CIOは経営者の立場としてビジネスとITをつなぐ役割、あるいはITに関する問題について経営者への橋渡しを行う役割が期待されている。また、企業内IT提供部門の統括者である以上、ITサービス提供に責任を持たなくてはならないことは当然である。したがって、利用者としてIT活用の全体最適化をはかることと、提供者としてIT提供力の全体最適化をはかることの両面が求められることになる(図3)。
図3:CIOの果たすべき機能 (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
CIOがマネジメントすべき対象は、具体的には、次のようなものとなる。
- 戦略…ITを使って、ビジネスとして何を実現するか
- システム…そのためにどのようなシステムを整備するか
- サービス…ビジネスに必要なITサービスをどう提供するか
- カネ…IT投資やITコストをどのように最適化するか
- ヒト…IT企画人材やIT提供人材をどう確保するか
- セキュリティ…情報セキュリティをどのように確保するか
- 内部統制…IT運営を透明化し、内部牽制や説明責任をどう実現するか
表1:CIOのマネジメント対象
このように、CIOがマネジメントすべき対象は広範におよぶため、新たにCIOとなった者の中には、途方にくれてしまう人間がいるかもしれない。しかし、ここ数年、国際的にITのマネジメントに関する関心が高まり、標準的なマネジメント手法が普及しつつある。CIOは、自社におけるITの最適活用を統括するにあたっては、こうした標準的手法やモデルを参照しながら、自社なりの管理方法論を整備していけばよいのである。
例えば、IT利用者やIT提供者としてのマネジメントとしては、表2のようにそれぞれの分野において、手法やモデルが確立されてきており、大いに参考となるはずである。
IT利用者としてのマネジメント
- 経営目標とIT活用テーマの整合化にはBSC【注1】
- 業務プロセスとシステム構成の全体最適化にはEA
- ITサービスの適正化にはSLM
- 情報セキュリティの確立のためにはISMS
- 内部統制の確立のためにはCOSO、COBIT
IT提供者としてのマネジメント
- プロジェクト管理の標準としてPMBOK
- システム運用プロセスの確立のためのITIL
表2:IT利用者およびIT提供者としてのマネジメントにおける管理手法
※注1:
BSC:Balanced Scorecard 財務・顧客・業務プロセス・人材と変革という4つの視点から、戦略を具体的な行動に落とし込むフレームワーク。
こうした標準的な考え方は、本連載の下敷きにもなっている。本連載は、そのうえで単なるその解説にとどまらず、企業で実践でき効果が得られる具体的な方法を提示するものである。
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