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世界各国政府のオープンソース採用動向
世界各国政府のオープンソース採用動向

第1回:欧州編(前編)
著者:三菱総合研究所  比屋根 一雄   2005/2/25
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独自にリブレソフトウェアを進めるフランス

   フランスはドイツと並びオープンソースが盛んな国ですが、あまりその状況は知られていません。実は2000年にはオープンソースソフトウェアを政府調達で優遇する法案が提出されています。ただし、これは廃案になりました。

   フランスではオープンソースソフトウェアという言葉はあまり使われず、フリーソフトウェアに対応する言葉「Logiciel Libre」(Libre=リブレ=自由)を使います。他の多くの国では英語のまま「Open Source Software」と表記しているのと対照的です。これはフランスでは「自由」という単語への思い入れが他の国より強いからという説もありますが、あながち嘘でもないようです。

   2001年には、フリーソフトウェアとオープンスタンダードの採用を奨励するために、行政関連情報通信技術庁(ATICA)を設立しました。2002年にはフランスのLinuxベンダーであるMandrake Softと包括的な調達契約を交わしており、政府・自治体への導入の下地はできています。

行政関連情報通信技術庁(ATICA)の目標
相互運用性の確保
オープンスタンダートによる相互運用性を重要すること。
透明性の確保
プライバシーや個人情報を保護するために、不明なソフトウェアでなく、透明性のあるオープンソースウェアであること。

   サーバ分野では既に多数の実績がフランス政府にあります。会計局では500台、税務局では200台のLinuxサーバが既に稼働おり、他にも外務省や農務省でも実績があるそうです。また、設備省の1500台のWindow NTサーバをLinuxへ移行する計画もあります。これは、全国160の支所にあるWindows NTサーバの3/4にあたり、一つの公的機関の過半数がLinuxに移行するという意味で注目されます。

   パリ市は2004年10月に17,000台のサーバ、デスクトップPCのLinux移行を検討した調査報告書を発表しました。その提言は、Windowsを使い続けるというものでした。理由は、既存ソフトの書き換えや職員の再教育コストでした。

   一方、フランス政府は、2007年までに政府機関のコンピュータ化を進めるプロジェクトADELEの一環として、オープンソースデスクトップの大規模導入を検討しています。その目標を全体の5%、10%、15%にするかは検討中とのことです。理由として、ベンダー間の競争が始まり、異種システム間の相互運用性向上やライフサイクルコスト削減を期待しているようです。

   経済財務産業省(Minefe)では、2003年1月から省内Windows PC 16,000台にOpenOffice.org導入を始めました。導入作業は2005年末まで要する予定ですが、2005年1月からはデフォルトの文書フォーマットはOpenOffice.orgになるとのことです。

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三菱総合研究所
著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所  比屋根 一雄
情報技術研究部  主席研究員
1988年(株)三菱総合研究所入社。先端情報技術の研究開発および技術動向調査に従事。最近は「OSS技術者の人材評価調査」「日本のOSS開発者調査FLOSS-JP」「学校OSSデスクトップ実証実験」等、OSS政策やOSS技術者育成に関わる事業に携わる。著書に、「これからのIT革命」、「全予測情報革命」、「全予測先端技術」(いずれも共著)などがある。「オープンソースと政府」週刊ITコラム「Take ITEasy」を主宰。


INDEX
第1回:欧州編(前編)
  はじめに
  ミュンヘン市、14,000台をWindowsからLinuxに移行
  オープンスタンダード推進にオープンソースを利用する欧州連合
  独自にリブレソフトウェアを進めるフランス