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BIの現状と今後
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第2回:従来のBIを補完するリアルタイムBI
著者:野村総合研究所  城田 真琴   2006/3/15
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リアルタイムBIの実現に向けて

   まずは、図2にリアルタイムBIの一般的な構成を示す。
リアルタイムBIの構成例
図2:リアルタイムBIの構成例
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   リアルタイムBIでは、ERP/CRM/SCMなどのトランザクションデータからリアルタイムにビジネスイベントを抽出、適切な形式に変換し、データストアにロードする(しない場合もある)。

   そして、DWHに蓄積されている履歴データとトランザクションデータ間で関連付けを行い、何かしらの異常事態が発生していないかといった分析を行う。ここで事前に定義した閾値を超えるなどの状態を検出した場合にはアラートが発せられ、適切な担当者に電子メールを送信する、あるいはダッシュボード上に異常事態である旨を表示するといった手段で通知される。

   場合によっては、このような異常事態の発生を事前に予測して、問題が起こる前に通知してくれるというような機能も実装されつつある(この機能をリアルタイム予測分析という)。

   予測分析機能は、例えば通信サービス事業者が、顧客とのタッチポイントでの顧客行動を分析し、サービスの解約を申し出そうな顧客を事前に察知し、その顧客に対して適切なキャンペーンの告知を行うなどの措置を取ることでサービスの解約を未然に防ぐ、といった場合に有効である。

   こうしたリアルタイムBIシステムの実現に向けて、様々な手法が提案されているが、ユーザはリアルタイムBIで何を実現したいかによって適切な手段を選択する必要がある。


リアルタイムDWHの構築

   通常のDWHはユーザによって書かれたプログラム、もしくはベンダーが提供するETLツールによってオペレーショナルシステムからデータを抽出し、クレンジングを行い、変換された後、DWHにロードされる。この一連の処理は通常、1日1回、週に1回といったように定期的にバッチ処理される。

   しかし、リアルタイムDWHを実現するためには、この一連のバッチ指向のアプローチを、可能な限りリアルタイムな処理に置き換える必要がある。

   既にいくつかのベンダーはこうしたニーズに応える製品をリリースしている。例えば、ETLツールのリーディングベンダーの1つであるInformatica社では、同社のETLツール「PowerCenter」のオプションとして、「PowerCenter Real Time」を用意している。これは、トランザクションの一貫性やデータ品質を維持しつつ、様々なシステムからのデータ統合をリアルタイムに実現する製品である。

   このようなリアルタイムのデータ統合を可能とするツールを使用することにより、IBMのMQシリーズやJMSなどのメッセージングシステムからのリアルタイムデータをDWHに蓄積されている履歴データと統合することができる。

   例えば、銀行では顧客とのすべてのタッチポイント(コールセンタ、店舗窓口、ATMなど)におけるデータとこれまでの取引履歴などのデータをリアルタイムに統合することによって、常に最新の顧客プロファイルに基づいて、新たな取引を承認するか否かの判断を下すといったことが可能になるのである。

   一方、DWH自体もリアルタイム化へ向けて進化している。例えば、NCR/Teradataは、従来のバッチで更新されるデータと継続的に更新されるリアルタイムデータを共にサポートするアクティブ・データウェアハウス(ADW)を実現する革新的な製品である。

従来のDWHとアクティブ・データウェアハウス(ADW)
図3:従来のDWHとアクティブ・データウェアハウス(ADW)
出所:日本NCR株式会社/テラデータ事業本部

   このことを言い換えると、戦略的クエリだけでなく、戦術的なクエリもサポートし、さらにリアルタイムに発生するイベントをもサポートするDWHであるということができる。

   リアルタイムDWHは、現場のビジネス上の意思決定を左右する役割を果たす。このため、従来のDWHとは異なり、システムダウンは一切許されず、非常に高い可用性が求められることになる。

   もちろん、これまでのDWHにとってもシステムダウンは好ましいものではないが、本質的には中長期的な意思決定を支援するものであるため、ダウンタイムによる損失はそれほどクリティカルな問題とはみなされないケースが多い。リアルタイムDWHの構築、製品選定にはこうした点にも気を配る必要がある。

   従来のDWHのリアルタイム性を高めようとするこうしたアプローチは、従来のDWHを補完するものとして、既存システムとの整合性を確保しやすい。その一方で、包括的なリアルタイムBIを実現するためには、DWH構築後の分析部分をいかにリアルタイム化できるかがキーとなるだろう。

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野村総合研究所 城田 真琴
著者プロフィール
野村総合研究所   城田 真琴
IT動向のリサーチと分析を行うITアナリスト。大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て2001年、野村総合研究所に入社。専門は、BIの他、SOA、EAなど。最近はSOX法対応ソリューションのリサーチを手がける。著書に「EA大全」(日経BP社)、「2010年のITロードマップ」(東洋経済新報社)(いずれも共著)など。


INDEX
第2回:従来のBIを補完するリアルタイムBI
  バッチ指向からイベント指向へ
リアルタイムBIの実現に向けて
  欧米ベンチャー企業が提供するリアルタイムBIソリューション
  埋め込み分析というアプローチ