TOPシステムトレンド> 地理的環境を考慮して、地元産業育成を図る北海道
世界各国政府のオープンソース採用動向
世界各国政府のオープンソース採用動向

第6回:日本編(地方自治体編)
著者:三菱総合研究所  谷田部 智之   2005/6/10
前のページ  1  2   3  4  次のページ
地理的環境を考慮して、地元産業育成を図る北海道

   北海道では道立高校の共同利用施設として「ほっかいどうスクールネット」というシステムを構築しています。これは各学校の先生や生徒が電子メールやグループウェア、e-ラーニング、ビデオチャットなどの機能を利用できるようにしています。このシステムは表1に示す理由からLinuxプラットフォームで構築されました。加えて、データベースにPostgreSQLを使うなど各種サーバにもオープンソースソフトウェアが使われています。
  • 各校には既にLANがあった
  • できるだけ特定のハードウェアやOSとならないようにした
  • 全てリモートでメンテナンスできるようした(北海度は面積が広いため)

表1:Linux採用の理由

   また、総務省が進める「共同アウトソーシング・電子自治体推進戦略」では北海道電子自治体プラットフォーム(HARP)構想として、オープンソースも積極的に活用していくことを示しています。こうした流れを含め道内の自治体はオープンソースに対する支援が積極的であること、オープンソースコミュニティが活発であること、道内のベンダーはオープンソースに関する技術力が高いことという報告書が北海道経済産業局から出されています。

   その実例として札幌市の隣に位置する江別市では、地域の産官学の共同開発プロジェクトとして「江別ブランド事典」という地域の情報を提供しています。システムはオープンソースソフトウェアをベースに開発して、さらには開発システムをオープンソースソフトウェアとして公開する計画になっています。

多様な推進母体を持つ北海道
図2:多様な推進母体を持つ北海道


共同アウトソーシング方式を推進する静岡県

   北海道と同じく共同アウトソーシングの枠組みで、山形県、静岡県、福岡県、徳島県が共同で財務会計パッケージを2004年度に開発しています。単年度での開発であり、時間、予算の制約からベンダー製のパッケージをベースに開発しています。ベースとした商用パッケージではアプリケーションサーバ/Java実行環境/データベースが同社製に限定されていたため、ApacheやTomcatなどのオープンソースソフトウェアも利用可能とする方針を示しています。実際に静岡県内の掛川市をはじめとして共同開発した県内の市町村で実証実験を実施する予定になっています。


広くソースコード公開することで利用をうながす愛知県

   愛知県では避難所における安否確認や避難者に対しての情報提供の仕組みがなかったため、「避難所支援システム」として県が地元のベンダーに発注して2001年に開発しました。PerlとMySQLを使ったシステムで、LinuxとWindowsのいずれのプラットフォームでも稼働するように設計・開発したものです。このシステムは県下の市町村が自由にカスタマイズして使えるようにという理由からオープンソースとして提供しています。ただし、費用面や避難所にネットワークを用意するのが困難などの理由からそれほど普及しているとはいえないようです。今後は防災への意識の高まりや普及活動を通じて利用自治体を増やす計画です。

前のページ  1  2   3  4  次のページ


三菱総合研究所 谷田部 智之
著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所  谷田部 智之
情報技術研究部 研究員
2000年(株)三菱総合研究所入社。画像処理・認識研究やセンサネットワーク、ユビキタスコンピューティングなどの研究開発業務に従事。最近は通信業界関連の調査も手がける。最新版のソースコードからコンパイルしてインストールする症候群は治まりつつあるが、ついRPMを作り直してしまう癖は今も健在。博士(工学)。


INDEX
第6回:日本編(地方自治体編)
  今回は
地理的環境を考慮して、地元産業育成を図る北海道
  ポータルサイトとの連携で活用する岐阜県
  地元密着型サービスを目指す佐賀県呼子町