture)の策定作業への参画、OGSAのリファレンス実装であるThe Globus Toolkitを開発するGlobus Allianceへの技術・人材・資金面での支援の他、世界の様々なグリッド・プロジェクトへの参画を行っています。
コラボレーションに関しては、ハードウェア、ミドルウェア、アプリケーション・ベンダー、SIベンダーなどとのエコ・システムを構築しグリッドの商用利用を推進しています。一方、WebSphereなど自社の主要製品にもグリッドを取り入れつつあります。2005年8月に発表されたWebSphere Application Server XD(Extended Deployment)6.0は、Webトランザクションとバッチ処理を統合してWebSphereの環境で稼働させ、両者間での資源の動的最適化をはかる画期的なビジネス・グリッド製品です。
また、WebSphere Information Integratorは異種のRDB/XML/フラットテキストなどの混在環境でのデータ・フェデレーション(連合)機能による仮想化を提供します。ユーザーはデータの格納場所や形態を気にすることなく、SQLでのアクセスが可能です。
The Open Groupで策定したARM(Application Response Measurement)V4はこのような応答時間測定を可能にする標準です。IBMはARMの標準化に参画し実現に取り組むとともに、EWLM(Enterprise Workload Manager)やIBM Tivoli Composite Application Manager for Response Time Tracking(注)でARMをサポートし、異種混在環境でARMに対応したあらゆるアプリケーションからのデータ収集を可能にしています。
最近の注目される成果の1つとして、WSDM(Web Services Distributed Management)を取り上げます。WSDMは、OASISが2005年に承認したIT資源の管理を統合するための仕様です。WSDMは、MUWS(Management Using Web Services)とMOWS(Management of Web Services)という2つの仕様からなっています。
またWebサービスをリソースとして管理する方法の規定により、WebサービスをWebサービスのインターフェースで管理する方法に道を開く重要な意義を持っています。これらのWebサービスの活用・管理機能によって、ESB(Enterprise Service Bus)を介して、SOAを基礎として開発されるアプリケーションを実行するための柔軟なインフラストラクチャーを実現するための基礎ともなります。
WSDMの策定では、IBMのオートノミック・コンピューティング関連技術の1つであるCBE(Common Base Event)がイベントフォーマットの基本として提出され、採用されました。CBEはITシステム内で発生する様々な事象を共通の形式で扱えるようにするためのXMLフォーマットで、IBMが開発者向けに提供し、既に多くの利用事例があるAutonomic Computing Toolkitでも利用可能です。