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ソフトウェアメトリックス調査報告〜システム開発における品質・工期・生産性
第4回:ユーザ企業がシステム評価するためのノウハウの蓄積
著者:
日本情報システム・ユーザー協会
2005/11/18
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品質の定義
ユーザ側から見た品質の定義は、「ユーザが発見した欠陥数の密度 = 受入テストから安定稼動までの期間に発生した欠陥数」である。今回、欠陥率が計算できたデータは67件のプロジェクトであり、欠陥数の平均値は
1人月あたり0.7件
であった。つまり、5人月あたり3.5個のバグということになる。
およそ
500万円あたり、欠陥数が1件以内に納まっているプロジェクトの比率は40%程度
であり、1つの目安値として活用できる。
133件のプロジェクトの中で、
品質基準を持って開発にあったっている割合は43.6%
である。JUASのIT動向調査2004では、67%の企業が品質目標を提示せずに発注していることが判明したので、今回はレベルの高い企業の回答が多かったと推察される。
さらに品質基準の有無と欠陥率を比べてみると、品質基準を持っていないプロジェクトでは
欠陥率が1.42倍
になることが判明した。このことは、目標を持って取り組むことが品質アップにつながっていることを物語っている。
レビューと欠陥率
次に欠陥率と顧客満足度との関係を説明する。欠陥率が0.25未満(1人月あたりのバグが0.25未満)のプロジェクトでは、
0.25以上のプロジェクトよりもプロジェクト全体の満足度は高い
が、品質の満足度ではその傾向が見られない。しかし
欠陥率が3以上であっても、迅速に修正するアクションをすれば満足点をもらえる
ことがある。
レビューと欠陥率について、35件プロジェクトのレビュー工数比率が計算できた。その結果、
5%以下のプロジェクトでは欠陥率が1個/人月以上になる確率が30%程度発生する
ことがわかった。逆に、
レビュー比率を8%以上確保したプロジェクトには欠陥率の高いものは少ない
。このことから、レビュー指摘率が高いプロジェクトは欠陥率の高いプロジェクトとはいえないということがわかる。
また、プロジェクトマネジメントのスキルが高いベンダーのプロジェクトマネージャーが担当したプロジェクトでは、ほとんど欠陥率が0.25%以下に収まっている。よってユーザ企業は発注先企業を選択するのみならず、経験豊かで優秀なプロジェクトマネージャーを選択しなくてはならないことになる。
全体を通して、ベンダー側のプロジェクトマネージャーのスキルは品質に大きな影響を与えるが、ユーザ企業側のプロジェクトマネージャーのスキルが品質に与える影響は少ない。しかし、ユーザプロジェクトマネージャーのスキルが低いと工期遅延が発生しやすい。
工期と予算
ユーザ企業から収集したアンケートについて、108件は全体工期が記入されている。その中で総予算の記入があった74件の予算と工期の関係を見ると、
人月単価 = 約90万円
になる。
全体工期が記入されている108件中、LOC(注3)の記入があった57件について、KLOCあたりの生産性を規模別に計算したところ、人月あたり = 1.4KLOCになる。
※注3:
LOC(Line of Code):ソフトウェアの規模を測る単位で、ソースが1000行で1KLOCとなる。
また全体工期が記入されている108件中、25件についてFP(注4)の記入があった。FPあたりの生産性を規模別に計算したところ、人月あたり = 22.5FPになる。ただし、ユーザ企業の21%しかFPを活用していないため、計算するにはデータ数が少ない。また分布のバラつきからみると、FPの計測精度に問題があると思われる。
※注4:
FP(function point):ソフトウェアの持つ機能の数
予算と工数について、全体予算が記入されている81件中、規模(LOC)の記入があった36件について予算とLOCの関係を見ると、Kstep単価 = 62万円になる。ただし、言語別換算については未実施である。主言語と複数のサブ言語の記入は依頼してあるが、各言語別の生産性は詳細な記録になるので、ユーザ側に回答を求めることは今回は無理だと判断した。ベンダー側への調査も今回と同様であり、残念ながら「言語別生産性の分析」はできていない。
予算の計画値と実績値について、ともにデータが取れた70件のプロジェクトの
予算超過は39%、予算どおりは33%、予算未満は29%
であった。結果的に、ユーザ企業側は契約方式に守られていることもあって
6割以上のプロジェクトは計画通り
の予算に収められている。また規模が大きいからといって、予算超過になりやすいとは限らない。
外注予算と実績
外注予算について平均値は68.4%であり、約2/3以上の予算を外注している。外注実績の平均値は64.4%であり、計画とほぼ同じである。また規模別外注比率を見てみると、規模が大きいほうが外注比率が高い傾向にある。
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著者プロフィール
日本情報システム・ユーザー協会
社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
ユーザーの立場からの産業情報化の推進を目的とし、大手ユーザー企業を中心に、約250社の会員を擁し、経営とITに関する様々なテーマや、立場に応じた40以上の委員会、研究会、研究プロジェクトを実施し、毎年、各種調査・研究報告書の刊行や、提言を行っている。1962年、日本データ・プロセシング協会として創立、1992年社団法人日本情報システム・ユーザー協会として、全面的に拡充改組。
http://www.juas.or.jp/
INDEX
第4回:ユーザ企業がシステム評価するためのノウハウの蓄積
工期遅延率
品質の定義
総合評価
まとめ