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第1回:CIOの役割
監修者:野村総合研究所  淀川 高喜   2005/11/10
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全体最適化に向けた2つのアプローチ

   業務と情報システムの最適化を推進するには、「トップダウン」と「ボトムアップ」の2つのアプローチがある。トップダウン・アプローチは、ビジネスと業務プロセスの変革シナリオを出発点に、情報とシステムの最適化の姿を描いていく。これにより、経営戦略・事業計画とIT戦略や情報システムとの整合をはかる進め方である。

   これに対し、ボトムアップ・アプローチは、IT基盤、アプリケーション、情報の整備を出発点に、それを有効活用できる業務プロセスの方針を描いていく。これにより、情報システムの改善を契機にした、業務改革の実現をはかる方法である(図4)。
全体最適化に向けたアプローチの種類
図4:全体最適化に向けたアプローチの種類
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大表示します)


トップダウン・アプローチによる全体最適化

   枠組みや方針をまず明確にし、最適化の実現はこれらを情報システムに実装していくことで進められる。すなわち、BA(ビジネス・アーキテクチャ)の整理を起点に、DA(データ・アーキテクチャ) → AA(アプリケーション・アーキテクチャ) → TA(テクノロジー・アーキテクチャ)へと整合をはかりながら進める手法である。このアプローチは、経営戦略に基づく情報活用方針や業務改革方針を整理しやすいメリットがあるが、一方では効果発現にやや時間を要するというデメリットもある。

   トップダウン・アプローチをとる際の方針には、以下のパターンがある。

  1. 戦略指向パターン
    自社ならではの経営戦略にこだわり、商品・サービスの自社独自の優位性の確立に向け、それを実現できる業務プロセスと情報システムを目指す。
  2. プラクティス(プロセス)指向パターン
    経営戦略の優位性もさることながら、業務プロセスの優位性にこだわってあるべき姿(ベスト・プラクティス)を追求する。この進め方には、達成目標に向けた最適プロセスを構築する「ビジネスモデル開発型」、他社の優れたプラクティスを移植し導入する「プロセスフィットギャップ分析型」、現行プロセスを目的に沿って改善する「ビジネスプロセスマネジメント(BPM)型」の3つがある。
  3. プロダクト(パッケージ)指向パターン
    ベスト・プラクティスが備わったパッケージシステムの導入によって、最適な姿を移植する進め方である。業務をシステムに合わせる必要が生じる、ERP(統合業務パッケージ)導入のような場合に有効となる。

表3:トップダウン・アプローチをとる際の方針

   トップダウン・アプローチをとる場合でも、経営戦略に基づく新規施策を掲げた業務改革・システム化を行う場合と、外部の事例に基づくプロセス移植の場合、さらにパッケージを導入した業務改革の場合では、進め方に違いがある。そのため、何に主眼を置いて最適化を進めるかによって、適切なパターンを選ぶ必要がある。

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株式会社野村総合研究所 淀川 高喜
監修者プロフィール
株式会社野村総合研究所  淀川 高喜
プロセス・ITマネジメント研究室長 兼 金融ITマネジメントコンサルティング部長。国家試験 情報処理技術者試験 試験委員会 委員。1979年野村総合研究所入社。生損保、銀行、公共、運輸、流通、製造業などあらゆる分野における幅広いシステムコンサルティングに携わる。専門は情報技術による企業革新コンサルテーション、情報システム部門運営革新コンサルテーションなど。


INDEX
第1回:CIOの役割
  ますます多様化する企業のIT活用目的
  CIOが果たすべき機能
全体最適化に向けた2つのアプローチ
  ボトムアップ・アプローチによる全体最適化