第6回:日本編(地方自治体編) (3/4)

世界各国政府のオープンソース採用動向
世界各国政府のオープンソース採用動向

第6回:日本編(地方自治体編)
著者:三菱総合研究所  谷田部 智之   2005/6/10
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ポータルサイトとの連携で活用する岐阜県

   住民向け情報提供サイトである「ぎふポータル」は、県庁内および県内の市町村の各種システムの連携にオープンスタンダードなSOAPを採用したWebサービスです。データを提供する側のシステムを利用できるように連携プロトコルをJavaで開発し、送受信インターフェースをオープンソースとして公開しています。

   これにより「ぎふポータル」は共通プラットフォームとして受け取った情報を組織単位ではなく利用者が便利なように提供できるという特徴を持っています。また、コンテンツ管理やメールサーバにLinuxプラットフォームを採用しています。


デスクトップでの普及を目指す兵庫県洲本市

   ITベンチャー育成特区に認定された兵庫県洲本市は、オープンソースを利用した行政アプリケーションの開発を目指しています。その一環として2003年にOSCA(Open Source Community in Awaji)プロジェクトを立ち上げています。参加団体の支援を受けて、職員が使用するクライアントPCをWindowsとLinuxのデュアルブートにした上で、両OS用のOpenOffice.orgを導入しています。しかし現状としては、これまで作成した一部文書の互換性問題からMicrosoft Officeも併用していますし、OpenOffice.orgを日常的に使うという状況にはなっていないようです。今後は両ソフトについて使いやすさなどの比較をおこなうなどし、実際の業務下での情報投資を検証する予定になっています。


ベンダーへの一括発注型からの脱却を図る長崎県

   長崎県でも漠然とした仕様書のみで大規模なシステムが入札されていたため、県側にもノウハウが蓄積できないという問題がありました。そこで、民間企業からCIOを赴任させ、2002年度からオープンソースを使用することを前提にシステムを機能・開発・運用工程と細分化して、地元ベンダーにも参入の機会を生むようなモデルを実践しています。県の職員自身が詳細な要件定義や仕様をあらかじめ決めるようにしたことが従来と大きな違いです。これにより、コストの1/2〜1/3を削減できたとしています。

   オープンソースを仕様に含めることは、ベンダー側に過剰な保証を求めないことを示したり、商用製品を導入する資本に余裕のない地元ベンダーの技術力を向上させたりすることに一役買っています。

長崎県の電子自治体調達
図3:長崎県の電子自治体調達
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

機能分割した詳細仕様書の効果
  • 業務範囲が狭く、自社レベル・得意分野に合わせて、地場企業でも入札参加可能に
  • 詳細な発注仕様書があり、仕様変更は追加発注になるため余力の少ない地場企業でも対応可能に
  • 発注が分割され、多くの地場企業が参加可能に
OSS利用指定の効果
  • OSS利用が指定され、パッケージを持たない地場企業でも対等に参加可能に
  • OSS利用指定により、受託企業は安心してOSSが使用できる

表2:長崎県の電子自治体調達

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三菱総合研究所 谷田部 智之
著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所  谷田部 智之
情報技術研究部 研究員
2000年(株)三菱総合研究所入社。画像処理・認識研究やセンサネットワーク、ユビキタスコンピューティングなどの研究開発業務に従事。最近は通信業界関連の調査も手がける。最新版のソースコードからコンパイルしてインストールする症候群は治まりつつあるが、ついRPMを作り直してしまう癖は今も健在。博士(工学)。


INDEX
第6回:日本編(地方自治体編)
  今回は
  地理的環境を考慮して、地元産業育成を図る北海道
ポータルサイトとの連携で活用する岐阜県
  地元密着型サービスを目指す佐賀県呼子町
世界各国政府のオープンソース採用動向
第1回 欧州編(前編)
第2回 欧州編(後編)
第3回 米国・南米編
第4回 北東アジア編
第5回 アジア・オセアニア編
第6回 日本編(地方自治体編)
第7回 日本編(中央官庁編)

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